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『紅蓮の魔女』と『神速の配信者』  作者: 我王 華純
第二章 集う宿星たち
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第21話 ハヤト VS サハギン・ロード ①


 ――俺と半魚人の戦いは熾烈を極めていた。


 『神速』を使用して背後を狙い、七星剣での攻撃を試みるが……


 全て不発に終わる。


 

 ていうか、この半魚人……速えし硬えし強え!


 『神速』を使用した状態の俺の攻撃でも割と高確率で避けてくるし、当たったとしてもろくにダメージが通らない。

 向こうの攻撃も『神速』を使用して何とかギリギリ避けられるくらいの鋭さを持っている。


 今の俺は超級職なったことによって得た強力なステータスに加え、『配信中ステータス上昇(極大)』によって多大なバフが掛かっている状態だ。

 『神速』を使用することによって、攻撃力が十分の一になってしまってはいるが、それでも並の冒険者よりも高い攻撃力を維持できているはずだ。

 その証拠にここに来るまでに遭遇したモンスターたちは、ほぼ一撃で倒すことが出来ていたからだ。


 しかし、この半魚人には攻撃がほとんど通じない。

 かすり傷程度ならば与えられるのだが、それではどれだけ攻撃しても倒せる気がしない。


 ……ていうか、この半魚人は、並のモンスターじゃないな。

 ひょっとしてこのダンジョンのボスか何かか?


 

 〈ていうか、『神速』さんの相手ってサハギン・ロードじゃね?〉

 〈サハギン・ロード?ってあの沖縄で出会ったら絶対に死ぬって有名なあれ?〉

 〈うん、そうだ。あれはサハギン・ロードだ〉

 〈そんなのがうろついてるのかw〉

 〈やばいじゃん!『神速』さんが死んじゃう!〉


 

 そうか、この半魚人はサハギン・ロードっていう名前なのか。

 コメントを見てると、かなりやばいモンスターらしい。


 それじゃあ俺の攻撃が通用しないのも理解できるわ。 

 こんな身のこなしなんて、普通のモンスターはしてこないもんね。


 サハギン・ロードは俺の攻撃を華麗に避けながら、銛で正確にこちらを狙ってくる。


 そのスピードは凄まじく、『神速』を使い目にも止まらぬ速さで動いているはずの俺の一歩先を狙うかのように絶妙な刺突を繰り出してくる。


 「ちっくしょう!危ねぇよ!」


 身をよじりながら刺突を避けつつ、俺も攻撃を繰り出す。


 ガキィィイイン!と剣と銛がぶつかり合い、鍔迫り合いとなる……が。


 「ギュァアアアアアア!」


 身の毛もよだつような叫び声を出しながら銛をフルスイングしたサハギン・ロードによって、俺は壁際まで吹っ飛ばされる。


 「……っ!?重いな」


 鍔迫り合いをした瞬間に、双方の膂力に歴然とした差があることを思い知らされた。

 やはり、力では勝てない。

 『神速』によるスピードと【七星剣・セプテントリオン】の能力で上回るのが最善だろう。


 〈そういえば、さっきから『神速』さんの体、光ってね?〉

 〈ああ、俺も気になってた〉

 〈あれって、身に付けてる装備が光ってるのか?〉

 〈なんかキラキラしてかっこいいよな〉


 そう!

 実は今の俺はもう一つ、強力な装備を身に付けている。


 その名も【星纏衣・アルタイル】、グランドダンジョン【星崩の大魔宮】踏破時の報酬の一つで、Sランク神器の一つだ。


 上半身を覆うチェストアーマーのような形状をしており、【七星剣・セプテントリオン】同様、全身に星のような模様が浮かび、輝きを放っている。

 ちなみにこの【星纏衣・アルタイル】は見た目に反して、特殊な能力は持ち合わせていない。 

 単純に防御力が大幅に上昇すると言う効果のみだ。


 ただ、その上昇量はハッキリ言って桁外れだが……


 この新たな神器のおかげで万が一攻撃を喰らってしまっても、即死には至らないだろうと確信が持つことが出来る。


 俺にはそれだけでも十二分に価値があると言えるだろう。


 「とにかく、どんどん行くぞぉ!アリオト!」


 再びアリオトを使用し、全身から輝く炎を放出する。

 今度は手加減無しの全開出力だ。


 サハギン・ロードは水棲系のモンスターだけあって、炎は苦手なのだろう。

 かなり嫌そうな仕草を見せながら、素早く後退していく。

 あのスピードで全力で回避されたらさすがに炎を命中させることは出来なかった。


 今の一瞬で数十メートルの距離を移動したサハギン・ロードのスピードは並大抵のものじゃない。

 しかも、その位置から即座に何かを使用と行動し始めてやがる!


 「ギュァアアア!」


 サハギン・ロードが銛の先端を俺の方向へ向けると、凝縮された水鉄砲のような魔法が高速で射出された。


 「あっぶねぇ!」


 『神速』を使用して即座に回避するが、本当に紙一重のタイミングだった。

 水鉄砲は俺の鼻先をかすめ、遥か後方の壁を貫いていく。

 あんなの喰らったら即死じゃねえか!


 「ギュァァ!ギュァア!ギュァアアアア!!!!」


 サハギン・ロードは即座に次の行動に移る。

 構えられたままの銛の先端に凝縮された水球が三つも形作られていくのが見える。

 何と、さっきの魔法を三連続で使用するようだ。

 

 「冗談だろ!?」


 何かの間違いだろ!?

 という俺の願いも虚しく、三発の水鉄砲がほとんど同時のタイミングで射出されてしまった。


 ……さすがにこれは当たる!


 「ここはこれしかないな!メグレズ!」


 その瞬間、俺の体に淡い光が宿る。

 

 ……と同時に水鉄砲が三発とも俺の体を貫く……ことは無かった。


 少女のような外観をしていた【七星】の一人だったセプテントリオン・メグレズは、自らを【消魔】と名乗り、セイラさんの魔法を全て無効化していたらしい。

 当然、【七星剣・セプテントリオン】もその能力は受け継いでいる。

 メグレズを使用した場合に体に宿すことが可能な光は全ての魔法を無効化してしまうのだ。


 「へへん!これでもう魔法は怖くないぜ!」


 「ギュァアアア!?」


 たった今、目の前で起こった光景が理解できないのか、サハギン・ロードが激しく狼狽えているのがわかる。


 「じゃあ、そろそろ決着といこうか!」


 俺は、【七星剣・セプテントリオン】を構えると……


 「ドゥーベ!」


 また、新たな能力を発動させる。


 毒蛇のような見た目をしていた【セプテントリオン・ドゥーベ】は、毒の魔力を操っていた。

 必然的にその能力は【毒】となる。


 【七星剣・セプテントリオン】の刀身に紫色の光が宿り、強力な毒の効果が付与されたのがわかる。


 そんな俺の姿を見ても、全く恐れを見せないのがサハギン・ロード。

 一ミリの躊躇もなく、銛を突き出しながら突進してくる。


 「望むところだぁ!」


 毒を付与したセプテントリオンとサハギン・ロードが振るう銛が激しくぶつかり合い火花を散らし、ほぼ互角の攻防が繰り広げられていく。


 〈『神速』さん、サハギン・ロードと互角に戦えてるよな……〉

 〈あの遭遇したら致死率百パーセントと言われてるモンスターに……〉

 〈ていうか、セプテントリオンの能力ヤバすぎるよな……〉

 〈瞬間移動に転移に魔法無効に炎攻撃……さらに毒付与かよ〉

 〈いくつ能力持ってるんだよ……〉

 〈いや、だから七つだろ?後二つあるぞ〉

 〈グランドレガリア半端ないな……〉


 コメント欄は俺の能力に驚くコメントで埋め尽くされているが、生憎俺には、それらをチェックする余裕はなかった。


 鋭く、そして正確に繰り出されるサハギン・ロードの攻撃を避けることに全神経を集中させる。

 そして、針の穴ほどの隙をついて攻撃を加える。

 この作業を、地道に愚直に繰り返す。


 ……やがて、戦況に変化が訪れた。


 「ギュ……ギュアア!?」


 サハギン・ロードに猛毒の症状が現れ始めた。


 体中に紫色の毒々しいエフェクトが出現し、サハギン・ロードが苦痛の雄叫びを上げ始める。


 「よし……これで俺の勝ちだな!」


 後は、このまま『神速』で逃げ回れば、そのうち猛毒が全身を蝕んで、勝手に死んでくれるだろう。

 今ならあの三人の命も助けることができるはず。


 俺の頭の中で完全に勝利への手筋が見えた……瞬間だった。


 「ギュロロロロロォオオオ!!!!」


 サハギン・ロードが自らの喉を風船のように膨らませたかと思うと、大音量の叫び声を上げ始める。


 「な、なんだ?」


 ただの雄叫びではないことだけは理解できる。

 それが、何の効果を持つか……疑問に思う間もなく、その効果を実感することになる。


 俺が戦っていたサハギン・ロードの背後の水場に嫌な兆候が出現する。

 最初は波紋のようだったが、だんだん大きくなり、ついには波のように変化していく。


 「……まさか!?」


 そして、その波から勢いよく飛び出してくる影が……五つ。


 そう、奴は仲間を呼んだのだ。


 全部で五体のサハギン・ロードが出現し、戦闘に加勢したのだった。


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