謎の(おむすびの)可能性
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「起きたか。食欲はあるか?」
ソフィアが「目覚めの水分だ」と、グラスに入った水を渡してくれた。
あれから、実亜はソフィアに寝かしつけられて、少しのうたた寝から目覚めたら、もう夜になっていた。
「はい、お腹空いてます。あの、特に体調が悪いわけじゃないですよ?」
だけど、ベッドに寝かされてすぐに眠れていたから、楽しかったので気付かなかっただけで案外疲れていたのかもしれないなと実亜は思う。
「ふむ、そうだったな」
それでもソフィアはベッドに腰掛けて、実亜の様子を確認している。ついでに髪を撫でて軽く整えてくれたり、額に手を当てて熱を確認したりで、甘やかし過ぎではないかと思うくらい優しい。
「ソフィアさんは……お元気そうですね」
触れられる手も熱くはないし、眼力のようなものもしっかりしているし、髪も――珍しくポニーテールみたいに後ろで結っているけど、サラサラで綺麗だ。
実亜はソフィアに答えながら「髪型、珍しいですね」と、ポニーテールのソフィアの髪に軽く触れていた。
「ああ、ミアの可愛い寝顔を見ていたら、疲れも吹き飛ぶというものだ。この髪はアステリアの仕業なんだ」
ソフィアはそう言いながら少し照れている。夕食前にアステリアが遊びに来て、ソフィアの髪で一通り遊んで行ったらしい。
「ありがとうございます。その、ソフィアさんも可愛いです」
いつもしない髪型で照れているのも可愛いし、面倒見のいい優しいお姉さんなのも可愛い。つまり、とても可愛い。
「照れてしまうが、ありがとう。そういえば、ばあやがミアに関することを発見したから、明日にでも話をしたいと言っていた」
明日も休みだから丁度いいな――ソフィアはテーブルにかけている、細かな網で出来ている四角いテント型の覆いを取っていた。小型のテントみたいな謎のアイテムは、一瞬で傘みたいに細くたためて更に謎だった。
「わかりました。私に関する……?」
実亜は訊きながらその謎アイテムを見せてもらう。
見た目と使い方から考えると、食事に虫とか埃が付かないようにする――多分、網戸とかの仲間のようなものだとは思う。
「ミアと女神のことだと思うが、ばあやは時々何を発見するかわからない」
それは「ハイチョウ」と言って、かつての女神がもたらしたものだ――ソフィアが謎アイテムを説明してくれる。
温かい料理の熱を逃しつつ、虫や埃から料理を守る――と。
「はい……あっ、あの、何度も言いますけど私は女神様じゃないので……」
謎アイテムは予想通りの使い方だったけれど、まだ知らないことがあるなと実亜は思う。
もし、自分が女神だと言うのなら、こういった謎アイテムだって知っているはずなので、女神じゃないとも再確認しながら。
「ああ、わかっている――私には女神だがな」
「もう……ありがとうございます」
実亜はいつでも甘いソフィアに答えていた。
「甘い豆を楽しむ……甘い豆か、想像がつかないが、ミアの国の食べものなら美味しいだろう」
実亜とソフィアの二人で夕食を食べながら、ソフィアが笑っていた。
話題は食後の甘いものは別腹という現象について――から、実亜の国ではどういう甘いものがあるのかになっていた。
そこで、実亜はこの世界でこれまで遭遇しなかった和菓子の話をしていたのだ。夕食のメニューが大豆と肉をトマトで煮込んだものだったから、豆繋がりみたいな感じの話になった。
「小さめのおむすびを、甘く煮込んで潰した豆で包むおやつもありますよ」
おはぎとかぼたもちって言うんです――実亜のそんな言葉に、ソフィアが「ほう」と、驚く。
「ふむ、オムスビが甘い――オムスビというものは不思議な可能性を秘めているな……」
ソフィアは面白そうに「もっとオムスビの話を聞きたい」と目を輝かせている。
「えっと、おはぎにする時は、炊いた米の粒を少し潰してもちもちの状態にすることがあるんですけど、もちもちの度合いで『半殺し』とか『皆殺し』とかの物騒な呼び方をすることがあります」
相当物騒ですけどね――実亜はソフィアに説明していた。
「もちもちは、弾力があって柔らかいものだったな――成程……その、柔らかさには似つかわしくないくらい物騒だ」
しかし、美味しいだろう――ソフィアは何度も頷いて、不思議な納得をしている。しかも、おむすびに対する信頼が何気に高くて可愛い。
「おむすびとは種類が違う米を使うと、本当にもちもちでよく伸びるようになって、今度は逆に甘い豆を包むんです」
実亜は大福系のおやつに説明を広げる。
「ふむ……それは予想外だ」
ソフィアが「しかし、オムスビという点では中に具材を入れるのだから、理に適っている」と深く納得していた。
なんとなく、そんなソフィアが凄く可愛くて、実亜は小さな幸せをまた感じるのだった。
過去投稿分への誤字報告ありがとうございました。
反映させております。




