表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『紅蓮の魔女』と『神速の配信者』  作者: 我王 華純
第二章 集う宿星たち
71/118

第27話 『紅蓮の魔女』 VS 『邪海龍』


 「一体どうなってる!?早く報告を上げてこないか!」


 「しかし、現状では報告しようにも情報が少なすぎます……」


 「……っ!一体何が起こってるんだ?こんなことは初めてだぞ!」


 喧騒が飛び交っているのは、ダンジョン統括省第六支部、沖縄を管轄する支部の内部だった。

 ハヤトの配信を通じて中の情報を得ていた職員たちは、今回のSランクダンジョンが今までのダンジョンとは違うことに気付き、蜂の巣をつついたような騒ぎとなっていた。


 「セーブポイントとアイテムの使用禁止……何故そんなことになるんだ!?」


 「しかも、今回のボスの強さは今までとはけた違いです!」


 「本部に連絡は入れたのか!?『蒼氷の聖女』は来れないのか!?」


 「連絡は入れましたが本部の方も例の『黄牙団』の襲撃もあり混乱しているみたいです。それに『蒼氷の聖女』は、この後に出現する予定のグランドダンジョンに備えて動かせないと返事がありました」


 アイリーンたちが挑んでいるSランクダンジョン【海魂の冥穴】を踏破した時には、また新たなグランドダンジョンが出現する。

 新たなグランドダンジョンが出現してしまえば『黄牙団』のような他国の勢力が狙ってくる可能性があるため、ダンジョン統括省としては速やかに冒険者を派遣し踏破しなければならない。


 セイラや清十郎はそのための戦力として温存するという選択が取られていた。


 


 このダンジョン全盛期の世の中にあって、Sランク冒険者は人類の財産ともいえる存在である、

 そんなアイリーンがセーブポイントやアイテム禁止、予想以上に強力なボスとの遭遇と、予想外の命の危機に遭遇してしまっている状況はあってはならなかった。


 「ギルドに連絡して他の冒険者を応援に向かわせられないのか!?」


 「お言葉ですが、この辺りで一番強かった『斬ん人(きりんちゅ)』ですらギリギリ助かったレベルです。他の冒険者では助けにならないかと……」


 「くそ!どうすれば良いんだ……」


 このままでは本当にアイリーンたちに命の危険が迫ることになる。

 しかし、現時点でダンジョン統括省として打てる手はすでに尽きており、イリーンたちの生存を信じる他に道は無かった。


 (……最終的にはあれを使うしかないのか?……いや、さすがにあれは危険過ぎる……)



 「頼むから……生き延びてくれよ」

 

 ダンジョン統括省の職員は溜息をつき、表情を歪ませながら天井を見上げる。

 彼が一瞬ではあるが、頭に思い浮かべた最終手段はさすがに使用する段階にはなかった。


 彼は苦渋の表情を浮かべながら、


 「あれだけは……使うわけにはいかんのだ……」


 絞り出すようにそう言ったのだった。


 ◆


 「ギャギャギャギャァァア!死ねぃ!」


 アトランティカの周囲を蠢くように漂っていたが水が触手のような形となり、まるで生き物のように動き始める。

 その素早い動きはまさに海蛇、数本の巨大な水流が各々違う軌道を描き、こちらに向かってくる。


 「イグナイト・ブレイド!」


 アイリーンさんはそれに対し、素早く杖に魔力を注ぎ炎の大剣を出現させる。


 「はああああ!!!!」


 そのまま華麗に舞うように向かってくる水流に向かって斬撃を振るう。

 炎の斬撃により、一撃のもとに消滅していく水流は、次々と斬り伏せられながら、ただの水へ姿を変えながら蒸発していった。


 「ほおお!?やるではないかぁ!これならどうだぁ!ギャギャギャギャァ!」


 次にアトランティカが繰り出すのは新たな魔法。


 目の前の海面が再び盛り上がり、巨大な何かを形成してく。


 ……それは巨大な龍の形をしていた。

 まるで水でできた分身のようなそれを、アトランティカはこちらに差し向けた。


 「ギャギャギャギャ!俺の分身に八つ裂きにされるが良いわぁ!」


 真紅の瞳が光を放つと、その水の龍が動き出しこちらへ敵意を向け始めた……


 「クリムゾン・メテオ!」


 その瞬間だった。


 アイリーンさんが杖を振るうと同時に、上空に灼熱の隕石群が出現しアトランティカに向かって降り注ぐ。

 おびただしい量の隕石群は、アトランティカに襲い掛かると共に、水の龍を容赦なく貫き消滅させていく。


 

 「ぐおぉぉォオオオ!?何だこれはぁ!?」


 もちろん、アトランティカもただでは済まない。


 咄嗟に水を操り障壁を作ったようだが、気休め程度にしかなっていなかった。

 何発もの障壁を貫いた隕石がアトランティカの体を次々と抉っていく。


 やはり、アイリーンさんが放つ魔法の威力は桁が違う。


 セーブポイントが使えなかったところで……

 アイテムの使用を制限されてしまったところで……


 そもそも実力のレベルが桁外れに違うのだ。

 たった今、目の前で見せられている光景が、その事実をまざまざと俺に突き付けていた。



 「ギャギャギャギャァアアアア!いい加減に……しろぉおおおオオオオオ!!!!」


 

 隕石群を喰らい続けていたアトランティカの体が激しく発光を始める。

 元々纏っていた青紫色の光が鮮やかに輝き始め周囲を染める。



 「――ガァァァァァアアアア!」



 そのまま凄まじい咆哮とともに、口の中から青紫色の光が溢れ出す。


 龍の切り札、ブレスだ。


 全力のアトランティカのブレスが、光の奔流となり俺たち目がけて一直線に飛んでくる。


 

 「――ボルガニック……レイザァァアア!」


 

 しかし、そこにアイリーンさんが全力の極限魔法で迎え撃つ。


 杖から放たれた極太の熱線がアトランティカの放ったブレスト正面からぶつかり合い……


 そのままブレスを斬り裂くように消滅させた。


 

 「……な、何だとぉ!?俺のブレスがァアア!」


 熱線は勢いを弱めることなく、アトランティカを襲う。

 頭部に命中したかと思うと、そのまま貫通し粉々に破壊してしまった。


 「す、すげぇ……」


 何度となく見てきたはずのアイリーンさんの魔法攻撃。

 その規格外の威力により、頭部を完全に破壊されたアトランティカはあっさりと沈黙し、動きを止める。


 〈すげぇええええ!!!!〉

 〈いや、ちょっと……結局これかいw〉

 〈アイリーンさんにはアイテムやセーブポイントなんていらんかったんや〉

 〈あんな化け物をあっさりと……凄すぎるわやっぱり〉


 配信を見たコメント欄にも相変わらず驚嘆のコメントが並ぶ。


 「アイリーンさん!やりましたね!」


 そう言いながらアイリーンさんに駆け寄るが……


 俺はふと違和感を感じ、アイリーンさんの表情を見る。


 ……彼女は真顔だった。

 いつもの笑顔はどこにもなく、張り詰めたような表情を浮かべている。


 「……?どうしたんですか?」


 「……まだです!気を付けてください!」


 アイリーンさんが叫んだ瞬間、頭部を失ったはずのアトランティカの体が……



 激しく爆ぜたのだった。

少しでも面白いと思って頂けましたら、評価をお願いします。下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります。

ブックマークも頂けると非常に喜びますので、是非宜しくお願い致します。


良ければ、感想もお待ちしております。


評価や、ブックマーク、いいね等、執筆する上で非常に大きなモチベーションとなっております。

いつもありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ