或る少女の旅④-選ぶもの
「会話をしていて何か違和感がありましたが……夢に関する記憶を失っていた……ですか」
「そうです。しかし……その様子なら」
少なくとも――リーリスが何かを企んでいる訳では無い。と言えるだろう。
私は今、昨日の夢の一部をはっきりとしている訳では無いが、夢の中に魔術でリーリスがやってきたことくらいは思い出した。
――ろくでもない回想の仕方だった。この過程を要約するに、あまりのショックで私の脳にリーリスの変態的行動が刻まれていたということ。そして現実でそういうワードが出てきて――夢の下りをことを思い出したと。
うん、イヤ。過程が最低。
「だからあ……誤解です……昨日のアレは夢魔的な本能のせいでハイになってて……」
この女がハイじゃなかったことなんてあったか……?というのはさておき。
「衝動犯罪はみんなそうでしょう」
「うう……犯罪者扱い……」
しかしそれならば――余計リーリスの動機が分からない。
「――ベスを取り戻したい、その為には私が邪魔くさいから……」
夢の中で、消す、殺す。
それくらいはするのじゃないかと考えていたが。
「……しませんよ、そんなことは」
……即答。
「それは、失礼しました」
ふと、思う。
奪うことに、罪悪を感じないのか。
軽蔑されるそのたび、自分を嫌悪しないのか。
彼女はそう言うた。
彼女は自分の性質を、そう卑下した。
しかし、考えてみれば当然の権利だ。
人間が牛や豚や鳥を殺し、その血肉を糧とするのが当然とするならば、彼女にも、生きる為の行為、…………そうする権利はある筈だ。
だからこそ――彼女は、人間に憧れた。
その権利はリーリスから見れば――あまりに残酷過ぎたのだ。
リーリスの、彼女の本質。
もしかすれば――善の色をしているのかもしれない。
私は彼女の――その色を見た。
「ーーーー」
「…ど、どうしたのです。綾さま、その手は」
「……貴女の行動を寛容する訳ではありません。だけれど……個人的に、思ったんです。貴女という人間を、私は見ていなかった。だから謝りたい。と……思います」
「…………綾さま」
「……」
「ふふ…何をそんなほおを赤らめてるんです?可愛いい」
「………」
「あーっごめんなさいごめんなさい!!引っ込めないでそのお手!!!」
手を繋いでからリーリス、勢いで抱きついてきた。
抱きついて、リーリスの顔は私からは見えない。
けれど、私にはその刹那ーー彼女の本当の笑みが見えたような気がした。




