~第四幕~ 「美星 味子の章」
私の名前は、美星味子。
成績も並、運動神経も並、器量も並。特に目立つ存在でも無ければ、悪い噂も無い。
……そんな極々(ごくごく)平凡な高校生が私、美星味子である。
私達がこの学校に閉じ込められてから、丸一日が経過していた。そして、私達がデス・ゲームに巻き込まれて初めての朝を迎える。
「お腹、空いたなぁ……。」
学校なので一応水道は通っている、水分補給の心配は特に問題無い事だろう。
トイレもある。夜もそんなに寒くは無いので、誰でも問題無く体育館で睡眠も取れ夜を過ごせている。
問題は他の所にあった。……つまり、食料事情である。
二択のデス・ゲームなのに、餓死ってどうなのだろうか?普通こういうデス・ゲームは、食料とかはある物なんじゃないの?
……まあ、デス・ゲームなんて初めてだし。普通が何か、分からないけどね。
「腹減ったー!食い物、何かねーのかよ!?」
「私も、お腹空いたー。」
……やはりと言うか、皆同じ意見の様だ。
クラスの皆は、一斉に校舎に何か食べ物は無いかと探しに出掛けて行った。
「確かにこのままだと、二択鬼に殺される前に飢え死にしちゃうよね。」
……私も皆と同じく、校舎に食べ物を探しに向かう事にした。
食べ物はすぐに見つかった。教師の宿直室にカップラーメンが五十個程度。そして、家庭科室には大量のお米、お肉、お野菜と。かなりの食料が備蓄があり、これでこの先一ヶ月は食料に困る事は無いだろう。
「でも俺。……料理何て、出来ないぞ。」
「……俺も。」
食料はあるのに、げんなりする男子生徒一同。
「私に任せて!和洋西中、何れが良い?」
私には、何の取り柄が無いのかも知れない。……でも、料理だけは自信があった。
「美星さんて、確か料理得意だよねー。」
私が料理が得意なのは、友人の中では有名なのである。他にも、料理が得意な女子も勿論居た。
……しかし、次々と私の作る料理にクラスの皆は目を丸くする。
「どうやって、料理覚えたの?」
「本かなー?」
大型の中華鍋で作る、本格的炒飯。
「苦手な物がある人は、言ってね。」
「……腹減ってるから、何でも食べるよ。」
お肉たっぷりの、ビーフシチュー。
「この前のテレビ、見た?」
「んー、私は見ていないかなー。」
料理に集中する私だけど、何気無いお喋りを楽しみながら作る料理はやっぱり楽しいね。
「朝は、ご飯派?それともパン派?」
「んー、ご飯かなー?パンも好きだけどねー。」
デザートには、プリン。
──トントントン♪
──ザクザクザク♪
──ジュウジュウジュウ♪
私は何気無い会話を楽しみながら、踊る様に次々と様々な料理を完成させていった。
「皆、出来たよー!」
……そして魔法の様に出来上がる、多彩な世界の料理達。
「さあ、召し上がれ!」
私は皆に手を広げ、にこにこ笑顔でポーズを決める。
「…………。」
「…………。」
「……あれ、どうしたの?皆。」
何故かクラスの皆は、静まり返っていた。
「……どうしたの?」
「……いや、凄いと思って。」
「うん、滅茶苦茶凄いよ。」
「そんなー、大袈裟だよ皆ー。皆も一生懸命手伝ってくれたしね。皆、食べて、食べてー。」
「じゃあ、私これ貰いー!」
「あ、ずるいぞ!それは俺のだ。」
「沢山あるから、大丈夫だよー。」
私の料理は、大盛況でした。
……おしまい。
〈男子生徒〉
仁科択一、一問正解。
猛虎大河、一問正解。
早乙女大好、一問正解。〈社会的に死亡。〉
〈女子生徒〉
美星味子、八問正解。




