第8話 いざグランドダンジョンへ ~ダンジョン統括省へ許可をもらいに行こう~
本日二話目の更新です!
この世界にはダンジョンに関連する公的機関が二つ存在する。
一つは【冒険者ギルド】、こちらは主に冒険者を管理する機関だ。
ほとんどの冒険者はここに所属しており管理されている。
冒険者としての登録やランク付け、ランクアップの管理、上級職や超級職への昇格、ダンジョン踏破時の報酬の管理など、この【冒険者ギルド】は各冒険者にとって無くてはならないものとなっている。
そしてもう一つは【ダンジョン統括省】だ。
こちらはダンジョンを管理している機関となっており、その範囲は国内の全ダンジョンに及ぶ。
業務としては、各ダンジョンのランク付け、ダンジョン内のモンスターの把握、ダンジョンへの入場許可の発行など、ダンジョン関連のことは全てこの【ダンジョン統括省】
俺とアイリーンさんは今まさにこの【ダンジョン統括省】に殴り込み……いや、入場しようとしていた。
目的はもちろんグランドダンジョンへの入場許可をもらうためである。
元々、Sランクダンジョン『深淵の回廊』を踏破したのがきっかけで解放されたグランドダンジョン『星崩の大魔宮』、常識的に考えればその権利は踏破者である俺たち(なおほぼアイリーンさんの模様)にあるはずだ。
そこへ横槍を入れてきたのが【ダンジョン統括省】だった。
その【ダンジョン統括省】が出した条件をクリアできたので、改めて許可をもらいにやってきたというわけだ。
まあ、俺とアイリーンさんがやってきたのは正確いうと【ダンジョン統括省第三支部】、その名の通り【ダンジョン統括省】の支部になるわけだが(本省はもちろん霞が関にある)
「それじゃあ行きましょう」
「はい」
立派なビルの中に入り、まずは正面の受付で用件を伝える。
すると、いきなり最上階へ案内された。
最上階にある部屋はただ一つのみだった。
一際立派なドアの上には【ダンジョン統括省第三支部支部長室】と掲げられている。
ドアをノックすると、中から「入りたまえ」と声がした。
中に入ると、広い部屋の中央には眼鏡を掛けたいかにも堅物といった感じの男性がいた。
「ようこそ、私は鏑木、【ダンジョン統括省第三支部】の支部長を担っている者だ」
少ししわがれた皮膚やオールバックに固められた頭髪にはわずかに白髪が混じっていることからして、年齢的には五十代くらいだろうか?
本人にはそのつもりは毛頭ないのかもしれないが、その鋭い眼光は常に睨み付けられているようで、異様な迫力を秘めている。
「どうぞ、よろしくお願いします」
「よろしくお願いしまふ!……ああ!」
余裕綽々で優雅に挨拶をするアイリーンさんの隣で盛大に噛んでしまった。
あかん、あの眼光のせいだ、めちゃくちゃ緊張してしまうじゃないか。
「今日は確か、グランドダンジョン『星崩の大魔宮』への入場許可の件だったかな?」
「はい、そちら側から出された条件へ全てクリアしましたので、許可を頂きに参りました」
アイリーンさんの返答を聞いた鏑木支部長は眉間に皺を寄せながら暫く考え込む。
そうすることで、その眼光から発せられる迫力は更に上昇し続ける。
多分、アイリーンさんがいなかったら泣いてるかもな俺。
「その件は確認している。確かにこちらが出した条件はクリアしたみたいだな、そちらの君は……草薙君……だったか?」
「は、はい!そうです!」
「君の方から用件を済ませようか。まず、君の冒険者ランクは最低ランクのEからBランクへ昇格となった」
「はい!……え?ええ!?」
いきなり驚嘆の事実を伝えられ、思わず素っ頓狂な声を出してしまった。
つい最近冒険者デビューしたばかりの俺がBランク!?
一瞬、聞き間違えかと思ったよ。
「何を驚いている?君はもう上級職なんだろう?それならばBランクくらいなれて当然だろう。ましてやAランクダンジョンを5つも踏破しているんだ。そんな冒険者がEランクのままでいていいはずがない」
「そう言われたらそうですが……Eランクから一気にBランクなんて、いくら何でもそんな人今までいなかったのでは?」
「そんなことはない、世の中には上には上がいる。例えば……君の隣にいるアイリーン君なんてEランクから一気にSランクまで上り詰めているからな」
「な、何ですとぉ!?」
またまた素っ頓狂な声を上げてしまう。
アイリーンさんがそんな凄まじい経歴を持っていたなんて……
当の本人はその言葉を聞いても全く動じずニコニコしているが。
「私が知る限りはそんな狂った経歴を持っているのは彼女ともう一人だけだな……」
そんな人がまだ他にもいるのか?
アイリーンさんと互角の経歴の持ち主……一体どんな人物なんだ?
「そんなことより、支部長さん?グランドダンジョン入場の許可は頂けるんですよね?」
「ああ、そのことなんだが……」
鏑木支部長は眼鏡をクイっと持ち上げ、鋭い眼光でこう回答した。
「許可はもちろん出す。約束だからな。しかし、【ダンジョン統括省】としてはもう一つ条件を出させてもらうことにした」
「……はい?もう一つ?それでは約束が違いませんか?」
その瞬間、アイリーンさんから高密度の圧力が発せられるのがわかる。
執務室内の空気が一瞬で変化するというか……重くなった。
アイリーンさんの表情は笑顔のままだが、明らかにさっきまでとは異質のものだった。
「まあ待ちたまえ、まず条件を聞いてはくれまいか!?」
アイリーンさんの様子に気付いた鏑木支部長が珍しく声を張り上げて制した。
「……一応聞かせて頂きましょうか?」
「あ、ああ、もう一つの条件とは、グランドダンジョン【星崩の大魔宮】挑戦時に君たちだけではなく、この二人も同行させてもらいたい……入りたまえ!」
鏑木支部長の合図とともに背後で執務室のドアが開き、二人の人物が入室してくる。
一人は男性、年齢は二十台半ば辺りだろうか。
そしてもう一人は女性だった。
ふわふわとした栗毛色の髪の毛と気品がありそうな顔立ち。
騎士のような青と白を基調とした鎧を纏いキリリとした雰囲気はアイリーンさんとは対照的といえるだろう。
「お久しぶりですわね、アイリーンさん……いえ『紅蓮の魔女』」
透き通るような、それでいてハッキリとよく通る声で彼女は呟く。
「あらあら、こちらこそ、セイラさん……いや確か『蒼氷の聖女』だったかしら?」
アイリーンさんも笑顔のままで返事を返す。
ていうかアイリーンさんとこの女性は知り合いなのか?
……『蒼氷の聖女』ってことは、まさか!?
「ああ、草薙くんは初めてだな。紹介しよう、この女性は青羅・バーンシュタイン君、我が国が誇るもう一人のSランク冒険者だ。ああ、さっき言ってたアイリーン君と同じ経歴を持つ者でもある」
「何ですって!?この人が……?」
「ああ、初めまして、わたくしは青羅・バーンシュタイン、セイラとお呼び下さい。そしてこちらが執事の轟 清十郎、以後お見知りおきを」
そう言いながら二人して一礼をする。
紅蓮と蒼氷、紅と蒼、炎と氷。
対照的な二人、『紅蓮の魔女』と『蒼氷の聖女』、永遠のライバルとも言える二人がこの狭い執務室で出会ってしまったのだった。
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