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二択鬼〈ギルティ〉  作者: 魔神


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6/7

~第三幕~ 「早乙女 大好の章」其の参

「この難問で、必ず殺してやるぞおおおおおおおおおおおおおお!!」

──フー!フー!!

二択鬼(やつ)は、息荒げに顔を俺に近付けてくる。


「"おぱーい"と"おしり"どっちが好き?」


「…………。」

……は?

こいつは一体何を言っているんだ?……馬鹿か?馬鹿なのか?


「……ねえねえ、どっちが好き?ねえねえ。」

……わくわく、そわそわ。


何やら、この上無く楽しそうな二択鬼〈ギルティ〉。

……何だか知らんが、もう少しまともな問題を出せよなぁ。てか、今その問題出すか?普通。……あれだけ怒っといて、何だよその問題。怒っている時に出す問題じゃないだろ?


「……はぁ。」

俺はため息を吐き、がっくりと肩を落とす。


……だが。

だが、しかし──。


「お前の敗因は、この俺を舐め過ぎた事だ。あまり俺を舐めるなよ?そんな問題など、俺の前で()()()()()()なんだよ!!」

──ゴゴゴゴゴゴ。


俺は眼鏡をくいっと上げ、奴を睨み付けた。

俺を!一流の紳士(ジェントル)の、この俺を舐めるなよ!!

俺は今まで以上のポーズを決め、心の底から叫んだ。


──(アンサー)えは!


「……おしりだ!」

俺は叫んだ。

「おピ─────────、ピ────────が、ピ───────────で。ピ───────────────だから。ピ────────で最高で至高なのだ!!!」


俺は叫んだ、心の底から愛を叫んだ。例え今日死ぬとしても、後悔など一つも無い。俺は、間違ってはいない!!俺は最善(ベスト)を尽くしたのだ!!

二択鬼〈ギルティ〉よ、俺を殺せる物ならやってみろ!!


……今この俺は例え殺されようとも、(ただ)では死なん!!


「…………。」

「…………。」


長い、長い虚無(きょむ)と呼べる時間が過ぎ、二択鬼(やつ)はぷるぷると小刻みに震えながら拳を振り上げた。


──ガッ!!

俺と二択鬼〈ギルティ〉は、熱く握手を交わした。

「…………。」

「…………。」

……無言で、こくりと(うなず)く二人。二人の間には、最早(もはや)言葉など必要無かった。

二択鬼(やつ)の熱い眼差しが、全て物語(ものがた)っていた。

今この時、この世界で……。いや、この広い宇宙の中で。

──二人だけが、尊い存在であった。


二択鬼(こいつ)とは、敵なのかも知れない。殺し会う運命にあるのかも知れない。……だが、この瞬間だけは真の友であるのだ。俺は二人の間に、確かな友情が芽生えた事を感じていた。


くるりと振り返り、二択鬼(やつ)は去って行く。……無言だった。だが、その背中は熱く物語(ものがた)っていた。

……次会う時は、敵同士なのだと。真の友であっても、殺し会わなくてはならない運命なのだ。……俺達は、哀しい宿命(サガ)を背負った同志(なかま)なのだから。


──そう、ここは戦場なのだ。


俺は眼鏡をくいっと上げ、その勝利を喜んだ。……そして俺は戦いが終わり、生き残った事に安堵(あんど)する俺。


「……はぁ、はぁ。」

「俺は、おしり好きだから耐えれた。俺がおぱーい好きなら、きっと耐えられなかった。」

俺は叫んだ、心の中から生き残った事を喜んだ!!


「うおおおおおおおおおお!!ピ───────────が、ピ───────────で、ピ─────────で最高だったぜ!!やっぱりおしりは最高だぜー!!」

俺は全力で叫び、華麗にポーズを決めた。


「…………。」

「…………。」


……俺は、ふと視線を感じ振り向く。

「…………。」


「……いや、違うんだ。これには深い訳があってだな、君達。」


そこには、クラスの女子全員が集まっていた。

「……心配して来てみれば。」

「男って、サイテー。」

「まあ、楽しそうですこと……。」


「……いや、違うんだ。聞いてくれよ、頼むよ。」


クラスの女子達は、まるでゴミでも見るかの様に冷ややかな視線で俺を見ていた。

……特にあれだ、クラスの高嶺(たかね)の花である高嶺(たかみね)さんなんてもう。

まるで汚物でも見るかの様に、(けが)らわしい瞳で俺を見ていた。


「……そんな目で見ないでくれ。俺を、そんな目で見るなー!!うわああああああああああ!!」


……俺は体育館の隅っこで真っ白になり、膝を抱えてガタガタと震えていた。

「……俺は、悪くない。俺は、何も間違っては無い。俺は、生き残ったんだ……。」

──ガタガタガタ。


あれから(しばら)くクラスの女子達は、一言も口を聞いてはくれなかった。


……俺は、社会的に死んだのだ。

仁科択一(にしなたくかず)、一問正解。

猛虎大河(たけとらたいが)、一問正解。

早乙女大好(さおとめひろよし)、一問正解。〈社会的に死亡。〉

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― 新着の感想 ―
俺はどうやら二択鬼に殺されしまうようです‥‥w
こ、これは…究極の二択だ…。これを選ぶなんて僕にはできない!だってどっちも最高なんだから! あぁ、なんて罪深い二択なんだ…(ToT) そして、早乙女くん、グッバイ(ToT)生き残ったけども、グッバイ\…
了解!やりましたな、作者様(−_−;)ついに悲劇が…………
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