~第一幕~ 「仁科 択一の章」 其の弍
「……問おう。」
──ごくり、俺は生唾を飲み込み死の二択を突き付けられる。
──生か死か、命を賭けた二択を!
俺は死の恐怖に、怯える事しか出来なかった。
「お笑いコンビのザ・○っち、"たくや"と"かずや"どっちが好きだ?」
…………。
──!?
「……は?」
……なんだ、そのふざけた問題は!?俺は頭に来て、奴を怒鳴り付けた。
「んなもん、誰も気にしていねーんだよ!そもそも誰も、見分けが付かねーだろ!?そんなもん好きか嫌いか気にしてる奴は、日本に一人もいねーんだよ!!だいたい、親も見分け何か付いてねーよ!!この変態全身タイツ野郎!!」
……はぁはぁ。
俺はあまりにも頭に血が登り、ついつい叫んでしまっていた。
よく考えれば、俺は殺されるかも知れないと言うのに……。
……俺は、そう考え頭に恐怖が過る。
「お前、早く選べ……。僕、定時には帰りたいから。」
……あまり、怒っていなさそうで安心した。
「早くしろ!さもなくば、死へのカウントダウンが始まる!!」
二択鬼〈ギルティ〉は怒り、俺を睨み付けた。
死のカウントダウン……だと!?
「せーん、九百九十きゅー、九百九十はーち……。」
……あ、意外と待ってくれてる。
……しかし、俺は何かどうでも良くなっていた。
「……じゃあ、たくやで。」
「何っ!?たくやだと!!」
ぬっと、俺に顔を近付ける二択鬼〈ギルティ〉。
「だよなー、たくやだよなぁ……。それに引き換え、かずやの奴め!!」
……そんな差、あるか??俺には、全く理解が出来なかった。
体育館に戻った俺は、まるでヒーローインタビューの様にクラスの皆が俺に集まってくる。
どうだったんだ?と質問攻めに会う俺。
「こうでさー。」
俺は、事の一部始終を説明した。
「そんなに、差が無いよなー。」
ははは、と俺は笑いながらそう話した……。
──しかし。
「やはり、たくやが正解だったって訳か……。」
「やっぱり、たくやだよねー。」
「あー俺、かずやはちょっとなー。」
「あいつの顔は、見るだけで虫酸が走るよなぁ。」
……だが俺の思惑とクラスの皆の意見とは、かなりかけ離れている物だった。
……え?そんなに差があるのか?え?見分け付いてるの?ねぇ、皆。てか何でそんなに、かずやだけ嫌われてるんだよ……。
あれ?俺がおかしいのか?いや、うん?
……俺には、訳が分からなかった。しかし、そこに意思……。いや、答えなど無いのかも知れない。
──"赤"が好きか?それとも"青"が好きか?
五十パーセントで訪れる死。全く他意の無い問題を出す、それが二択鬼の狙いなのだから……。




