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召喚ボッチは、サクッと強くなって、サクッと魔王を倒して、速攻家に帰りたい!~クラスみんなで魔王を倒す? そんな修学旅行&体育祭みたいな地獄のイベント、無理無理無理!~  作者: 優木凛々
第3章 ボッチ、運命の日を迎える

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(閑話)ボッチ&ボッチ

 

 召喚されてから約2カ月。

 1日の訓練を終え、太一が部屋でくつろいでいると、ノックの音が聞こえてきた。



「ミナミダー! 遊びきてやったぞ!」



 外の廊下にパカラ王子の声が響き渡る。



(はあ、今日も来たのか)



 安息の時間が……と思いつつ、渋々ドアを開けると、メイド2人を引きつれた王子がニコニコ笑いながら立っていた。



「ミナミダ! 今日は美味しいお菓子を持ってきてやったぞ!」



 3人の後ろを見ると、ワゴンを押したメイドが控えており、ワゴンの上には2人分の茶器と箱のようなものが載っている。


 この無言の「部屋に入れろ」という圧力に負け、太一は3人を部屋に招き入れた。


 王子がさっさとソファの真ん中に座り、メイドたちがお茶の準備を始める。

 何の変哲もないローテーブルの上に真っ白なテーブルクロスを、ふさあっとかけ、金色の茶器を素早く並べていく。


 そして、シンプルな部屋に似つかわしくない貴族っぽいテーブルが出来上がると、メイドが太一に恭しくお辞儀をした。



「どうぞ、ミナミダ様、お座り下さい」

「……ど、どうも」



(ここ、俺の部屋なんだなけどな)



 と思いつつも、遠慮がちに座ると、王子がニコニコしながら丸いチョコレートのようなお菓子を指差した。



「このお菓子は南方の果物を使っているそうだ! 食べたことがない味がするぞ!」



 へえ、と太一はお菓子を手に取って1口食べた。

 チョコレートの中にはドライフルーツが入っており、チョコの甘さとフルーツの酸味が何ともいえず合う。



「本当だ。食べたことがない味がしますね」

「そうだろうそうだろう、私もそう思ったのだ!」



 王子が満足そうな顔をする。


 その後、この果物について得々と解説する王子をながめながら、太一は思った。

 なんか、俺たち、ボッチの相乗効果的なことになってないか、と。




 *




 ここ最近、王子はよく部屋に現れるようになった。



「ミナミダー! 来たぞー!」



 その声は廊下に響き渡り、当然のことながら、他の部屋にいるクラスメイトたちに聞こえている。

 そのせいか、太一は以前にも増して遠巻きにされるようになった。


(まあ、そりゃそうだよな。王族の子どもが遊びに来てるとか、ちょっと近寄りたくないよな)


 一方の王子にしても、どうやら太一のことを友達認定しているらしく、美味しいと思うお菓子を持って部屋に来たりと楽しそうではある。

 でも、太一の存在があることにより、同じ年くらいの友達ができにくくなっていることには間違いないだろう。


 つまり、地球のボッチと異世界のボッチがコラボレーションした結果、お互いボッチが加速するという負のスパイラルに陥っているのだ。



(これ、あんまり良くないよな)



 そうは思うのだが、ボッチの気持ちが分かるだけに、王子が来ても無下に断れない。


 という訳で、彼は王子と共にボッチ街道を更に突き進むことになってしまっている、という次第だ。



 *



 一頻り果物の話をした後、王子が、ふと尋ねた。



「ミナミダの世界の果物はこちらとは違うのか?」

「そうですね……、同じものが多いですけど、ないものもあるかもしれません」

「ほう? ないものとは?」



 太一は紙を持ってくると、さらさらとペンを走らせた。

 こちらで見たことがない果物――パイナップルとバナナの絵を描いて王子に見せる。



「この2つは見たことがないですね。こちらの世界では南国の果物を知られるものです」

「ほう、――お前たち、見たことがあるか?」



 王子がメイドたちに問うと、全員が首を横に振る。

 色が知りたいと言われ、メイドが走ってクーピーのようなものを持ってきた。


 へえ、こんなのあるんだ、と思いながら、太一がササっと色を塗る。


 王子が感心したような顔をした。



「ミナミダは、もしかして絵が上手いのか?」



 太一は考え込んだ。

 絵を描くのは好きでよく描いているが、落書きレベルの漫画絵だ。



「そこまで上手いわけではないと思います」

「そんなことはないぞ。こういう絵は初めて見た」



 王子が珍しそうに絵を見る。

 どうやらこちらの世界にはデフォルメという概念がないらしい。


 言われるがままリンゴやイチゴの絵を描くと、メイドたちがわあっと盛り上がった。



「かわいいですね!」

「温かみがある絵です!」



「いえいえ、そんなことは」と言いつつ、太一は照れ笑いし。

 好きなお絵描き褒められて、何だかすごく嬉しい。


 王子がわくわくしたように言った。



「人は描けないのか? 私を描いてみてくれ!」

「いいですよ」



 太一は、やや調子に乗りながら、ペンを構えた。

 得意のドラ〇ンボールの画風を下敷きに、王子がかめ〇め波を打っている絵を描く。


 王子が「おお!」と目を輝かせた。



「すごいではないか、かっこいいぞ! この絵をくれ!」

「ええ、いいですよ」



 太一は気分良くうなずいた。



「でも、あまり人に見せないで下さいよ」

「もちろんだ」



 王子は大切そうに絵を受け取ると、大事そうに抱えて、「ではまたな!」と言って去って行く。



(なんか良いことした気分だな)



 そんなことを思いながら、太一は寝る準備を始めた。

 一晩寝て、絵を描いたことなど忘れ去る。




 ――ちなみに、この数か月後。

 太一は、王宮の謁見の間に、めちゃくちゃ豪華な額物に入れられたこの絵が飾られているのを見て卒倒しそうになるのだが、それはまた別の話である。






ここで第3章は終わりです

本日は登場人物の紹介を1つ挟んで(日本人の名前が増えて来たので)、明日第4章に入ります

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