(閑話)不思議に思うボッチ vs 過去の勇者たち
召喚されてから数日が経過したある朝。
教室にやってきた文官が、紙を配った。
「これからの大体の予定が書いてありますので、参考にして下さい」
太一は、回って来た紙をながめた。
紙には今後のスケジュールと時間割のようなものが書いてある。
――――
STEP① 基礎勉強
午前: 座学
午後: 基礎訓練
STEP② 基礎訓練
午前: 座学
午後: 武器別・基礎訓練
STEP③ 応用訓練
終日: 武器別・応用訓練
STEP④ 実践
終日: パーティを組織、実地訓練
――――
太一は、最後の地獄の1行を見ないようにしながら思った。
なんか、妙に親切というか、異世界っぽくない気がするな、と。
同じことを思ったのか、学級委員の黒髪美少女・近藤萌が手を挙げた。
「あの、これって誰が作ったんですか?」
「これは50年前に召喚された勇者たちが帰り際に作っていったものだそうです」
なんでも、勇者たちは
「絶対にこれに沿って次はやるように!」
と散々念を押して帰っていったらしい。
クラスメイトたちの間に同情の空気が漂った。
誰もが「きっと前回は色々苦労したんだろうな」と察する。
ちなみに、この離宮についても、前回の召喚者たちが指定していったらしい。
(なるほどなあ、道理で過ごしやすい訳だ)
もう1人の学級委員の吉田涼が手を挙げた。
「あと気になったのですが、魔王を倒すのに、こんなにのんびりしていて良いのですか?」
何人かが、
「それは俺も思った」
「すぐに魔王を倒しに行けと言われるかと思った」
といったことをつぶやく。
文官によると、なぜか魔王は1年近く魔王城の地下深く籠ったまま出てこないらしい。
そして、その地下は攻略が死ぬほど難しいダンジョンになっているらしく、生きて戻って来た者はいないらしい。
「ですので、討伐が本格化するのは1年後に魔王が地上に出て来てからになりますので、比較的時間があるのです」
太一はジト目で文官を睨みつけた。
それなら直前に呼んでくれよ、と恨みがましく思う。
ちなみに、魔王城はかなり離れたところにあるようで、行くまでに相当時間がかかるらしい。
「それに、色々やることがありますからね。例えば伝説の武器を集めるとか」
「え! 伝説の武器?」
文官によると、異世界召喚がされるのと同時に、世界のあちこちに神が作った伝説の武器が出現するらしい。
(なんだよ、このゲームっぽい世界は!)
そう心の中で突っ込むが、もしかしてゲームがこの世界っぽいのかもしれないとも思う。
(帰還した勇者がこの世界をゲームにしたっていうのも、あり得ない話じゃないよな)
ということは、前回の勇者はス〇ウェア・エニッ〇スの社員かもしれない。
そんなことを考えつつ、太一は思案に暮れた。
魔王は1年くらい地上に出てこないと言っていた。
ということは、つまり、さっさと魔王を倒そうと思ったら、ソロで世界最高難易度のダンジョンに挑まなければならないということになる。
(できるのか……?)
弱気になりそうになるものの、彼はぶんぶんと首を振った。
どんな辛い試練になろうとも、ボッチであぶれるよりは数十倍マシだ。
彼は頭の中で計画を立て始めた。
(死ぬ努力をするのと同時に、腕を磨いて強くならないとな。それと、伝説の武器も手に入れないと……)
これからがんばるぞ、と気合を入れる。
――ちなみに、彼が
「いや、強くなればなるほど、死ぬのが難しくなるじゃん!」
と気が付くのは、かなり後になってからのことである。
本日はもう1話いきます




