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召喚ボッチは、サクッと強くなって、サクッと魔王を倒して、速攻家に帰りたい!~クラスみんなで魔王を倒す? そんな修学旅行&体育祭みたいな地獄のイベント、無理無理無理!~  作者: 優木凛々
第3章 ボッチ、運命の日を迎える

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02.街に行くボッチ vs 冒険者ギルドのチンピラたち(2)

 

 梨花と一緒に外出することが決まってから、約40分後。


 太一は、彼女と一緒に黒塗りの馬車に乗り込んだ。

 王宮の敷地は広大なため、出口に行くには馬車に乗らないと時間がかかり過ぎるからだ。


 馬車が走り出すと、太一は、腰に付けていたウエストポーチのような革鞄から、1枚の地図を取り出した。

 広げると、熱心にながめ始める。


 梨花が珍しそうに身を乗り出した。



「へえ、地図だ。これどうしたの?」

「……食堂のおばちゃんに貸してもらった」

「この赤い〇とかは何?」

「……肉の仕入れ先だって」



 梨花が楽しそうに笑い出した。



「肉の仕入先がメモってあるとか、めっちゃ受けるんですけど!」

「……ないよりマシだろ」



 太一が目を逸らした。


 急に街に行くと言われ、彼は動揺した。

 急いでシャワーを浴びて着替えながら、なんで自分が誘われたのだろうと考えを巡らせる。

 そして、思いついた。


(そうか、道案内か)


 それであれば、女子が自分を誘うのも分からなくはない。


 ということで、彼は役目を全うすべく地図を探し回った。

 しかし、王宮内の地図はあっても、王都の街の地図はなかなか見つからない。


 そして、ようやく食堂のおばちゃんに、

「いいよ! 持って行きな!」

 と貸してもらえたのがこの地図、という次第だ。


 面白そうに笑う梨花を無視して、太一はマジマジと地図をながめた。

 武器屋の場所と王宮の場所を見比べ、どう行けば最短かと思案に暮れる。


 梨花が明るく言った。



「迷っても大丈夫だよ! この前みんなで雑貨屋に行こうとして、迷って結局行けなかったけど、すごく楽しかったし!」



(いやいや、目的地に着かないとか、さすがにダメだろ)



 そう心の中でツッコミを入れながら、太一は地図に没頭した。

 大体の地理を把握し、地図を鞄にしまう。


 ちなみに、この鞄はファンタジーでよくある『マジックバッグ』だ。

 といっても無限に入るようなものではなく、段ボール1個分くらいの容量らしいが、重さもほとんどない優れモノだ。


(魔法ってこういうところがすごいよな)




 その後、馬車は王宮の敷地を走り抜けると門に到着した。

 衛兵が馬車の中をチェックし、巨大な門をくぐり抜けて王都の街に出る。


 馬車の外に広がる光景を見て、太一は思わず「わあ」と声を上げた。



(すごい……!)



 それは見たこともない風景だった。


 広い通りには西洋風のカラフルな建物が並んでおり、その間をたくさんの人々が忙しそうに歩いている。

 建物の1階は全て店になっており、雑貨屋や洋服店、カフェっぽい店などが並んでいる。


(思った以上に異世界だ!)


 思わず目をキラキラさせて窓に張り付いていると、正面の梨花がクスクス笑い出した。


(し、しまった、子どもっぽかったか……?)


 慌ててきちんと座り直すも、窓から目が離せない。



 馬車はしばらく走ったあと、街の大きなロータリーに停まった。

 たくさんの馬車が停まったり走り出したりしており、王宮に帰るための馬車も定期的に出ているらしい。


 太一は、梨花に続いて馬車から降りると、ゆっくりと異世界の街を歩き始めた。



(おおおお! なんかすごい!)



 街は活気に満ち溢れており、日本では見られないような鮮やかな色の果物が並んでいた。

 路地裏では小さな楽器を奏でる老人がおり、どこからか漂ってくる香ばしいパンの香りが鼻をくすぐる。


 初めて歩く異世界の王都の街に、思わず浮足立ちそうになるが、太一は「いかんいかん」と気を引き締めた。

 これから最短距離で武器屋に行かなければならないのだ。


 彼は地図を取り出した。

 現在地を確認し、「こっちだ」と歩き始める。


 梨花が「はーい!」と楽しそうにその横に並んで歩く。


 しばらく歩いていると、道の横に屋台が並んでいるエリアに差し掛かった。

 美味しそうな匂いが漂ってくる。



「美味しそう! 食べよう!」



 梨花が太一の腕をグッと掴んで屋台の方に向かった。



「ちょ! てか、力強っ!」



 太一がずるずると引きずられて行くと、それは美味しそうな串焼肉の屋台だった。

 脂ののった肉がジュウジュウと音を立てている。



「おじさん! これ何の肉?」

「ボアの肉だ! 油が乗っててうまいぞ!」



 太一が梨花の耳元で囁いた。



「おい、さすがに肉はヤバいんじゃないか? 鮮度の問題とか、焼き加減とか」

「え、大丈夫だよ」



 梨花がけろりとして言った。



「だって、召喚者は毒杯飲んでも平気なんでしょ?」

「……確かに」

「それに、前回も似たようなのいっぱい食べたけど何ともなかったよ!」

「……」



(もう食べたんかい!)



 太一が心の中でツッコミを入れてる中、梨花が慣れた様子で串肉を2本買った。

 1本を太一に渡し、もう1本を美味しそうに食べ始める。


 太一は「あ、ありがとう」とボソボソとお礼を言うと、ジト目で肉をながめた。

 ボアってどんな動物なのだろうと思うが、気にしていたらここでは暮らしていけないと、思い切って口に入れる。


(おお! うまい!)


 食べたことがない風味はするが、油が乗っていてかなり美味しい。


 その後も、梨花はあちこちの屋台に寄った。

 怪しげなフルーツジュースを買ったり、お菓子を買ったりして喜んでいる。


 太一は地図をながめながらため息をついた。

 あちこちに寄るせいで、なかなか目的地に着かないし、どんどん正規ルートから離れていく。



(……前回迷いまくったっていう理由はこれだな)



 そして、せめて自分がしっかりせねばと地図を睨みながら歩いていた、そのとき。


 正面に一際大きな建物が見えてきた。

 何だろうと看板を見ると、金の文字で『冒険者ギルド』と大きく書いてある。




「ぼ、冒険者ギルド!?」



 太一は大きく息を飲むと目を輝かせた。


『冒険者ギルド』とは、ファンタジーもので必ずといっていいほど出て来るお馴染みの組織だ。

 冒険者を管理し、仕事を斡旋したり報酬を払ったりする。



(す、すごい! 本物だ!)



 太一が興奮しているのを見て、梨花が不思議そうな顔をした。



「あの建物がどうかしたの?」

「あの有名な冒険者ギルドだよ! まさかこの目で見られるとは!」



 興奮する太一を見て、梨花が「ふうん」と首をかしげる。



「じゃあ、入ってみようよ」

「え! で、でも別に用がある訳では……」

「いいじゃん、怒られたら出ればいいだけだし!」



 行こう、とスタスタと歩く梨花を、太一が慌てて追いかける。

 そして、恐る恐る大きな扉から覗くと、そこは吹き抜けのとてつもなく大きなホールだった。


 たくさんの人がおり、それぞれ職業に合わせた服や鎧を着ている。


(おおおお! まさしく冒険者ギルドって感じがする!)


 他の冒険者に混じってさりげなく中に入り、ふと壁を見ると、こんな張り紙がデカデカと張られていた。



『冒険者同士の喧嘩は禁止! 暴力を振るって器物破損した者は死刑に処す!』



(し、死刑!?)


 一瞬目を輝かせるものの、太一はすぐにため息をついた。


(……まあ、ないだろうな)


 ここ1カ月ほどずっと死ぬことばかり考えていたせいで、太一には一種の勘のようなものが芽生え始めていた。

 恐らく、あの『死刑に処す』という言葉は脅しで、本当に死刑になることはないだろう。


 そして、その横の『トイレはこちら』という張り紙を見て、太一は急にトイレに行きたくなった。

 梨花に、トイレに行っても良いか、と尋ねると、



「いいよ!」



 と明るく言われる。



(冒険者ギルドのトイレってどんな感じなんだろう)



 怖いような楽しみなような気持ちで行くと、思いの外清潔だった。

 王宮もそうだが、こちらの世界は魔法があるため、トイレや風呂場などの水回りが清潔だ。


(この点はホント助かるよな)


 そして、何事もなく用を済ませて、水で手を洗っていた、そのとき。


 わあっ! 


 という歓声のような声がフロアの方から聞こえて来た。



(ん? なんだ?)



 不思議に思いながらハンカチで手を拭いていると、トイレの出口から男性の興奮したような声が聞こえて来た。



「おい! サンダーバードの奴らが喧嘩だってよ!」

「あいつらも懲りねえなあ」

「今度の相手は可愛いねえちゃんらしいぜ!」



(…………え?)



 太一が固まった。

 まさかと思いながら、急いでフロアに戻ると、



「あのねえちゃん、すげえ動きだ!」

「やるな! 何者だ!」



 大興奮の人々の中、梨花が楽しそうに大乱闘を繰り広げていた。

 叫びながら飛び掛かって来た大男を軽くいなして転ばせている。



(え、えええええ!!!!)



 太一は思わず咳き込んだ。



(な、なななな何でこんなことに!?)



 動揺する太一の前で、梨花が華麗な かかと落としを決めた。




本日はここまでです

また明日!

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― 新着の感想 ―
油じゃなくて脂なような?
えーん、もう17話 こんなに面白いお話し、400話くらい欲しいですわ!
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