~第二幕~ 「猛虎 大河の章」
俺の名前は、猛虎大河。
俺達は、とりあえずクラスの皆と一緒に。外に出られないかと、校門の外を確認しに行ってみたのだが。
……やはり、出れそうに無いらしい。
「……一体ここは、何処なんだ?」
崖の下は、真っ暗闇で見ることが出来なかった。……恐らく、降りるのは不可能だろう。
それに──。
俺は振り返って、校舎を確認する。
「…………。」
──二択鬼〈ギルティ〉。
俺達は一体、どんな問題を出されると言うのだろうか。
……正直、俺はあまり勉強が得意な方では無い。例え五十パーセントと言えど、難易度の高い問題なら解くことは難しいだろう。
「運動なら、得意なんだがな……。」
俺は運動神経には自信があった。俺は運動部のエースで、今年は全国を目指し頑張っている。
……だから、こんな所で死ぬ訳にはいかない。
「……俺はメジャーに、なってやる。」
宇宙空間の渦の様な外を見つめながら。……俺は、そう心に誓った。
──グルル。
しかし、先程から何故か滅茶苦茶お腹の調子が悪い様だ。俺はすぐに校舎の中に入り、トイレの中に駆け込む。
──ガチャリ。
「ギルティー。」
──そこに奴は居た。二択の鬼〈ギルティ〉が。
「ギルティー。では、問題だ……。」
奴は俺に顔を近付け、そう言い放った。
──だが。
「今は、それ所じゃねぇんだよ!!」
──びくっ!?
俺の死の瀬戸際かつ、烈覇の気迫に気圧され。びくっ、となる二択鬼〈ギルティ〉。
「今、俺を止めてみろ。……ここは、地獄と化すぜ!」
──キィィィィ。
奴はしょんぼりしながら、ゆっくりと扉を閉め。……そして、引っ込んだ。
──じゃぱー。
「……では、問題だ。」
トイレを済ませ念入りに手を洗った後、外に出る俺を奴は待ち構えていた。
「……待たせたな、それじゃあ始めようか。」
俺は覚悟を決め、奴に挑む決意を固めた。
──俺と奴の命を賭けた勝負が今、始まる。
奴はカタカタと小刻みに震えながら、死の二択を俺に突き付けてきた。
「"阪神"と"巨人"、どっちが好き?」
…………。
「……は?」
……何だ、その問題は!?
「ねぇ、どっち?どっち?」
俺は──。
……野球に全く興味が無かった。どうしよう、滅茶苦茶どうでもいい問題が来てしまった。
俺、野球なんか大○とイチ○ーしか知らないし……。
「……ねぇ、どっち?どっち?」
……わくわく。
一秒も興味無ぇ……。仕方がないので俺は運を天に任せ、テキトーに答える事にした。
「じゃあ、阪神で。」
「…………。」
「…………。」
……?
「……今、阪神と言ったか?」
「ああ……そうだけど?」
──ばっ。
「……友よ!」
二択鬼〈ギルティ〉は俺に抱き付き、涙を流し始めた。
「お前は、心の友だ!同志よ!!」
「…………。」
「お前は、この戦い必ず生き残れ!そして再び会おう!……甲子園でな!!」
──キリッ!
「…………。」
……何だろう、滅茶苦茶どうでも良かった。心底、どうでも良かった。そもそもサッカー部なんだよなぁ、俺。
……てか、その格好で甲子園行く気か?正気か!?貴様。
……その後、三時間もの間。俺は1985年の阪神タイガース優勝の話を長々と聞かされる事となった。
……俺は心身共に疲れ果てていた。
「腹減ったな、こんなのが後九回も続くのか。……参ったな。てか、腹減ったな。」
「……ただいま。」
俺はクラスの皆に囲まれ、一連の流れを説明した。
「……で?お前は何と、答えたんだ?」
「んー、阪神。」
──ぴしっ。
その瞬間、空気は張り詰めた空気へと変わった。
「……どうやらお前は、敵らしいな。」
「友達だと、信じていたのに……酷い。」
……え?何、この空気。……いや別に俺、野球とか興味無いんだけど……。
……あれ?
──その日、何故か俺はクラスの大半を敵に回した。
仁科択一、一問正解。
猛虎大河、一問正解。




