02.居たたまれないボッチ vs フィールドワーク(2)
馬車が森の入口で止まった。
降りて周囲を見回すと、前方には日本では見ないような深い森が広がっていた。
中は昼間だと言うのに薄暗く、妖精や魔獣が住んでいそうな雰囲気がある。
(ファンタジーの森って感じだな)
少しわくわくしていると、リリアが声を張り上げた。
「じゃあ、入って行きましょうか。まずは順番を決めるわよ」
話し合った結果、
先頭は、『拳闘士』の梨花、
次は、『魔法剣士』であり回復魔法も使える結衣、
その次は、『魔術師』の萌、
そして、一番後ろに、気配察知に長けた『狩猟師』の太一。
となった。
リリアは引率と言う形で、萌の横に並ぶらしい。
「よーし! じゃあ行きましょう!」
「はいっ!」
リリアの掛け声を合図に、5人は森の中に突入した。
入ってみると、森は想像以上に生い茂っており、地面は木の根でボコボコしていて歩きににくい。
そんな中、梨花は、散歩でもするような感じで楽しそう進んでいく。
その後ろに眠そうな萌が続き、リリア、萌、太一が警戒しながら歩く。
同じ狩猟師であるリリアが、太一を振り向いた。
「ミナミダ、気配察知できてる?」
「はい、大丈夫です」
どうやら狩猟師である太一の持つ気配察知スキルは優秀らしく、半径10mくらいの範囲が手に取るように分かる。
これならば不意打ちなどにも対応できそうだ。
(狩猟師って、思った以上に優秀な職業なんだな)
――と、そのとき。
太一は前方から何か向かってくる気配を察知した。
まっすぐ梨花に迫ってきている。
「前方から何か来ます!」
そう声を張り上げると、梨花が立ち止まって臨戦態勢を取った。
藪の中から、ガサッと音がして、猫くらいの大きさの角の生えたウサギが飛び出した。
地面を蹴って梨花に襲い掛かる。
「はっ!」
梨花がウサギにケリを食らわせた。
ウサギが物凄い勢いで吹っ飛んで太い木の幹に激突し、一瞬で黒い煙となって消える。
「……え?」
パーティメンバーが呆気に取られている中、
リリアが、ウサギの消えた場所から何かを拾い上げた。
「これが魔石よ」
それは、赤くて透明な、まるでルビーのような石だった。
大きさは2センチほどで、形は細長だ。
梨花が目をぱちくりさせた。
「ええっと、あのウサギは……?」
「魔獣は魔素から出来ているから、魔石しか残らないわよ?」
え、そうなの? と、太一は目を見張った。
魔素からできているのは習ったが、まさか魔石しか残らないとは思っていなかった。
(さすがは異世界、これは真面目に考えちゃダメなやつだ)
その後、一行は森の奥へと進んだ。
次に、イノシシのような魔獣が2匹出だ。
太一が気配察知をして知らせると、
1匹は梨花が、もう1匹は結衣が双剣でシュパシュパッと切り刻む。
その華麗な双剣さばきに、太一は「おお!」となった。
(やっぱり剣士はカッコいいな~、双剣とか憧れるよな~)
その後、ネズミの群れが現われた。
チュウチュウと鳴き声を上げながら迫ってくる。
その時、萌が杖を掲げた。
なにかボソッと唱えると、上空に雷の玉が発生し、ネズミたちを一網打尽にする。
(おお~! 魔法もかっこいいな~!)
太一は楽しくなってきた。
ファンタジーな森で繰り広げられるファンタジーな戦いに、ゲームの中にいるような気持ちになる。
しかし、しばらくして。
太一は重大な事実に気が付いてしまった。
(……もしかして、自分って出番なくね?)
最初の襲撃に気が付くのは太一だが、
「来たぞ!」
と教えるだけで、以降まるで出番がない。
ただ突っ立って、3人の華麗な動きを見ているだけだ。
矢を一本も使っていないし、ナイフすら抜いていない。
太一はため息をついた。
とても楽しいが、これでは死ねない。
(せめて死ねるポジションを取らないと)
そう思って、さりげなく前に出ようとしたが、リリアに
「ミナミダ、前に出過ぎ、あなた後衛よ」
と注意されてしまう。
(うーん、これは困った……)
――と、そのとき、リリアが口を開いた。
「そろそろ休憩にしましょう」




