06.恐れおののくボッチvs 地獄のパーティ決め(2)
パーティを組む当日。
太一はのろのろと教室に向かって歩いていた。
(はああ……気が重い……)
今までは、気配を消してさりげなく皆に紛れてやってこられた。
しかし、今回ばかりはダメな気がする。
(ボッチがあぶり出されてしまう……)
きっと部屋割りの時のように1人あぶれて、どこかのパーティがお情けで入れてくれるのだろうが、きっと居心地が悪い思いをするだろう。
もしかすると、どこも入れたくなくて、どこが太一を引き取るかジャンケンで決める、なんて話になるかもしれない。
(そんなことになったら、立ち直れないかもしれない……)
はあ、と深いため息をつくものの、太一は顔を上げた。
(でも、そんな環境もそう長くはないよな)
外に出れば、死ぬチャンスは幾らでもある。
がんばってさっさと死ねば良いのだ。
(そうだよな、サクッと死んで、サクッと魔王を倒して、サクッと帰ればいいんだ!)
そのためには、厳しい環境に身を置かねばならない。
ダンジョンに突っ込んでいくとか、要求が厳し過ぎるとか、そういう厳しいパーティに入れてもらうのが理想だよな、と思いながら廊下を歩く。
そして、鐘の音と共に教室に入ると、すでに教官が6人立っていた。
むさいオッサンたちに混じって、リリア先生もいる。
太一が一番後ろの席に座ると、騎士団長が声を張り上げた。
「よし! これからパーティを組むぞ! まずは基本の4、5人で組むように!」
その言葉を合図に、生徒たちが
「組もうぜ!」
「よし、お前も来いよ!」
「一緒にがんばろうね!」
など言いながら楽しそうに立ち上がる。
太一も一応立ち上がるものの、立ったところで行く場所がない。
オロオロと立っていたら逆に目立ってしまう。
(し、仕方ない、座るか……)
のろのろと腰を下ろしながら、これからどうしようかと暗い気持ちになっていた、そのとき。
「――南田君!」
突然、前方から声が聞こえてきた。
見ると、梨花が笑顔で手を振りながら近づいてくる。
彼女は太一にニカッと笑いかけた。
「良かったらうちらのパーティ来てくれない?」
(…………え?)
予想外の展開に、太一は大きく目を見開いた。
からかわれているじゃないかと梨花の顔を見るが、冗談を言っている様子はない。
(……え、マジ?)
目を白黒させながら、太一はぎこちなくうなずいた。
「あ、う、うん。そ、その、ぼ、僕で良ければ」
「じゃあ決まり! 行こう!」
梨花が、笑顔で太一の手を引っ張って前の方に連れていく。
ややよろけつつ歩きながら、太一は心の中で絶叫した。
(うおおおおおお!!!! あぶれなかった!!!!!)
あまりの安堵に涙がこぼれそうになり、慌てて目を瞬かせて誤魔化す。
梨花に付いて行くと、そこには2人の女子が座っていた。
1人は、黒髪ロングの大和なでしこ系正統派美少女、学級委員長の近藤萌。
もう1人は、小柄で少し眠そうな可愛い系美少女、軽音部の浅川結衣だ。
これに茶髪の元気系美少女の梨花が加わると、見まごうことなき1軍女子トップ3。
日本にいたころは、近づくことすら許されないような集団だ。
(マ、マジか)
キラキラの3人を前に固まる太一を他所に、梨花が嬉しそうに2人に報告した。
「南田君ゲットしたよ!」
「よくやった!」
「これでバランス取れたね!」
2人が嬉しそうな顔で「偉いぞ!」と、梨花の頭を撫でる。
どうやら、昨夜3人でパーティを組もうと決めた際に、斥候役がいないという話になったらしい。
そして、梨花が「南田君は?」と言ったため、じゃあ誘ってみようかという話になったらしい。
(なるほど、職業で決めたのか)
太一はホッとした。
ボッチを哀れまれた訳ではないことに安堵を覚える。
そして、まずは自己紹介しようという話になり、黒髪の近藤萌が友好的な感じで口を開いた。
「一応、名前は近藤萌で、職業は『魔術師』。回復魔法から攻撃魔法まで何でも使えるから、魔法のことなら任せて」
続けて、やや眠そうな結衣が口を開いた。
「ん。私は浅川結衣。職業は『魔法剣士』で、スキルで『回復魔法』を持ってる」
「私は北川梨花! 梨花って呼んでいいからね!」
梨花が元気よく挨拶する。
(うっ、まぶしい!)
と思いながら、太一は必死に頭を巡らせた。
上手いこと言わなければと思えば思うほど頭の中が真っ白になる。
そして、彼はガチガチになりながら口を開いた。
「え、ええっと、その、名乗るほどの者ではないですが、南田太一デス。しょ、職業は『狩猟師』――つまり、獣の血に触れることで、真の力を解放されし者」
渾身の冗談を披露するも、女子たちに、
「……へ、へえ」
と、若干引いた顔をされる。
(あれ……、もしかしてこういう冗談ダメなのか?)
若干不安になっていると、前にいる教官が大声を出した。
「よーし! 全部決まったな!」
騎士団長が声を張り上げた。
クラス31人中、生産職8名を除いてパーティを組んだため、全部で5チームだ。
「では、それぞれのパーティに指導教官を付ける!」
誰になるのだろうと思って見ていると、リリア教官がニコニコしながら近づいてきた。
「私はあなたたちのチームの教官よ、よろしくね!」
「わー! リリア先生だー! 嬉しいー!」
「よろしくお願いしまあす!」
女子3人が大喜びしながら、リリアとキャッキャと会話するのをながめながら、太一は居たたまれない気分になった。
こんな華やかなチームに、ボッチの自分がいることに場違い感が半端ない。
しかも、背後に感じるのは、
「なんでお前ばっかり」「ずるいぞ」といった男子たちの刺すような視線だ。
太一は思った。
ボッチな自分が、あぶれなくて済んだのは僥倖だったと思う。
パーティメンバーは親切そうだし、指導教官も普段からよく接しているリリア教官だ。
全体的に見て、とても良かったと思う。
(でも、何だろう、このコレジャナイ感)
太一の目標は、召喚当初からずっと変わらない。
サクッと死んで、サクッと魔王を倒して、サクッと帰還する。
この考えが揺らいだことは1度もない。
故に、望んでいたのは、死に直面するような厳しい環境なのだが、目の前でキャピキャピしている女子たちを見ると、何か違う感が半端ない。
(……本当に死ねるのかな、俺)
内心そんなことを悩む太一を、梨花がニコニコしながらながめる。
その後、授業は解散となり、パーティごとに今後の予定を組むことになった。




