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第八十七話 ビルツ

「なんでだよ………」


 そう呟き、唖然とするリュト。

 目の前の光景は、まさに絶望でしかない。

 この現状を信じることができない。

 ダンジョン化した鉱山から脱出できた。

 そう思った矢先………

 冥界の海から浮かび上がろうとした瞬間に、足を掴まれ引き込まれた…………

 そんな感覚にさえ(おち)いる。


「逃がすわけなかろう、下等な者どもよ。コホッ!」


 その声に全員が反応する。

 白い霧の中から、ドス黒い瘴気をまとい屍人と化した騎士を連れてビルツが現れた。


「あんたがこれほどの 死霊術使い(ネクロマンサー)だとはね。屍人(グール)をこれだけ動かせるとはどんだけ呪いをかけたんだい? 怨みも相当なもんだろう?」


 シェランさんが声をかける。

 シェランさんも、やはりビルツが死霊術使い(ネクロマンサー)と思っていたみたいだ。

 だけど、この数はおかしい。

 あまり詳しくないが、屍人(グール)を動かすには呪いを魔力とともに死体に込める。

 その呪いとは大体が術者の怨恨だ。

 ある死霊術使いは3体の屍人(グール)を創り出した時点で、気が狂ってしまったとオババから聞いたことがある。

 オババいわく、怨みつらみを魔力に乗せる行為は相手だけでなく自分にも影響を及ぼす。

 言い換えるなら我が身に降りかかるらしい。

 そして、その影響がどの様に表れるかと言うと、怒りや悲しみと言った負の感情が術者に押し寄せると言われている。

 いずれにせよ、死霊術の術者はろくな事にならない。

 いや、“ろくな死に方をしない”が正しい言い方だろう。

 心と魂を穢され、精神を蝕まれるのだ。

 これだけの屍人(グール)を動かせるとなると、どれだけの怨みどれだけの魔力が必要になるのか検討もつかないが、ひとつだけわかることがある。

 あの人、ビルツという人は得体が知れない。


「ふん、つまらん人間だ。凡人はすぐに己の理解が出来る範囲で物事を測る……… 私は、(われ)は死霊術使いなどではない」


 ビルツは感情の欠片も感じさせることなく淡々と言葉を吐き出す。


「彼らは進んでああなったのだ。(われ)が命令したわけでも、強要したわけでもない。まぁ、少しばかりの手伝いはしたがな………」


 言葉の一つひとつが不気味に聞こえる。

 そして、言葉を拾うたびに口の中がカラカラに渇く。


「そこの女、貴様も知っておろう。そこの劣等族のおかげでトロンの街に起こった惨状と苦しみを」


 ビルツがシェランさんに言葉を投げかける。


「ああ! だが、これだけの屍人(グール)を創り出す必要なんかないね! 異常だよ! あんた!」


 焦りと恐怖が入り混じった声でシェランさんは答えた。

 だが、ビルツはシェランさんの言葉に対しても、何の感情を表すことなく言葉を続けた。


(われ)が創り出したと言うわけではない。言ったであろう、彼ら自身がそれを望んだのだ。コホッ!」


「そんなわけないだろう! 嘘を吐くな!」


 ビルツの言葉に対し、リュトが吠える。

 だがリュトの顔色は悲痛を表している。

 隣のシェランさんも蒼白な顔でビルツを睨んでいる。

 ビルツの素行の恐ろしさはわかる。

 だけどリュトとシェランさんは異常なまでに恐れを抱いている様に感じた。


「嘘ではない私は、(われ)は……… 領主様は問うたのだ。彼らに。」


 そのビルツは変わらず無表情で言葉を並べる。


「豊かになりたいか? 子供たちの飢えを無くしたいか? お前たちは何を望み、何を求めるのか? そのような事を………」


 次の瞬間、私は身の毛がよだつ思いと嫌悪感を同時に味わう事になる。


 ーーあのビルツが笑ったのだ。


 無表情で感情というものを表に出すことのなかった男が、顔を歪め、醜く笑ったのだ。

 そして……… 言った。


「トロンの街の者にも問うたのだ」

50のおっさんがゲームセンターに行って、麻雀のゲームでボロ負けしてムカついたから投稿した。

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