表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

58/87

寝不足さんには吸血鬼の膝枕④-完璧で究極の?


「んじゃ、私はもう帰るわ」

「どうしたんです?いつもの――用事ですか?」

「そんなとこ。今日は早う帰るわ。


小音と私は帰宅部なので、放課後になればすぐに帰れる。しかし小音が部活に入っていない理由は、ただの面倒くさがりの私とは違うらしい。こうやって小音が、()()を理由に帰宅することもざらだ。


「そうか。気をつけて帰るのだぞ」

「小音、特に……黒下着の変態には気をつけるんですよ?」


「ははは。分かったわ。ありがとな綾ちゃんベスちゃん。けど――気をつけなきゃいけんのは綾ちゃんやない?」

「大丈夫ですよ。最悪ベスを差し出して逃げます。時速60キロで」

「ひきずってでもいいから……わしも持ってってくれ……」


……その気持ちには共感しか湧かないのだが、どんだけ嫌なのだベス。……いやまあ私がベスならば、引き摺られる方を選ぶが。


「しみじみと必死さが伝わってくるで……ただな」


と――すれば、小音はベスの耳元で、一言だけ何かを囁いた。


「………………?」

「ふーむ…………」


一体何を伝えたのだろうか、私にその言葉は聞こえない。


「何言ったんです?」

「綾ちゃん、秘密や〜」


「……………………?」


「あ、そうだな小音。……()()()の、用事とは、何かあるのか?」


と、したらベスが話を変えた。



「――え……っとな」


と、したら言葉を濁す小音。


「ふむ?何なのだ、気になるだろう。綾は知らないのか?」

「いや、私も知りませんけど」


「…………えぇ――っと……」


用事、それがいかなるものなのかは私には検討もつかないが……小音がここまで言葉を濁すとは珍しい。


「ふーん?何ですか、気になるじゃないですか」

「うーん――まあ……隠すことでも、深刻なことでも……ないんやけど……」


「えっ何なんです、気になります」


小音の前を跳ねながら、理由を問うているベスほどではないが――ここまで来ると、さすがの私でも興味が湧いてくる。


「何だ何だ隠すことでもないのかあ?ならば話せばよしじゃろて?」



「文学少女たちよ。……のな、推し活!」

「へ?」


すると小音は早口で語る。


「ちょーっとなんとなくこっぱずやったし綾ちゃん聞いてこーへんかったし言ってなかったけどな?いやほんとな?あっ、要するにアイドルのグループ名なんやよ。……うん。」

「そうなのか?それで……推し活とはなんたるのだ?」


ベスの問いかけに――ほんの少しだけ、小音が顔を赤らめているように見えた。


「ええ……っと――推し活ってのは…………」


小音が説明し、ベスがふんふんと頷きながら聞いている。

しかし、小音が――アイドルとは。


「なんで恥ずかしいんです?好きなら好きって――言えばいいのに」


私は小音に――素直に思ったそのことを尋ねてみた。


「……う…………綾ちゃんそー言うと……思っとった……」

「…………?」


「……は…………恥ずかしいもんは…………」

「恥ずかしいもん……は?」


「……恥ずかしいんや―――!分かってく……いや分かれ――っ!!!」


「ご、ごめんなさい?分かる……努力を、尽くします」


思わぬ小音の気迫に押されて、つい私は謝った。


「……綾ちゃんな、しからばよしと、しといたる!」


初めて見るその小音の姿は――いつもよりも、いきいきとしていたような気がした。


知ろうとしていなかったから、当然ではあるが。

私はこの小音の姿を知らなかったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ