06.恐れ知らずのボッチvs 紅蓮の業火(3)
クラスメイトたちが駆け付けた時、離宮は轟轟と音を立てて燃え上がっていた。
建物から少し離れた下には布を広げた騎士たちがおり、
「あいつなんで降りて来ないんだ!」
「なにしてるんだ!」
と焦ったように叫んでいる。
「こ、これは一体……?」
クラスメイトたちが戸惑っていると、見覚えのある薄着の女性――リリア教官が泣かんばかりの勢いで駆け寄って来た。
「大変よ! ミナミダがまだ中にいるの!」
「ええええええ!!!!!」
全員が驚愕の声を上げた。
「な、なんでそんなことに!?」
「アイツ無関係じゃん!」
聞けば、一番上の部屋に逃げ遅れた幼い王子がおり、それを助けるために火の中に飛び込んだらしい。
「王子は助かったんだけど、どういう訳かミナミダが降りて来ないの!」
この話を聞いて、クラスメイトの1人である権田剛はギュッと拳を握った。
彼はラグビー部のエースだ。
大きな体と怪力から、重くて頑丈な盾を装備できる『重騎士』を選んだ。
(みんなのことは、俺が守ってやる!)
南田のことは、「影の薄い、いるかいないか分からない奴」といった程度の認識で、意識したこともなかった。
しかし、蓋を開けてみれば、どうだ。
召喚早々、剣を突き付けられて怯える自分に対し、南田は見事に刃向かってみせた。
身を挺して王女を毒杯から救い、死ぬ覚悟で王族の間違いを正した。
しかも、今回火に飛び込んで幼い子供を助けたというではないか!
(くそっ、なんてことだ!)
彼は思った。
その度胸と勇気、間違いなく南田は漢だ。
普段オドオドしているように見えるが、中身は誰よりも熱い漢だったのだ。
(ま、負けた……)
彼は唇を噛んだ。
同年代に対して感じる、初めての完敗。
だからこそ、彼は思った。
(絶対にあいつを死なせちゃならねえ!)
彼は声を張り上げた。
「南田―!!!!!」
「南田君―!!!!」
女子の何人かも同時に叫ぶ。
すると、一番上の窓から南田らしき人物が顔を出した。
権田は声を張り上げた。
「待ってろ! 絶対に助けてやるからな!」
煙の中から、少し焦ったような声が聞こえてきた。
「いや、助けなくていい! ここは危険だ!」
権田は涙ぐんだ。
こんな絶体絶命の状況にも関わらず仲間の心配をして「来なくていい」と言うなんて、死にたがりのアホか、漢の中の漢かどちらかだ。そして南田はもちろん後者だ。
だから、権田は涙をこらえながら叫んだ。
「馬鹿野郎! 俺たちは仲間だ!」
「いや、いいって!」
「安心しろ! 俺は仲間を見捨てねえ!」
「本当にいいんだってば!」
誰かがボソッと「あれ、マジでいらないって言ってね?」と言うが、そんなものは権田の耳には入らない。
彼は決意を込めて叫んだ。
「何としてでもあいつを助けるぞ!」
** *
その後、生徒たちはそれぞれのチート能力を駆使し、奇跡的に火を鎮火させることに成功した。
まず、学級委員で魔術師の近藤萌と、結界師の女子が協力して、火を消すための作戦を立てた。
結界と風魔法で酸素を遮断することで、一瞬で火が消える。
権田他パワー系職業の男子たちが入り口の瓦礫を取り除くと、生徒たちは南田の元へに急いだ。
そして、最上階の子ども部屋で、疲れた顔をして座り込んでいる南田を発見した。
その目は死んだ魚のようで、まるで全てに絶望しているかのように見えた。
「きっと疲れたんだな」
「うん、危なかったものね」
権田が脱力しきった南田を背負うと、みんなでゆっくりと下に下りた。
建物を出ると、彼らは大歓声を上げる人々に囲まれた。
「さすがは異世界勇者だ!」
「ばんざーい! ばんざーい!」
そんな大歓声の中、権田の背中にいた南田がブツブツと呟き始めた。
「こんなはずじゃなかったのに」
という声が聞こえてくる。
権田は思わず笑った。
本当にこいつは謙虚な漢だ。
その後、南田は虚ろな目をしたまま医務室に運び込まれ、手厚く看護されることとなった。
――そして、この1週間後。
「ミナミダタイチに、『身代わりのミサンガ』を与える!」
なんと、太一はパカラ王子を救った褒美として、『身代わりのミサンガ』を与えられることになってしまった!
このアイテムは、1回だけ死を肩代わりしてくれるという。
(こんなのいらないに決まってるじゃん!)
太一は必死で辞退した。
「こ、こんなもの、受け取れません! 僕にはもったいないです!」
しかし、
「これは私のせめてもの感謝の気持ちだ。どうか付けてくれ」
パカラ王子にもじもじされながらそんなことを言われ、付けない訳にもいかず。
結果、太一は最強とも呼べる守護を手に入れてしまった!
「こんなのどうやって死ねばいいんだよ!」
太一の死ぬ日はまだまだ遠い。
第2章の本編はここで終了です。
閑話を1つ挟んで第3章に行きます。
ちなみに、第3章は街へ行き、第4章では外の世界に飛び出しちゃう感じの展開になります




