第14話 大戦力集結
リゼルさんが追加の増援として送り込もうとしている戦力は、かなり大規模らしい。
それは、現在天から降り注いでいる『紫光』の範囲の広さからもわかる。
その広さは五十メートルほどの広範囲にわたっている。
後から聞いた話だが、俺たちが転移してきた時の『紫光』の範囲が大体五メートル程度だったことからも、今回の『紫光』の規模がどれだけ大きかったかが理解できる。
そして、遂に増援が出現し始める。
まず、最初に『紫光』の中から出てきたのは四人組の冒険者たちだった。
先頭で出てきたのは、眼鏡を掛けた長身の男性だ。
長髪を後ろに束ねており、背中には槍を背負っている。
二番目に登場したのは、巨大な盾を持った全身金属の鎧を纏った男性だ。
かなり大柄で身長は二メートルほどありそうだ。
三番目に出てくるのは自分の背丈ほどもある弓矢を背負った男性。
頭には羽根付きの帽子を被っており、如何にも狩人といった様相だ。
そして、四番目、最後に出てきたのは、女性だった。
修道女のような服装をきているが、その背中には巨大な十字架のようなものを背負っている。
まさに四者四様、最初に『紫光』の中から増援として現れたのはかなり個性的な四人組だった。
この四人が現れたと同時に、こちら側にいたリーゼントの男性と小柄な少女のような冒険者が駆け寄るのが見えた。
先頭にいる眼鏡の男性に向かって「団長!」って呼んでるのが聞こえたので、どうやら同じクランの仲間みたいだな。
続いて出現してきたのは、一人の壮年の男性だった。
まるで侍のような出で立ちのこの男性、腰の辺りに刀を二本差している。
ちなみに、片側の目のところに眼帯を付けており、どうやら隻眼のようだ。
パッと見た感じ、柳〇十○みたいだな……何となくだが、どこかで見たこともあるような気がするが……
この人も冒険者なのだろうか?
そして、次に出現したのも冒険者の集団だった。
全部で十名ほどだろうか。
何ていうか、とてもまとまりがない騒がしい集団だった。
一人の少女が集団が登場する様子を配信しているのが印象的だ。
その内の一人が「闇鍋騎士団登場!」なんて叫んでいるので、どうやらクランらしいな。
そういえば『闇鍋騎士団』なんてクラン名もどこかで聞いたことがあるような気もする。
……ていうか思い出したわ。
この人たちって度重なる炎上騒ぎで評判最悪なクランだ。
確か、クランオーナーはアイドルみたいな少女だったはずだが、今のところその姿は見当たらない。
リゼルさんってこういう人たちにも伝手があったんだな。
ちなみに、近くにいるセイラさんからチッていう舌打ちが聞こえたような気がするが、気のせいだろうか。
さらに登場してきたのは、またまた冒険者の集団らしい。
こちらも十数名ほどで構成されている。
ていうか、先頭の三名は何か最近見たことがある顔だな、と思っていたら……
沖縄で助けた三人組じゃないか!
ということは、この人たちは沖縄で出会ったクラン『斬ん人』だな。
先頭のクランオーナーと思われる男性は俺と目が合った瞬間に勢いよく頭を下げ、「こんちゃっす!島袋ガクトです!あの時は、ありがとうございました!」と全力でお礼を言ってきてくれた。
いやぁ、良い人だね、彼は。
今回はいよいよフルメンバーで参戦するようだ。
ここまででも、十分すぎる戦力が投入されてきたように思えるが、次に登場した集団には、俺も度肝を抜かれた。
百名ほどはいようかという軍隊が出現したのだ。
それぞれ、その手にはお揃いの銃火器を持ち、お揃いのプロテクターまで装着している。
印象的なのは、銃火器とプロテクター、ヘルメットまでが全て濃紺色で統一されているということだ。
隊員たちの動きは完璧に統制されているようで、全員揃ったのを確認した瞬間、隊長らしき人の「それでは、作戦開始!」の号令で一気に散開していく。
半数をこちらに残して、もう半数はダンジョンと反対側へ向かって一気に移動を開始していった。
恐らく、既にダンジョンの方から街の方角へ向かってしまったモンスターの討伐へ向かうのだろう。
……とにかく、ついさっきまで二十名にも満たなかった戦力が一気に数倍に膨れ上がってしまった。
そして、一番最後、『紫光』の中からもう一人の人物が満を持して登場する。
それは、この『紫光』を使う張本人。
このように前線にまで出てくることは今まであったのだろうか?
それほどまでに珍しい光景が、俺の眼前で起こっているのがわかる。
そう、『紫光』の使い手、リゼルさんが登場してきたのだ。
その姿を初めて目撃した者も多いのだろう。
セイラさんや清十郎さんも、漏れなく驚きの表情を浮かべている。
「皆様……このような危機とはいえ、私の突然の召集に応えて頂き、本当にありがとうございます」
周囲の注目が一身に集めているその状況で、彼女は凛とした透き通るような声で話し始めた。
「このスタンピードという危機に、現在可能である最高の戦力を集めさせて頂きました。今回の戦、このリゼル・エヴァンジェリスが全身全霊を以て勝利に導くことを……誓います!」
そうして、彼女はその全身から魔力を解放する。
それはアイリーンさんやセイラさんとは異質な魔力。
しかし、その出力自体は決して引けを取らないだろう。
いや、下手をしたら二人を上回っているかもしれない。
そのような膨大魔力が……鮮やかな紫色の光の奔流となって周囲に降り注ぐ。
その光を浴びていると、不思議と全身に力が湧いてくるのが感じられた。
……これは、バフか?
しかも、こんな広範囲の……
同じような感覚はこの場にいる全員が味わっているらしく、皆一様に驚きや高揚感が一体となったような表情を浮かべながらそれぞれ目を合わせている。
「『紫光の女神』……」
誰かがぽつりと呟いた。
『紫光』によって奇跡を起こし続ける彼女のことを誰かがそう表現したのだろう。
俺もその言葉を聞いて、リゼルさんを表現するのにこれだけ相応しい言葉は他にはないと感じてしまった。
『紫光の女神』がその大いなる力を以て全力で勝利に導いてくれる。
そう考えると、不思議と恐怖感が薄れ、戦意が高揚していくのが実感できる。
そして、その高揚感は戦場にいる全ての味方に伝播していくのがはっきりとわかった。
グランドダンジョン『鬼皇の死都』にて起こったスタンピードは、紆余曲折を経て、怒涛の展開を見せ始める。
『統率者』である『修羅皇・大凶丸』率いる鬼の大軍団と、冒険者たちとの最終決戦が、今始まろうとしていた。
ちなみに、私が今まで見た映画の中で、感動のあまり号泣してしまったシーンの一つに……
アベンジャーズ・エンドゲームの「アッセンブル」シーンがあります。
今回の話は、その展開に多大な影響を受けているかもしれないことを……
心からお詫び申し上げます(´ε`;)
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