ヤツが来る⑤-せめて、なろうらしく。(無双)
「地下で何をするのだ?あとその男の人形は……」
「まあ見てて下さい。あと―――ここに入らないでおいた方がいいかも」
「―――?」
私はガラスの内からベスに言う。
――私が日課にしているのは近接戦闘の訓練だ。
ここは地下に作られた訓練所のようなもので、私達はそこに降りてきているのだ。
この真っ白く妙に筋肉質な、長身な成人男性の人形は森さんの魔法による特別製で、私の動きに合わせて動く。訓練に非常に役立ってくれる。
「―――!?綾、銃で何……」
「ふっ…………!」
私が瞬時に人形から距離を離したその刹那、ガン、と、私の拳銃からの火薬の音が四回。
四つの空薬莢が宙を舞い――落ちる。
人形の右の肩が軽く抉れているが――弾が当たったのはそれだけだったらしい。
いつの間か人形の手には、その人形と同じような質感の真っ白く、長いナイフが握られている。
その人形は止まらず――人間ではあり得ない速度で私に距離を詰めてきた。吸血鬼との戦闘を想定しているのでそれくらいに速い。
「………………」
残りの弾を撃つか――捨てて肉弾戦か。
「……………………う」
ものの一秒ほどで距離はあっ、という間もなく目と鼻の先ほど。私は拳銃を近くに放って投げた。
「綾――――――!?」
ズドン――と床に叩きつけられた音でベスの声はかき消された。
「えぇ………………」
「あ、ベス。心配はいりませんよ、一応勝てますから」
地面に叩きつけられたのは、無論人形の方だ。
人形がナイフを振るよりも先に――心臓部に一発入れひるませ、武道術でつかんで落とした。落とした拳銃を拾い人形の胸に残りの弾を撃ち込み、KO。
自分で言うのもなんだが、目にも留まらぬ速さだ。
ガラス越しのベスは――固まっていた。
「しゅっ、しゅっ」
固まってるベスに、冗談で手振りしてみる。
「しゅっしゅっ、じゃない!冗談抜きで喰らったやつ死ぬだろ!何だその格闘術!?」
「森さんに習って……こいつ、拳銃で倒せたら一番だったけれど……やっぱり近接過ぎると中々当たりませんね……」
「はあ!?拳銃なんて不要だろう!今の動きを喰らったらわしは五回は死ねる!」
「そんな自信満々に言わなくても」
私はガラス張りのドアを開けた。




