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『紅蓮の魔女』と『神速の配信者』  作者: 我王 華純
第二章 集う宿星たち
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第7話 天之四瑞

いやぁ、劉愛蕾の出番が終わらなくて……


アイリーンさんとかハヤトとか書きたいのになぁ(遠い目)


もうすぐ……もうすぐ『紅蓮の魔女』と『神速の配信者』出てきますので……


お待ち下さいませ!

 

 東京、霞ヶ関――


 人気のない道路を数人の男たちが駆けている。


 「さあさあ、早く行かないと獲物を取られちまうぜ!」


 「いやいや、さすがにSランク相手じゃ、サダヨシさんじゃ無理でしょ……」


 「わかんねぇぞ!シンゴとアオイが付いてるからな!」


 「とにかく早く行かないと終わっちまうぜ!ヒャッハー!腕が鳴るぜぇ!」


 ガヤガヤと騒がしく、時には下品な言葉も聞こえてくる。

 しかし、彼らの身のこなしは明らかに一般人のそれとは異なる。

 凄まじい速さで駆け抜ける彼らのスピードは明らかに冒険者の……しかもかなりの上級者のステータスによるものだった。


 

 「そういえば、オーナーはどこ行った?」


 「ああ、今回はオーナーは別行動ですね。配信担当のメイと一緒にいるはずですよ」


 「ますます心配だな……下手したら抜け駆けされちまうぞ!」


 「それは洒落にならねぇ!俺たちのクランってこういう時にまとまりが無いよなぁ!」


 「まあまあ、それが僕たち『闇鍋騎士団』の個性でもあったりするんですから……」


 「まあ……そうだけどよぉ!」


 そう、彼らはクラン『闇鍋騎士団』の団員たちだった。

 全速力で向かう先はもちろん、ダンジョン統括省の本部。

 『闇鍋騎士団』のクランオーナーの召集を受けて現地に向かっている最中だった。



 「待ってろよぉ!俺の……報奨金!!!!」



 彼らには他のクランほどの仲間意識は存在しない。

 クラン内で行動を共にしているのも、目的を達成するための手段と捉えている者がほとんどを占める。


 ある者は、クランにいることで得られる収入のため。


 またある者は、より有名な冒険者として世間に認知されるため。


 社会からは迷惑系のクランとして認識されてしまっている『闇鍋騎士団』に所属する団員たちもまた、どこかクセのある意識の持ち主の集まりなのである。


 そんな『闇鍋騎士団』の団員たちがダンジョン統括省に集結しようとしていた。



 ◇


 そして、その騒動の爆心地。


 ダンジョン統括省の正門前では……


 『闇鍋騎士団』の団員の一人であるシンゴの『ストーン・バインド』が劉愛蕾に向かって炸裂した瞬間となる。


 「よおし!これで……もらったぁ!」


 石化魔法が劉愛蕾を捉えた瞬間、高らかに声を上げたのは騎士の装備の男性、その名をサダヨシ。

 『闇鍋騎士団』のサブオーナーである。

 個性豊かで基本的に歯止めが効かない『闇鍋騎士団』において、冷静で他の団員を統率出来る数少ない人員といえる。


 その彼の目前でシンゴ必殺の『ストーン・バインド』の光が劉愛蕾を覆いつくす。

 今までこの魔法を喰らい、生き延びた者はいない。

 そのため、魔法が着弾した瞬間に勝利を確信してしまったのも頷ける。


 

 ……しかし、それは相手が並の冒険者だったらの話。


 今、彼らが対峙しているのはSランク冒険者、劉愛蕾。

 人の理解を超える実力者に対しての経験は未だ彼らには無かった。


 それ故の油断……と呼ぶには余りにも少ない時間だったが、劉愛蕾相手には致命的なミスだった。



 「『麒麟』……」


 『ストーン・バインド』による光に中でふいに呟かれた言葉……



 「また、面倒臭い手を使いやがって……覚悟は出来てるんだろうな?」



 その直後にサダヨシの背後で声がした。



 「……っ!?」



 咄嗟に振り向こうとする彼の顔面を拳が捉え、凄まじい轟音と共に吹き飛ばされていった。

 彼の体は地面と平行に一直線に飛んでいき、破壊された正門の瓦礫の中へ突っ込んでしまう。



 「いつの間に!?」


 「全然見えなかったんですけど……」



 驚愕するシンゴとアオイの視線の先には、先程まで浮かべていた余裕の笑みを忘れてしまったかのような怒りの表情を浮かべる劉愛蕾の姿があった。

 たった今、サダヨシを殴り飛ばした左腕は未だに握り拳のままだ。

 そして、もう片方の右腕はというと、無惨に石化してしまっているのが見て取れた。


 やはり『ストーン・バインド』による石化は、劉愛蕾には有効だったらしく、彼女の右腕から徐々に石化の箇所が広まっているようにも見える。



 「こんな腕……こうしてやらぁ!」



 このままでは全身に石化が広がってしまうのは火を見るよりも明らかだった。

 そのため、劉愛蕾は残っていた左腕で手刀を作ると、そのまま石化が及んでいない肩口の部分から右腕を切断してしまった。


 途端にボタボタと夥しい量の血液が切断面から流れ落ちる。

 強引な手段で石化を防いだのは良いがこれではすぐに戦闘不能に陥ってしまうのは間違いない。

 それでは意味が無いだろうに。


 周囲の者が揃ってそう考えた瞬間だった。



 「ふん!『鳳凰』!」



 苛立ち紛れに大声でスキルの行使が宣言されると、一瞬で出血が止まりそれどころか切断されたところから新たな右腕が物凄い速度で再生されていく。


 

 「えええ、反則じゃん……」



 思わずアオイの口から洩れた言葉が現状を如実に物語っている。


 シンゴ必殺の『ストーン・バインド』で追い詰めたはずなのに……


 瞬間移動からの超回復であっという間に状況を引っ繰り返されてしまったのだ。


 しかも、アオイの『毒霧の術・極』によって付与されたはずの毒の効果も消え失せてしまっている。


 その理不尽なスキルの存在に唖然とする他なかった。



 「あきらめるなぁ!まだ手はあるだろう!」



 そう叫んだのは、たった今ぶん殴られて瓦礫に突っ込んだはずのサダヨシだった。

 劉愛蕾のパンチを完璧に顔面に喰らいながらも、瓦礫を飛び散らせながら勢いよく立ち上がる。


 「あれ喰らって生きてるなんて、さすがサブオーナーだね、ていうかひょっとしてスキル使っちゃった?」


 「ああ、残念ながら『最後の根性(ラストガッツ)』は今ので打ち止めだ」


 アオイの問いに応えながらエリクサーを摂取し始める。


 サダヨシのジョブは上級職の『聖騎士』。


 レベルはカンストしており、『闇鍋騎士団』のタンクとして不動の地位を築いている。

 その『聖騎士』のスキルである『最後の根性(ラストガッツ)』は、致死ダメージを受けた際に一度だけHP1ポイントの状態で踏みとどまることが出来るスキルだ。


 つまり、レベルカンストの上級タンク職である『聖騎士』であるサダヨシのHPが、ただのパンチ一発で削り切られたことになる。


 改めて劉愛蕾の恐ろしさに戦慄を覚える三人だったが、もう一つ気掛かりなことがあった。


 

 「それにしても、瞬間移動に超再生とか、チートスキル使い過ぎじゃない?」


 「超級職にしたってあんな便利スキルを揃えているわけがないだろうからな……」


 「ああ、あいつが使っているスキルは……恐らく」


 

 『闇鍋騎士団』の三人の思惑は一致している。


 瞬間移動に超再生、そんな便利な能力を一人で併せ持っているなんてことは普通では考えにくい。

 Sランク神器の複数所有や超級職であろうが、そこまでの万能さを持つ冒険者など聞いたことが無い。


 このことから考えられる事実は一つ……



 「最高位神器グランドレガリア……か?」



 サダヨシの呟きに他の二人が同時に頷く。


 そう、これだけの反則級のスキルを一人の体で使用可能だとすれば、それは反則級の神器の能力。

 つまり最高位神器グランドレガリアしか考えられなかった。



 「へえ、ご明察だよ……冥途の土産に教えてやるよ」


 

 三人の疑問をあっさりと認めつつ、劉愛蕾が自らの首元から様々な装飾が施された首飾りを取り出す。



 「これがあたしの最高位神器グランドレガリア……」



 首飾りには四つの宝珠が取り付けられ、それぞれが違う色の光を放っている。

 

 

 「『霊獣輪……天之四瑞』さ!」



 それは、グランドダンジョン『霊獣の大秘境』にて『統率者』である『四霊獣・天之四瑞』を倒した時に入手可能な最高位神器グランドレガリア


 

 「さあ、あんたらにはかなりムカついたからねぇ。ここからは遠慮なく行かせてもらうよぉ!」


 

 『闇鍋騎士団』が使用した搦め手に対して、些か腹を立てた劉愛蕾は、セイラとの戦いでは使用しなかった最高位神器グランドレガリアの使用を宣言した。


 

 「ちぃっ!構えろぉ!」



 サダヨシの指示が飛ばされると同時に、他の二人も最大限の警戒態勢を取る。


 もはや遊ぶつもりも無いのだろう。

 体中から殺気を放ちながら、劉愛蕾が再び帯電状態へ移行し……



 「報奨金見ーっけ!!!」


 「おっしゃぁ!俺の獲物だぁぁ!」


 「オーナー、私の活躍見てて下さい……」


 「死ねこらあ!」



 『闇鍋騎士団』の団員たちによる一気阿世の奇襲が実行された。


 

 

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