表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/132

第五十九話 山ケガレ

 私たちは光苔を松明代わりにしながら、場所を移動する。

 

「ここは最初の頃の山で、見ての通り閉山している。もう銅も錫も取り尽くしたってことだ。つまり中身がスカスカだかんな。下手に暴れると崩落の恐れがあるからな」


 なんでもないかのように、恐ろしいことを口にするシェランさん。 

 それはまぁそうかもしれないが、言い方に気をつけて貰いたい。

 だってリュトのお父さんは、鉱山で起こった事故で亡くなっているはずだから。

 私はなんとなくリュトの方に顔を向ける。


「姐御はこんな性格だからな、気にしちゃいねぇ〜よ、気にするほどバカってもんだ」


 私の視線に気づいてリュトは私に向かってそう言った。

 本当に気にはしてないようだ。


「ハン! ヒヨッコがいっぱしの事言ってやがる。つい最近まで泣きべそかいて……… 」


「シェランさん! あ、あの……… 先程の普通じゃないってどういう意味で………」

 

 なんかシェランさんの話はリュトが不憫に思えそうなので、先ほどの話題に変えよう。

 

「ん? ああ、それはな人にも、この鉱山にも変なことが起こっているんだ」


「変なこと……… ですか?」


「ああ、まず人に関しては病気だ。鉱山の煙突から出る煙が原因というヤツが多いんだが、肺をやられる。いきなり死ぬことは無いが、咳に苦しんで働けなくなり鉱山を去る連中が多くなった」


「肺の……… 病………」


 そういえば、街の人たちの中にも咳をする人は多かった。

 あのビルツと言う人もそうだ。


「けど、領主……… さまは、薬師をつけて治療させてるって話じゃないか」


 リュトの言葉にシェランさんは横に首を振る。


「確かにな、だけど治った奴は一人もいないんだよ。せいぜい咳を弱めるくらいだ。治らないんだよ、この病は、不治の病ってやつさ」


「それが働く人がいなくなる原因?」


 その私の声に反応したのはダレフさんだった。


「そうじゃ! 山で動物が死んでおったろう、それも同じじゃ、お主ら人間は加減、程度というものを知らん!」


 ダレフさんは怒っていた。

 寡黙なダレフさんらしくない。

 いや、たぶんドワーフとしてのダレフさんはこうなのだろう。


「ワシの仲間は伝えたはずじゃ! 考えなしに過度に山を削ると『山ケガレ』が起こると!」


「『山ケガレ』って………」


「山ケガレは、山ケガレ……… じゃ」


 肩で息をしながらダレフさんは項垂れる。


「毒……… らしい」


 シェランさんが静かにそう言う。


「『らしい』というのは我々が、人がまだ把握してないからなんだ。ドワーフの中では確定事項なんだ……… なんでも鉱山を削り過ぎることが原因だと」


 暗い坑道を進みながら、この鉱山で起こっていることをシェランさんは話していった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] つまり、山ケガレを恐れてドワーフは去ったけれど、その意味を領主たちは理解していない(理解しようとしない)ということですね。 水が、キーワードになりそうな気がします。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ