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『紅蓮の魔女』と『神速の配信者』  作者: 我王 華純
第二章 集う宿星たち
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第10話 ミズキ親衛隊

久しぶりに主人公の登場です。


……こんなキャラだったかしら?


 国内某所――



 結局、束の間の安眠を妨害されてしまった俺とアイリーンさんは、ダンジョン統括省の送迎車にて、とある場所へ向かっていた。


 あの後、ベッドに飛び込んだ俺が安眠できたのは恐らく二時間程度。

 せっかく眠りにつけたのに、すぐに起こされてしまった。

 何が、明日の朝まで急用が取れるだ、こんちくしょうめ。


 やっとの思いで得ることができた安眠時間はあっさりと破られ、今はこうして拉致されているというわけだ。


 隣にはアイリーンさんもいるが、恐らく彼女も寝不足なのだろう。

 車内で完全に熟睡している。


 ……寝顔が可愛いな、ちくしょう。


 ……なんてことを考えてしまったが、あまり寝顔を見つめている自分もどうかと思い直し、視線を前に向けた。


 同じ車内にはダンジョン統括省の鏑木支部長と、かすみさんも同席している。

 六人乗りの車で、最後部の座席に俺とアイリーンさん。

 中央の座席に鏑木支部長とかすみさんという位置取りとなっている。


 「あの……いきなり叩き起こされて……何かトラブルでもあったんですか?」


 「ああ、鋭いわね。そうなのよ、ちょっと色々とあってね……急遽予定が変更になっちゃったの」


 鋭いも何も、トラブルでも起こらなければ突然、連れ出されたりはしないだろう。


 俺の予想だと、かなり面倒なことが起こっていると思う。


 ていうか、予定では明日の朝から新たに出現したSランクダンジョンへ向かって出発するはずだった。

 確か目的地は沖縄だったかな?


 ということは、今から沖縄へ向かうってことか?


 「もしかして、今から沖縄へ行くっていうことですか?」


 「いや、沖縄へ向かってもらうのは予定通り明日からだ……」


 次に回答したのは、鏑木支部長だった。

 いつも通りの低い声で、機嫌でも悪いのか?と思わせるほどのぶっきらぼうな口調で答えてくれた。


 「じゃあ、一体どこへ向かってるんですか?」


 「今向かっているのは……冒険者ギルドだ」


 「ギルドですか!?一体なぜ?」


 思いもよらない回答に思わず大きな声を出してしまった。

 その疑問に次はかすみさんが口を開く。


 「わけあって、君たち……特にハヤト君には、よりパワーアップしてもらわなければなくなってね、それでまずは冒険者ギルドへ向かってるってわけ」


 「はあ……パワーアップですか?」



 次にかすみさんの口から出た言葉に俺は思わず絶句してしまった。




 「そう、ハヤト君には……これから超級職になってもらうわ」




 ◆


 舞台は再び、ダンジョン統括省本部前へ戻る。


 ここでは、劉愛蕾とミズキの激しい攻防が繰り広げられていた。


 「よいしょぉおお!!!」


 「オラァアアアア!!!!」


 劉愛蕾の雷を帯びた錫杖と、ミズキの剣撃。

 互いに一歩も退かず、斬り結ぶ二人の間には激しい攻撃の火花が散っていた。


 「行きますよー!『鎌鼬』!」


 少し距離を置いた瞬間、ミズキが剣を振るい、真空の刃を放つ。

 『鎌鼬』は、ミズキが得意とする風属性魔法の一つ。

 ミズキは、この『鎌鼬』を自らの剣に載せて放つことで、威力を何倍にも上昇させるというアレンジを加えている。

 並の冒険者ならば一撃で葬られそうなほどの威力の真空の刃が劉愛蕾へ向かって高速で飛んでいく。

 

 

 「ああん!?そんなチンケなもんがあたしに効くかよぉぉ!オラァアアアアアア!!!!」



 だが、その真空の刃が向かう相手の力は強大で凶悪だ。

 雄叫びをあげながら突進してくる劉愛蕾。

 真空の刃へ錫杖を合わし、あっさりと弾いてしまう。

 そのまま、ミズキへ向かって錫杖で攻撃しようとするが、素早く後退した彼女に対して追撃は届かなかった。


  「……逃がすかよぉ!『麒麟』!」


 しかし、その局面で使用したのは最高位神器グランドレガリアの能力。


 『霊獣輪・天之四瑞』が持つ四つの能力の一つ『麒麟』だった。


 光の如き速さでミズキの背後へ移動する。


 「……!?えええっ!?」


 刹那の瞬間で背後に出現した劉愛蕾に対して、一瞬何が起きたかわからないような表情を浮かべるミズキだったが。


 「『ライジング・トルネード』!」


 咄嗟に周囲へ強力な竜巻を発生させる効果のある、風魔法で状況の打開を試みる……が。


 「甘いんだよぉ!」


 無慈悲なまでに強力なステータスを誇る劉愛蕾は、その程度では止まらない。

 発生し始めた竜巻を物ともせず放たれたパンチがミズキを捉えた。


 「ぐぅうう!!!」


 竜巻を突き破りながら飛んでこた拳はミズキの肩口を捉え、そのまま吹き飛ばしてしまう。


 何とか体勢を立て直し、着地を決めたが今の攻撃で受けたダメージはかなりのものだった。


 「あいたたぁ……やっぱり強いなぁ!サダヨシさん、回復お願いします!」


 「まかせろ!『エクストラヒール』!」


 すぐに近くで戦いを見守っていたサブオーナーのサダヨシが回復魔法を使用する。

 上級職『聖騎士』は回復魔法に関してもかなりの補正が入るため、その回復量は馬鹿にできない。

 サダヨシの回復魔法を受けて、みるみるうちにミズキのHPが回復していった。

 

 

 「ありがとうございました!おかげで全快です!」


 腕をぶんぶんと回しながら、コンディションをアピールするミズキの姿を、半ば呆れた表情で劉愛蕾が見つめている。

 

 「もう気が済んだか?お前じゃあたしの相手にはならねぇよ」


 「あらら?それはちょっと気が早いんじゃないですか?私の本気は……これからですよ!!!」


 そうミズキが言った瞬間。


 ぶわっと周囲に風が吹き始める。


 「皆さんも……そう思いますよね!せーの!」


 ミズキが更に気合を入れると、風の勢いが増幅され、一気に猛烈な風が吹き寄せ始める。


 〈出ました!ミズキちゃんの本気!〉

 〈俺たちのアイドルの力見せてやれ!〉

 〈あんなゴリラみたいな女に負けるんじゃないぞ!〉

 〈俺たち『ミズキ親衛隊』が付いてるぞー!!!〉


 先程、ミズキが呼び掛けたのは、配信を見ている自分のファンたち。


 度々炎上している『闇鍋騎士団』のチャンネル登録者……その中でもミズキの熱狂的なファンたちで形成されている『ミズキ親衛隊』の面々だった。


 「声援ありがとー!皆の力を分けてもらって、絶対に勝利するからね!」


 〈ウォォォオオ!!!負けるなミズキちゃん!〉

 〈俺たちの希望!ミズキたんの勝利を信じてるぞ!〉

 〈俺たちの声援……受け取ってくれ!〉

 〈頑張れー!ミズキたーん!!!!!〉


 現状は『闇鍋騎士団』の配信担当、メイによって生配信され、同時接続者数は既に五万人を超えている。

 元々のファンの視聴者たちに加え、あの『黄牙団』のSランク冒険者、劉愛蕾が相手とあっては、その視聴者数はうなぎ登りに増え続けている。



 「こいつは……一体何なんだ?」



 まさか、この状況で生配信を行い、あまつさえファンに呼び掛けるとは……


 目の前の光景は自らの理解を超えている……劉愛蕾は呆然とその状況を見つめていた。


 「さてと……決着と行きましょうかぁ!!!!」


 どんどん勢いが強くなり続ける風をその身に纏いながら気合を入れるミズキの姿に、ギリィッと歯軋りをしながら苛立ちを露わにする劉愛蕾。


 強烈な風を身に纏いながら軽やかに駆け出す少女と、雷光を体中から放ちながら獣の如く走り出す戦妃の体が交差する。


 風と雷。


 二つの現象が交わり、激しい轟音が鳴り響いた。




 

 

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