第5話 主役たちは死の都へ集う
ギリギリで三日連続更新。
久しぶりに主人公たちの出番が……
えーと、何だか世間はまたえらいことになってるみたいでして。
俺とアイリーンさんが、『海魂の冥穴』にてアトランティカとの激戦を制し、見事踏破に成功したのも束の間。
すぐに次のグランドダンジョン『鬼皇の死都』が出現。
まあ、これは当初の予定通り、俺もざっくりとそういう認識だったんだ。
何でもそのために待機していたセイラさんと清十郎さんのコンビが、すぐに挑み速攻で踏破してしまう、というのがダンジョン統括省と冒険者ギルドの偉いさん方の思惑だったらしい。
しかし、何とそのグランドダンジョンからスタンピードが発生。
周囲は大混乱。
溢れ出るモンスターの対処にはセイラさんを始め、近くにいた冒険者が当たってはいるが、未だ解決の糸口は見えず……
というわけで俺たちも最短で現地へ向かえと……
いやいやいやいや、さすがに死ぬって。
過労死待ったなしですわ。
どれだけ冒険者使いが荒いんですかね?
一体どれだけ連続でこき使うつもりなのか、さすがに温厚で優しさがモットーのこの俺様でもブチギレ寸前ってやつですよ。
本当に……ねえ、アイリーンさん?
「ハヤトさん、一刻も早く現地へ向かいましょう!」
「はい!もちろんですとも!」
……というわけで、俺たちは現在空港へ向かっていますとさ。
ダンジョン攻略の疲れ?
そんなもんエリクサーがぶ飲みですわ。
行きの車で飲まされたっちゅーの。
空港に向かっている道中でかすみさんを始め、ダンジョン統括省や冒険者ギルドの関係者から事情を教えてもらうと、やはり現地はかなり大変なことになっているらしい。
ダンジョンから脱出した後に、ネットの掲示板なんかを確認すると、なかなかの大混乱ぶりを垣間見えることができた。
すでにセイラさんたちを始めとする冒険者たちが現地入りしているので当面は大丈夫とのことだが、相手はグランドダンジョンだ、戦力は少しでも多い方が良いということで、俺たちも即現地へ向かえという判断が下されたというわけだ。
もちろん、空港には俺たち専用のチャーター機が準備されており、それに乗って現地まで一直線ということになるらしい。
ちなみに、現状は俺によってリアルタイムに配信されている。
あっ、もちろん許可は取ってるけどな。
〈おお、スタンピードに『神速』さんたちまで駆り出されるのか〉
〈アイリーンさんと『神速』さんがいれば、百人力だけどな〉
〈でも、ちょっと働かせすぎじゃね?〉
〈確かに、毎日毎日ダンジョン攻略してるじゃん〉
〈しかも、高難度ばかり〉
〈『神速』さんが過労死しちゃう……〉
まあ、概ね俺の過労死を案じるようなコメントが多いみたいだな。
やはり、視聴者たちから見ても俺たちのスケジュールは過密すぎるということらしい。
くそう、このスタンピードが終わったら今度こそしばらく休んでやるからな。
今回の報酬で旅行にでも行こうかな。
あっ、アイリーンさんも誘ってみたりとか……
そう考えると少し楽しみになってきたかもしれない。
……よし、これをモチベーションに頑張ってみよう。
そうこうしているうちに空港に到着、もうそのまま滑走路に車で入り込み、チャーター機へ直接向かうみたいだ。
えーと、ああ、あれか、どう見ても軍隊使用の大仰な航空機が見える。
俺は、この先に待ち構えているであろう激戦を思い浮かべながら、アイリーンさんの方へ視線を送る。
そこには、のほほんとマイペースな表情を崩さない彼女の姿があった。
うん、平常運転だね。
そんなこんなで俺とアイリーンさんは、スタンピードが発生し、大混乱の真っ只中にある『鬼皇の死都』へ向かうことになった。
この時、俺は今回の事件に関して、少し気楽に考えてしまっていたことは否めない。
しかし、これから起こる出来事が、俺たち、そして日本中の人々にとってとてつもなく恐ろしい意味を持っていくなんてことを……
全く考えてもいなかったことは確かだった。
◆
舞台は戻り、『鬼皇の死都』近郊、セイラたちと鬼の軍勢が戦っている最前線へと移る。
『九頭竜』のメンバー、不知火と水鏡の参戦により、戦況をかなり優位に進めている冒険者たち。
その戦闘で鬼たちを倒し続けていたセイラの身に異変が起こる。
「これは……この気配は!?」
突如として自らに襲い掛かってきた悪寒の正体。
セイラはその正体に気付き、咄嗟にその場を飛び退いた。
そこに巨大な何かが空高くから降ってきた。
恐ろしいほどのスピードで飛び込んできたその物体は、轟音を響かせながら着地する。
ギリギリで回避することに成功したセイラが目にしたのは、さっきまで対峙していた鬼たちとは桁違いの威圧感を放ち続ける大鬼だった。
「ああん?俺の攻撃を避けるとはなぁ……やっぱりお前ら、人間にしてはやるじゃねえか」
ほんの数秒前まで自分がそこにいた場所には、大きな刀が突き刺さっていた。
少しでも判断が遅れれば、その体は真っ二つにされていたに違いない。
「さて、これからは俺が付き合ってやるよ……せいぜい俺を楽しませやがれ」
地面から刀を抜き、肩へ担ぎながらセイラの方へ向き直るその大鬼は、ヘラヘラと笑いながらも全身からは恐ろしいほどの殺気を放ち続けていた。
浴びているだけで全身に寒気が走り、気を抜けば腰を抜かしてしまいそうなほどの殺気に、セイラと清十郎は思わず身震いをしてしまう。
「……清十郎、どうやらあいつがこのスタンピードのボスみたいですわね」
「はい、お嬢様。あの恐ろしいほどの殺気、他の鬼たちとはレベルが違いますね」
「ええ、しかし裏を返せば、あいつさえ倒せばこのスタンピードは終わりってことですわ」
「そうですね、それではさっさと……」
「あいつを……倒してしまいましょう!」
セイラと清十郎、二人の冒険者に対峙するのは、『統率者』の一人『修羅皇・大凶丸』。
かくして『蒼氷の聖女』と『龍殺の守護者』は戦闘へと向かう。
『統率者』を倒し、このスタンピードに終止符を打つために。
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