第18話 【七星剣・セプテントリオン】①
グランドダンジョン踏破時にḾVPのみが入手可能な、最高位神器。
神器としては最高峰に位置するのは言うまでもなく……
世界中探しても所持している冒険者はほんの一握りに過ぎない。
そんな最高位神器の一つが……
まさに今、俺の手の中に存在しているという事実。
その名も【七星剣・セプテントリオン】。
グランドダンジョン【星崩の大魔宮】踏破時に、最後のトドメを任せてもらった縁で、ḾVPに選ばれてしまった俺が入手した神器だ。
それは、不思議な光を放つ宝剣だった。
刀身には、宇宙に瞬く運河のような模様が浮かび上がっており、柄の部分には七つの宝石が散りばめられている。
「へぇ、見た目は物凄い綺麗じゃない、何ていうか神秘的ね」
「本当ですね。それに切れ味も鋭そうですね!ハヤトさん、早く試してみましょうよ!」
「はい、そうですね。でも……試すといってもどうしましょうか?」
セプテントリオンの神秘的な外見にますます興味を募らせる面々が、試し斬りを希望する……
が、ここはだだっ広い草原の真ん中だ。
周囲に試し斬りできそうなものは何もない。
「そうね、じゃあ陸奥君、よろしくお願いするわ!」
「はい、わかりました。『ストーンゴーレム』!」
陸奥さんがスキルを発動すると地面が隆起し、みるみるうちに人の形に変化していく。
最終的には、全長五メートル程度の石の巨人が完成してしまった。
「ありがとう。さすが【岩石魔導士】、お手の物ね」
「はい、ちなみに硬度は最大限まで強化しておきましたので、並の剣なら傷一つ付けられないはずです」
なるほど、陸奥さんのジョブは上級職【岩石魔導士】だったのか。
さすが、冒険者ギルドの支部長だ。
こんな屈強そうなゴーレムを瞬時に作り出すなんて、かなりの手練れに違いないな。
まあ、あんなに筋骨隆々な見た目なのに、魔導士系統のジョブに就いているのには少し驚いたが。
「じゃあ、ハヤト君、早速スパーンとやっちゃいなさいな」
「はい、それじゃあ……」
「あっ、ハヤトさん、【神速の腕輪】を外さないと!」
「あっと!本当だ、うっかりしてました!」
スキル【神速】は発動時に攻撃力が十分の一になってしまう。
そのため、【神速の腕輪】を外さなければ、セプテントリオンの真の攻撃力を試すことはできない。
俺はすぐに装備から腕輪を外すと、ストーンゴーレムの方へ向き直る。
「よっしゃぁ!行くぞぉ!」
剣を構えると、気合を入れながらストーンゴーレムへ向かって突っ込んでいく。
間合いに入ると、ジャンプしながらストーンゴーレムの頭部を狙い、力の限り剣を振り下ろした。
セプテントリオンの輝く刀身がストーンゴーレムの頭部を真正面から捉える。
そして、そのまま切断……
できなかった。
ガキィィン!と鈍い音が鳴り響くと共に、刀身が弾かれる。
俺はその反動で仰け反るように態勢を崩しながら、地面の落下してしまった。
「……あれれ?」
ショックのあまり、放心状態となりながら、セプテントリオンの刀身を見つめる。
その刀身は相変わらず、惚れ惚れするほど綺麗だが……
「どういうこと?ストーンゴーレムの頭部が硬すぎたのかしら?ひょっとして手違いでオリハルコン製にでもしちゃった?」
「いや、確かに私が可能な範囲で最も硬くはしましたが、最高位神器で斬れないほどの硬度ではないはず……なんですが」
「じゃあ何?ハヤト君の実力不足っていうこと?超級職なのに?」
「いえ、そこまでは言ってませんよ……」
意外な結果に周囲に不穏な空気が流れ出す。
俺は俺で、目の前の現実にショックを受けていた。
……いやさぁ、さっき超級職になれてさぁ、そんで最高位神器まで手に入れたらさぁ、ちょっとは強くなれたと思うじゃん?
でも、結局全然でやんの。
「いや、何かすいません……まじで」
「別にハヤト君が謝ることじゃないわよ、意外な結果だったのは確かなんだけど……」
かすみさんも、どうやってフォローしようか困惑しているのが見てわかる。
アイリーンさんも今の光景を見て、ガッカリしたりしているのだろうか?
俺は心配になりながら、横目でアイリーンさんの様子を伺う。
「…………」
そこには、何かを思案するように真剣な表情をしているアイリーンの姿があった。
「あの……アイリーンさん?」
「……ん?あっ、はい、どうされました?」
「いやいや、どうされましたか?じゃなくて……今の見てましたか?」
「はい、ハヤトさんの攻撃が無惨に弾かれるところはしっかりと見ました!」
「……ぁぅ。はい……すいません……」
「いえ、責めてるわけではないのでそんなに落ち込まないで下さい。ちょっと個人的に腑に落ちないところがありまして……」
そう言いながら、またしても真剣な表情で考え始める……
「どうしたの?何か気になるところでもあった?」
「はい、ちょっと……ハヤトさん、確か報酬でもう一つ神器を入手していませんでした?」
「え?ああ、確か……これですね!」
慌ててアイテムボックスから一振りの小太刀を取り出す。
これは【黒蜘蛛の忍刀】、セプテントリオン・メラクを討伐した報酬として、ダンジョン踏破時に入手した神器だ。
「はい!じゃあそれであのストーンゴーレムへ攻撃してみて下さい!」
「……ええ?それはまたどうしてですか?」
「いいから、いいから!早く早く!」
何が何やらわからず、アイリーンさんに煽られるままに、ストーンゴーレムへ攻撃を加えることにした。
「……わ、わかりました!どりゃぁ!」
先ほどと同じように、ストーンゴーレムの頭部へ向かって飛び掛かり、斬撃を加える。
……すると、スパァン!と小気味よい音と共に、ストーンゴーレムの頭部をスムーズに切断してしまった。
「……へ?」
間抜けな声と共に地面に着地。
その直後に、頭部を切断されたストーンゴーレムがズシィン!という音とともに崩れ落ち始める。
「……どういうこと?」
最高位神器である【七星剣・セプテントリオン】では不可能だった、ストーンゴーレムの切断を、一段落ちるであろう【黒蜘蛛の忍刀】であっさりと実現できてしまった。
「ひょっとして、【黒蜘蛛の忍刀】の方が強いのか?」
「ええ、恐らく……攻撃力のみならば……ですが」
「それは、どういうこと?」
「言葉の通りです。【七星剣・セプテントリオン】は、純粋な剣としての攻撃力は大したことはないということです」
「そんなことがあるの?」
アイリーンさんの発言に、かすみさんが疑問を投げかける。
俺もかすみさんと同感で、にわかには信じがたいのが正直なところなのだが……
「私の【エクスイフリート】も、セイラさんの【アークセラフィエル】も、実は装備自体の能力は大したことはありません……凄いのはそれぞれが持つ、特殊能力なんです」
「なるほど!それじゃあ……」
アイリーンさんの【炎帝器・エクスイフリート】は、恐ろしい魔人形態への変身能力を……
セイラさんの【極天衣・アークセラフィエル】は、自らのステータスのどれか一つを、爆発的に上昇させるという能力を持っていた。
ということは、この【七星剣・セプテントリオン】にも何か恐ろしい特殊能力が備わっているということか。
それならば、剣自体の攻撃力が低いということも頷ける。
俺はすぐに端末を使用し、【七星剣・セプテントリオン】の鑑定を試みる。
【七星剣・セプテントリオン】 最高位神器の一つ。七つの星に封印された能力を自在に使用することが可能。それら全てが解放された時に真価が発揮されるであろう。
……ほお。
ちょっと七星剣の検証が長引いてしまいまして……
二話に分けさせて頂きます!
次回に続きますね!
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