表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚ボッチは、サクッと強くなって、サクッと魔王を倒して、速攻家に帰りたい!~クラスみんなで魔王を倒す? そんな修学旅行&体育祭みたいな地獄のイベント、無理無理無理!~  作者: 優木凛々
第4章 ボッチ、最大のピンチを迎える

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/33

05.居たたまれないボッチ vs フィールドワーク(5)

 

 太一は、まずはヘイトを取ろうと、黒クマに向かって矢を放ち始めた。


 今まで戦えなかった鬱憤を晴らすように、横跳びしながら3連続で矢を放ったり、スライディングしながら矢を放つなど、派手めな技を決めていく。


 そして、熊がギロリと太一の方に体を向けると、太一はその場にいる全員に向かって怒鳴った。


「今のうちに怪我人を! 俺はこいつを連れて行く!」


 そして、熊にダメ押しでもう1本矢を放つと、


「こい!」


 怒り狂うクマを連れて暗い森の奥へと走り込んでいった。



 ガアア!!!



 黒クマが物凄い唸り声をあげて太一を追いかけて来る。


 後ろに迫りくる脅威を感じつつ、太一は森の中を疾走した。

 飛び出している枝をジャンプして飛び越えながら、これからについて思案にくれる。



(いずれにせよ、もうしばらくしたら追いつかれるだろうな)



 体長約3メートルのヒグマの最高速度は時速60キロ。

 後ろにいる黒クマは恐らく倍以上あるだろうから、もっと早いと推測できる。


 いくら『狩猟師』が素早いとはいえ、さすがにクマに勝つのは無理だろう。


(後ろから殴られて死ぬって感じかな)


 ギフトのお陰で恐怖は感じないが、とりあえず覚悟は決めないと思いながら、後ろの気配を探って――、



「…………ん?」



 彼は眉をひそめた。

 走りながら後ろを振り向くと、黒クマがいない。



「あれ?」



 慌てて戻ると、そこには元の空き地に戻ろうとしている黒クマの姿があった。



「え!」



 太一は慌てて矢を3本構えて放った。

 ついでにスキルも試してみようと、威力が倍になるという『ラピッドショット』を試してみる。



 ガアアア!



 光り輝く矢が黒クマに当たり、クマが再び太一を追い始めた。


 今度は慎重に後ろを伺いながら走る太一。

 そして、適当に矢を放ちつつ、スピードを上げたり下げたりと色々やってみて、彼は気が付いた。

 このクマ、何か遅くないか? と。



(クマは時速60キロメートルで走るんじゃなかったのか?)



 そして、彼ははたと気が付いた。

 時速60キロメートルで走れるのは、もしかして平地での話なのではないだろうか。

 山の中では半分以下に落ちるのかもしれない。



(なるほど! そういうことか!)



 自分の出した結論に納得する。

 そして、彼はクマに向かって矢を射ながら、考え込んだ。

 これは一体どうしたらよいのだろうか、と。


 逃げられるのに、わざわざ遅く走って殺されたら、自殺になってしまう気がする。

 当然ながら、自殺では『覇王蘇生』のスキルは発動しない。



(うーん、これは困った……)



 枝の上から、下で唸り声を上げるクマに向かって矢を放ちながら、太一は思案に暮れた。

 この状況で、どうやって「誰かのために死ぬ」ことができるだろうか、と。


 そんな彼に向かって、黒クマが物凄い唸り声を上げる。


 そして、彼は思いついた。



(そうだ、黒クマがみんなのところに戻るのを、ナイフで阻止すればいいんだ!)



 みんなの元に戻らないように阻止すれば「人のため」になるし、さすがにナイフの狩猟師 vs 巨大クマなら、巨大クマが勝つだろう。



(これだ、これしかない!)



 太一は、素早く木の枝を伝って移動しながら、気配を消した。


 下で、太一を見失った黒クマが、唸り声を上げながらウロウロと歩き回る。



 そして、諦めたような顔をすると、元来た方向に引き返し始めた。



(よっしゃっ!)



 太一は木から飛び降りた。

 腰のナイフを抜くと、黒クマに忍び寄る。


 そして、ヘイトを取るため、思い切ってその背中にナイフを突き立てた。



 ギャアア!!!!



 クマが咆哮する。

 そして次の瞬間、黒クマが一瞬で黒い煙と化し、魔石がゴトリと地面に落ちた。




「…………は?」



 太一は呆然とした。

 ナイフを構えたまま、その場に立ち尽くす。



「…………もしかして、倒しちゃった?」



 脳裏に蘇るのは、派手に連射したりスキルを使って攻撃した自らの所業。



「ああああああ!!!! やりすぎたあああああ!!!!」



 彼はガックリと膝をついた。

 調子に乗って攻撃をし過ぎてHPを削り切ってしまったらしい。

 心の底から後悔するが、もう遅い。


 その後、彼は魔石を拾うと、とぼとぼと来た道を戻った。





 小屋に戻ると、女子3人が待ち構えていた。


 目を三角にした萌に


「無事だったからいいものを! あんた無謀よ!」


 としこたま怒られ、梨花には、


「南田君って、ときどき大胆になるよね~」


 と面白がられ、結衣には


「ん。無事だったからとりあえず良かった」


 と眠そうな顔をされる。


 ちなみに、冒険者5人は無事だったようで、治療のために先に街へと戻ったらしい。



「そういう意味では、偉かったかもしれないわね」



 萌に妙にツンデレっぽい褒められ方をするものの、

 死ねなかった無念さのあまり、ため息しか出ない。



(助けられたのは良かったけど、次はもっと慎重にならないとな……)



 心の中で自分を戒める。



 その後、リリアが戻って来て、今日の探索は終了することになった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ