第16話 決戦……開始!
今回はちょっと短めです。
次回から、一気に決戦を始めたくて、こんな分け方になりました。
よろしくお願いします!
目の前で集結した戦力に対して、大凶丸は心の底から戦意が高揚していくのを感じ取っていた。
ついさっきまで自分と斬り合っていたアベルとかいう人間は、間違いなく自分と互角に戦えていた。
長年生きてきた中で、ここまで戦いを楽しめたことは数えるほどしか無かった。
そんなアベルの他にも楽しめそうな人間があれだけ揃っている。
自らが管轄していたグランドダンジョン『鬼皇の死都』。
当初ここからスタンピードを起こすと聞いたときには、正直気乗りはしなかった。
こんな狭い島国に自分と戦えるような実力者がいるはずもない、それならばダラダラとダンジョン内で引き籠っていた方がまだマシだ、スタンピード発生前の自分はそんなことを考えていた。
しかし、蓋を開けてみれば予想外に楽しめた。
アベルの他にもセイラや清十郎などの実力者が立ちはだかり、そして今、さらにその実力者の数は増した。
恐らく自分が生きてきた中でも最強の敵が揃っているのは間違いない。
そんな状況に置かれていることに、自分でも驚くほどの高揚感を味わえていることに、大凶丸自身も驚いていた。
これならば、ひょっとして自分も全力を出せるかもしれない……
そんな期待を込めながら、大凶丸は動き出す。
「野郎共ォ!ここからは全力で行くぞぉ!出し惜しみは無しだ!おい、山吹ィ!お前に言ってるんだからなぁ!」
「はいはい、それじゃあこっちも本気で行きますか。おい黒曜、お前も動け、『影法師』だ」
「…………!」
大凶丸の指示に対して、初めに動いたのは黒曜だった。
その手には今までは無かった大鎌が握られている。
全身に黒い布を纏っている黒曜が、自分の背丈よりも大きな鎌を持てば、その様はまさに死神だった。
これこそが黒曜の本気の戦闘スタイル。
そして、ここから黒曜は自らの真の能力を発動させようとしていた。
大鎌を頭上でくるりと一周させると、黒曜の足元の影が円周上に広がり始める。
その影の中から何かが這い出てくるのが見える。
それは、全身が影で出来たような異形の存在。
形状は鬼のように見えるが、全身が墨で染められたように真っ黒だった。
そんな影で作られた異形の存在が、黒曜の影の中からうじゃうじゃと出てくる。
しかも、黒曜の影の直径が広がっていくに連れてその数は雪だるま式に増えて行った。
これこそ、黒曜の最大最強の能力、『影法師』だ。
『影法師』により、鬼の軍勢の勢力はさらに膨れ上がっていた。
「ふん……やればできるじゃねぇか、それじゃあ俺も、仕事をするかぁ!」
次に動き出すのは山吹だ。
着物の懐から水晶玉のようなものを取り出し、そのまま頭上に掲げ始めると、山吹の周囲に何やら魔法陣のようなものが展開され始めた。
「禁術……『百鬼夜行』!」
魔法陣の中から出現するのは、モンスターの群れだ。
巨大な狛犬や、全身針のような毛で覆われている狼、頭が三つある鴉など、どちらかと言えば妖怪という表現が似合いそうなモンスターが大量に湧き出てきた。
「ふん、こんなもんか」
これで、さらに軍勢の勢力は増えてしまった。
そして、その様子を満足気に見つめていた大凶丸が再び冒険者たちの方へ視線を送る。
「さてと、それじゃあそろそろ始めるとするか、おおい!お前ら、準備は出来てるんだろうなぁ!?」
「オオオオオオオオオオオオォォォォォ!!!!!!」
大凶丸の問いかけに対して、モンスターの大軍勢が全力の咆哮で応える。
大地を揺るがすかのような大咆哮が地平の彼方まで響き渡っている。
「よっしゃぁ!行くぞコラァ!全軍……出撃ィィイ!」
その勢いのまま大軍勢は進撃を始める。
大凶丸の檄のままに、絶叫し武器を掲げながら一心不乱に前へ進み出した。
◆
対する冒険者側も準備は万端だ。
「皆さん!いよいよ始まります……共に、戦いましょう!」
敵の進撃の開始に反応して、全員が構えを取る。
敵の総数は千にも届きそうな大軍勢で、そのほとんどが怒涛の勢いでこちらに突っ込んでくる。
そこへ斬り込むのは逆に危険であり不利だ。
各々が迎え撃ち、進撃してくる軍勢を各個撃破で削り潰した上で、『統率者』である『修羅皇・大凶丸』を討ち倒す。
これが最善の方法なのは間違いないだろう。
「どうか……どうか、ご無事で!」
こうして賽は投げられた。
日本の命運を掛けた一大決戦。
その最後の戦いが……ついに始まった。
次回、遂に激突。
乞うご期待!
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