第九十話 舞い踊る戦士たち
蒼い月の光りに照らされた古い鉱山。
その鉱山の坑道に斬撃の音が響く。
夜の闇に紛れて幾度となく響く。
鉄と鉄がぶつかり合う鈍い音。
だけど……… その音は私の耳に届いていない。
いや、音は聞こえるんだ。
だけど、その音が気にならない。
気になる事がない。
それほどまでに、私は目の前の光景に目を奪われている。
音の感じない世界………
その世界でトロンの街で出会った男の子。
リュトが踊っている。
騎士と共に踊っている。
その踊りは私を魅了して。
目を背けることも………
瞬きすることさえ、はばかられる………
そんな想いにかられる。
不思議だ………
この踊りは凄くゆっくりに見えて、
凄く荒々しく見える。
ああ! うるさいなぁ精霊さん!
よく見えないじゃないですか!
静かにしてください!
騎士が剣を振るうたびに、花が咲く。
それは赤い花………
私にはそれが花火に似ていると思えた。
村での収穫祭の時に打ち上げる花火に思えたんだ。
オババとお爺さんが収穫祭までに一緒になって造っていた花火。
それが打ち上がるのを見るのが、私は大好きだった。
本当はもっと大きくて、高く打ち上がるらしい。
だけど、私はその花火が大好きだったのだ。
夜空にパッと咲き、吸い込まれるように夜の闇に消える花火。
嗚呼、また………
うん、わかっている。
私はちゃんと理解している。
あれは花火なんかじゃない。
でもそれは、私には花火のように輝いて見える。
どうしてなんだろう?
たぶん、あれは命そのもの。
リュトの命そのものなんだ。
だからあんなに輝いて見えるんだ。
こんな時に何故だろう。
ふと想いに駆られる。
私は旅をしている。
理由は魔女になるために。
でも、本当にそれが私の目的なのかしら?
ーーわからない。
本当に魔女になりたいと思っているのかしら?
ーーわからない。
でも私は村のしきたりで旅に出たんだ。
その旅は過酷で困難なものだとわかっている。
私は自分の命が無くなる事さえ覚悟して村を出たのだ。
そう、私は命の覚悟は出来てる。
だけど、私だけの命の覚悟。
他の人のなんかーー知らない。
知りたくもない。
だから神さま………
深淵の森の神さま………
お願い………
リュトを助けて………
こんな文章は後から、ああすれば良かった、こうすれば良かったって言うのが出てきて、しばらくすると元に戻した方が良いなとか出て来るから困る!




