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『紅蓮の魔女』と『神速の配信者』  作者: 我王 華純
第二章 集う宿星たち
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第13話 究極?の選択


 ――超級職について


 超級職とは、上級職の更に上のランクに位置するジョブ。

 言わずと知れた、現状、冒険者が就くことが可能な中では最上級となる。

 そんな、冒険者にとって憧れのジョブである超級職に就くための条件は二つある。


 一つは、上級職に就いた状態で、レベルをカンストまで上げること。

 こちらの条件に関しては、難易度は高いが熟練の冒険者の中には達成した者も多い。

 

 そして、もう一つの条件、こちらの方が冒険者たちのとっては、かなり難易度が高いと言われている。


 

 その条件とは――ダンジョン統括省と冒険者ギルドから許可を得ること。



 この二つ目の条件のせいで、実力的には要件を満たしていても、超級職になれない冒険者は数多い。


 例えば、『金剛の刃』のクランオーナー、金剛寺アキラはそれに該当する。


 彼は上級職のレベルカンスト。

 実力的にも並の冒険者を凌駕している。


 ……が、未だ超級職になる資格を得られていない。


 

 並外れた実力と、模範となる素行、積み上げた実績、それら全てを兼ね備えなければ超級職に就く許可は得られない。


 金剛寺アキラの場合はそれらのどれか、あるいは全てが不足していると判断されているが故の保留扱いとなっている。


 しかし、中にはそれらの基準を全て逸脱し、例外的に超級職となる者も存在する。


 例えば、『紅蓮の魔女』アイリーン・スカーレット、彼女は単独で活動する冒険者であり、しかも、その並外れた火力にて数多の冒険者を巻き添えにし、灰に変えてきた。

 普通ならば、素行的に超級職の許可を得ることはとても不可能だろう。


 しかし、彼女の実力は、並外れたどころか、人外と呼べる範疇にある。


 どれだけ素行が悪くとも、そこに目を瞑りさえすれば、他の冒険者では到達できないほどの実績を積み上げることは火を見るよりも明らかだ。


 そのため、アイリーン・スカーレットにはその実力、特性に準じた超級職に就く権利が与えられたのだ。


 余談ではあるが、他に同様の例としては、『闇鍋騎士団』のクランオーナー、村雲ミズキも類似した理由で超級職に就くことが出来ている。


 

 そして、もう一つ例外がある。


 

 それは、今回のような緊急時の場合だ。


 緊急でどうしても戦力の増強が必要となった場合。


 上級職でレベルカンストをクリアしている冒険者に限り、特別に許可が得られるというケースだ。


 こちらの場合は、不公平感も強く、超級職になった後の世間の風当たりが強い場合もあるため、極めて稀なケースと言われているが……



 今回、超級所になるべく冒険者ギルドへ急行している草薙ハヤトも、この該当している。


 ◆


 

 そして現在……俺は冒険者ギルドに到着していた。


 隣には寝起きで目が半開き状態のアイリーンさん。

 俺たちの前に鏑木支部長とかすみさんが先攻して歩いている。


 二人の説明によれば、ダンジョン統括省と冒険者ギルドにとって看過できないような事態が発生したらしい。


 やれ、ダンジョン統括省の本部が中国のギルド集団に襲撃されただの……


 その集団をセイラさんと清十郎さんを含む冒険者集団が迎え撃っただの……


 挙句の果てには、謎の力の介入でその場の全員が散り散りに飛ばされてしまったらしい。


 

 ……謎の力って何だよ!?

 

 色んなことが一気に起こり過ぎて怖いわ全く!


 かすみさんと鏑木支部長に聞いてみたが、その力に関してはダンジョン統括省でも未だよくわかっていないらしい。


 恐らくダンジョンに関係する「何か」であろうということしかわかっていない謎の存在。


 何やら、世界で危険な事象が起こりそうな時に、稀に干渉してくる存在だが、今まで悪事などは働かないため、そこまで危険視はされていないのが現状だそうな。


 一応、その存在に関する呼称は決められているらしく。


 その存在が出現した時は漏れなく紫色の光を放つため『紫光』と呼ばれているそうな。


 「まさか、こんな場所まで出てくるとはな……」


 「意外と細かいところまで見てるのね」


 「いや、今まで出現した時と比べて予測される被害が少なすぎる……」


 「それもそうね……それじゃあ、あれが出てきた本当の理由は……まさか」


 なんてよくわからないことを二人が話していたので、思ったより身近な存在なのかもしれない。


 とにかく、そんな『紫光』の介入もありながら、たくさんの事態が急激に発生したがために、俺が栄えある超級職へと任命されることとなったわけで……



 微妙だなぁ……


 いや、いつかはなってみたいと思ったけどさ。


 こんな形でなりたかったわけじゃないっていうか……


 俺まだ初心者だよ?

 それが色んな人を差し置いて超級職?

 まじで?

 怒られない?


 いろいろな思考が頭の中で交差する。


 「大丈夫ですよ。超級職なんてただの飾りみたいなものです」


 そんな俺を見て、いろいろと察したのか、アイリーンさんが語り掛けてくれた。

 超級職を飾りなんて言えるのはアイリーンさんくらいの強さがあるからだろうに、なんて一瞬考えてしまったが、その言葉が彼女なりの気遣いなのだろうとすぐに気付いた。


 「あ、ありがとうございます。でもやっぱり緊張してしまって」


 確かにアイリーンさんの役に立つために強くなりたいと誓った身。

 この申し出は正直に言えば有難いのは間違いない。

 

 ただの配信者としてではなく、ちゃんとしたパートナーとしてアイリーンさんの隣に立つために……


 俺は超級職になる……そして、もっと強くなってみせる。


 そう心に強く思いながら歩みを進めた。



 ギルドの中に入り、カウンターへ向かう。

 

 「マスターいる?ダンジョン統括省の藤堂が来たと伝えて欲しいんだけど」


 かすみさんが、受付嬢にそう伝えると、すぐに奥へ通された。

 案内されたのは、大きなテーブルとソファが備え付けられている応接室だった。


 暫く待っていると、一人の男性が現れた。

 年恰好は四十代ほどだろうか。

 何というか筋骨隆々丸出しで、屈強な冒険者といった見た目をしている。

 

 「お待たせしました。遅れて申し訳ありませんでした。ちょっと仕事が立て込んでおりましたので」


 その見た目とは裏腹に語り口は柔らかく紳士的だった。


 「陸奥君。急に悪かったわね。早速だけど紹介するわ、こちらはアイリーン……の方は知っているわね。もう一人の方が草薙ハヤト君。今日お願いしている件の本人よ」


 「ああ、君が草薙君だね。ここのギルドのマスターを任されております、陸奥と申します。どうぞお見知りおきを」


 「あっ、はい。こちらこそよろしくお願いします」


 こんな初対面の俺に対しても深々とお辞儀をして挨拶をしてくる。

 間違いなくこの人は良い人なんだろう。

 アイリーンさんのことは知っているようだが、顔見知りなのだろうか?


 「アイリーンさんもお久しぶりですね。確か最後にあったのは一年ほど前のクエスト時でしたかね?」


 「ええと……そうだった……ですかね?多分そうじゃないですか……ね?」


 「ああ……はい……ソウデスヨネ」


 うん、アイリーンさんは絶対に覚えてないな。

 返しが適当過ぎる。


 多分、陸奥っていう人も同じことに気付いたんだろう。

 ひたすら苦笑いを浮かべて最後は片言になってるじゃんか。

 可哀そうに……


 

 「それで、頼んでいた件は大丈夫だったかしら?」


 「……え?ああはい!草薙君ですね!……彼を超級職と、Aランク冒険者にするという件、冒険者ギルドとしてもOKが出ました!」


 ……Aランク冒険者?Aランクになるの俺?


 それは初耳だったわー。


 すごいな俺、出世しまくりじゃん。怖くなってきた。


 「あの……Aランク冒険者とは?」


 「ん?ああ、別にどっちでも良かったんだけどね。さすがにBランク冒険者で超級職の人って、今までいなかったからついでに推薦しといたの!」


 かすみさんがパチクリ!っとウインクしながら答えてくれた。


 そうなんだ。まあもうその辺りはどうでも良いかな……うん。


 驚きすぎて疲れてきちゃったし。


 「というわけで、現時刻をこの冒険者ギルド第二支部、ギルドマスターの陸奥イワオの承認において……草薙ハヤトを『Aランク冒険者』とします!」


 おお。こんな簡単な感じで良いのか?Aランク冒険者って。


 「まあ、緊急時ですからね。認定証やらなんやらの細かいことは後でっていうことで……」


 陸奥さんも同様に、色々と省略して俺をAランク冒険者に認定してしまったらしい。


 「よし!鏑木君、これでハヤト君を超級職に昇格させる条件は全て整ったっていうわけね」


 「はい、超級職に就くための条件は、上級職のレベルカンストと、ダンジョン統括省、冒険者ギルド両方の許可。草薙ハヤトはこの両方の条件を満たしたことになります。超級職に昇格させても問題は無いでしょう」


 相変わらず険しい表情の鏑木支部長の説明を聞きつつ、俺は自分の鼓動が高くなるのを感じた。


 いや、やっぱりいざ超級職になるのが決定すると緊張するなという方が無理がある。


 この緊張を少しは共有してくれてるのかと、アイリーンさんの方へ目を向けると、ニコリと柔らかな、とても柔らかな笑顔を向けてくれた。


 うん、全く緊張はしてないな、期待した俺が悪かった。


 「陸奥君、それでハヤト君が就くことが可能な超級職っていうのはどれになるの?」


 「はい、こちらの方で草薙君の全てのデータを調査したところ……候補は二つございます!」


 おお、二つもあるのか。

 俺も捨てたもんじゃないのかもな。

 これは大事な選択だぞ……

 鼓動の高鳴りが更に強くなるのを感じながら、陸奥さんの説明へ耳を傾ける。


 「まず一つは……『神速王』ですね」


 おお!『神速王』ときたか!


 これは凄いぞ!恐らく俺のスキル『神速』からきているのだろう。

 何を隠そう俺は『神速の配信者』だ。

 これ以上の適職は存在しないだろう。もう一つの候補を聞くまでもなく決まりでも良いんじゃないだろうか?


 「かなり良いわね。一応、もう一つも聞いておこうかしら」


 「はい。そうですね……私も『神速王』で良いと思うんですが、一応もう一つの候補も伝えますね」


 かすみさんと陸奥さんも俺と同感らしい。

 『神速王』、強そうで早そうでカッコ良いじゃないか。

 俺の心は既に99パーセント『神速王』草薙ハヤト、という名前に支配されていた。


 ……が、この後に陸奥さんの口から発せられる言葉にとてつもなく心を揺さぶられることになる。




 「ええと……もう一つの候補は……『配信王』ですね」





 ……そうきたかぁ。

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