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働けきゅうけつきさん⑤-始祖の魔法
錆びた、『雀猫』と書かれたドアをきゅうけつきさんが開ける。
彼女は少し、小走りで先行していた。
機嫌が良いのがよく分かる。
「ただいま帰ったぞー!」
「お帰りなさい、大丈夫だった?」
「もーまん、たい。じゃ」
「その手に持ってるビニール袋は、何なの?」
森さんがきゅうけつきさんに聞く。
「これは、わしの魔法を使うのに必要な道具なのじゃ。まあ見ていよ」
「……魔道具?そうなんですか?」
そのビニール袋に入っているもの。
――それは……
「じゃじゃん!」
森さんにきゅうけつきさんは、彼女がその手に持つ――
「ええと……ナイフ?ナイフで何をするの?」
ナイフと言っても食器用ナイフである。日を跨いでいるくらいには深夜であるが、コンビニが開いていて良かった。
しかし彼女はなんのために、わざわざそれを欲しがったのだろう。
「……わしは転生してから、魔力がへぼだったんでな、大半の魔法を使うことが出来なくなっていたのじゃ。しかあし!綾のおかげでひとつだけ魔法を使えるくらいには力を取り戻したのだ!それが……これじゃ――つ!」
そう言うと――彼女は自分の胸にナイフの先を当てた。




