第三十八話 違和感
「まいどありがとう、お嬢ちゃん」
優しそうなお婆さんから、小さな紙袋を渡される。
中身が溢れないように、しっかり閉じているか確認すると、それをポーチの中にしまう。
「えっと、こんなもんかな?」
次の街へ向かうための準備としての買い出しに来たのだが、思ったよりは早くすみそうだ。
これならお昼には、この街を出ることができそうだ。
ただお昼の食事をどうしようかな? と考えていたその時、私に声をかける人物が現れた。
「よう、メチルだったかな」
「あなたは………」
声をかけてきたのは昨日の女魔法使い、名前をシェランと言ったはずだ。
その女性は屈託のない笑顔を私に向ける。
だが、私としてはお知り合いにはなりたくは無い。
面倒ごとはおこしたくないし、どのみちこの街からもうすぐ出るのだ。
「いえ、違います。では」
私は早々に切り上げ、その場から立ち去ろうとする。
すると、その女の人は急に大きな声をあげて話しかけてきた。
「おーい、つれないなぁ。深淵のお嬢さ………」
慌てて振り返り、口を押さえる。
「はぁーい!! なんでしょう! お・姉・さま!」
その瞬間のニヤけた顔を、私は正直言って殴りたかった。
〜〜〜
「ふーん、もう出ていっちまうのか」
「はい、長居は出来ません」
人通りの多い広い道を並んで歩く。
「そうだなぁー、それがいいだろうなー」
シェランさんの言葉に少し引っかかりを覚える。
たしかダレフさんも早くにこの街を出る事は、良いことと言っていたはずだ。
「あの……… 何が良いのでしょうか?」
「ん? ああ、そうだな」
私の質問にシェランさんは少し間を置いて、逆に質問してきた。
「この街をどう思う?」
「え?」
その質問の意味がわからず、そう答えてしまうとシェランさんは私の目を見据えて静かに言った。
「この街が他の村や街と同じに見えるか?」
「そう言われても……… えーと」
シェランさんの言葉で周りを見渡してみる。
しかし、これと言って変わったところは見えない。
道行く人は痩せている人は少なく、塀の上で寝ている猫も丸々太っている。
食料に難があるようには見られない。
周りはお昼前で人通りが多くて、活気があると思う。
思うけど、活気というにはやや弱いかな?
その時、わずかに違和感を感じた。
もう1度周りを見る。
「……… 老人と子供しかいない?」
その違和感を口にした時、目に写るすべての事柄を確認する。
屋台で買い物をする人、そして売る人。
石畳みに腰をかけ、休んでいる人。
向こうで馬車を引いているのもお爺さんだ。
数人の子供たちがいる以外、私と同じかひと回り上の世代までの年齢層の人達の姿が、まったくいなかった。
私はそれを確認するとシェランさんの方に顔を向ける。
シェランさんは小さく頷き、そして言った。
「この街は一見すると豊かだ。だけどそれは偽りさ。この街は異常だ」
投稿直前でつじつまが合わない文章を見つけると、修正しても、まだあるんじゃないかって思って、読み返すとまた見つけて………
投稿って勇気いるよね




