第6話 迷惑系クランの強襲
ああ……
全然配信の描写が……
出来ない!(忘れてるわけじゃないですからねー)
『闇鍋騎士団』――
『九頭竜』や『金剛の刃』などのトップクランと並ぶ知名度を誇りながら、世間の評判はすこぶる悪く、好感度の低さでは他のクランの追随を許さない。
その理由は何かと問われれば、ただ一つ。
彼らは、世間で言う所の迷惑系クラン。
世間の注目を集めるためならば手段を辞さないその姿勢は、時には世間の反感を買い、度々炎上を招いていた。
例を挙げるならば……
・他の冒険者が攻略中のダンジョンに乱入しての好き放題
・立入禁止区域への無断侵入
・ダンジョンでも無い場所でのスキルの行使
これらは彼らの活動内容の一部に過ぎないが、漏れなくギルドによって禁止事項に挙げられている。
しかも彼らは全ての行為を自らのチャンネルで配信を行うため、これらすべては売名行為と断じられ非難を浴び続けているの『闇鍋騎士団』なのだ。
絶体絶命のピンチに駆け付けた増援は、そんな悪名高きクランの面々だった。
「全く……もうちょっとマシな増援はいなかったんですの?」
「はい……しかし、彼らは炎上続きで評判は著しく悪いですが、腕は確かと言われております……この場のみで限って言えば、あながち間違いではないかと……」
清十郎の言う通り、『闇鍋騎士団』は戦闘力だけで言えば並のクランとは比較にならない程に高い。
クランオーナーは素行さえ良ければSランク冒険者になれるのでは?と言われる程の実力の持ち主であり、他のメンバーも軒並み強力なメンバーを揃えている。
何度でも言うが、素行さえ良ければもっと上の地位に上り詰めていたとしてもおかしくないクラン、それが『闇鍋騎士団』なのである。
そんないわくつきのクランのメンバーが、劉愛蕾の前に立ちはだかった。
メンバーは三名、騎士風の装備をした男性が大盾を構えながら指揮を出している。
「アオイは攪乱を担え!シンゴは魔力を溜めつつアオイの援護!俺は正面からあいつを引き付ける!」
「はいよー!」
「了解!」
指揮に応えて散開していく『闇鍋騎士団』のメンバーたち、劉愛蕾を囲むように位置を取っていく。
「真ん中のあいつは俺たちが請け負う!他の冒険者たちは、後の二人を頼む!」
何と『闇鍋騎士団』は自らの相手に劉愛蕾を指名してしまった。
「ほ、本当に大丈夫ですの?」
「と、とにかく彼らの言う通りにしましょうか……何か策でもあるのかもしれません」
半信半疑ではあるが、あれだけ強弁しておきながら無策ということは無いだろう。
セイラと清十郎は劉愛蕾を『闇鍋騎士団』へ一任し、楊梓晴と呉李静の方と対峙することにした。
劉愛蕾と同じSランク冒険者の立場でありながら、その相手を他の者に譲るのは、抵抗が無いと言えば嘘になる。
しかし、現時点で具体的な対抗手段は思いつかなかったため、一度彼らに任せることにした。
そして、もう一つ、悪評漂う彼らと行動を共にすることに多少の抵抗があったのも確かだ。
一方で、一連の会話を全て聞いていた『黄牙団』の面々は心中穏やかでは無かった。
楊梓晴と呉李静は、せっかく目的の情報を入手したのにみ関わらず、また新たな追手が出現したことに。
劉愛蕾は、目の前にいたセイラというSランク冒険者との戦いを邪魔されたことに関しての苛立ちを覚えていた。
「劉様、大丈夫ですか!?」
「ああ、こっちの心配はしなくて良い……こいつらは今からあたしが八つ裂きにしてやるよ」
苛立ちをの表情を全く隠さないまま、帯電状態に入り、目の前の三人を睨み付ける。
いよいよ、『闇鍋騎士団』との戦闘が始まろうとしていた。
まず動いたのは、アオイと呼ばれた忍者風の装備を付けている女性だった。
帯電状態のまま動きを見せない劉愛蕾のサイドを位置取りながらスキルを発動する。
「忍法……『毒霧の術・極』!」
スキルを発動したアオイの体から噴出されたのは、とても濃密な紫色の霧だった。
一目で毒だとわかるような不吉な色をした霧が周囲に散布されていく。
周囲への影響を考慮しながら『氷結地獄』の『第三階層』以降を使用しなかったセイラたちとは真逆の戦法に、『黄牙団』のみならず味方の冒険者たちも眉をひそめる。
「こんなところで毒霧散布なんて……正気ですの!?」
「正気ですよー!瘴気だけに?なんちゃってー!」
「ぶっ殺しますわよ!」
思わず、言ってはいけないような言葉を口走ってしまうほどには、彼らの非常識さを実感してしまったセイラだったが……
「ご心配なさらず!『バリアウォール』!」
すかさず周囲に障壁を貼り、毒霧の流出を防いだのはもう一人の魔導士風の姿をしたシンゴと呼ばれた男性だった。
「これで毒霧の心配はいりませんよ!」
「ふん、それにしたってやり方が些か強引過ぎるようですわね!」
「まあまあお嬢様……今は目の前の敵に専念しましょう。それに上空をご覧ください、あまり物騒な言葉を使うのは控えるべきかと」
清十郎に促されて上空を見るとそこには何やら飛行している物体が……
「あれは、ドローン?……まさか!?」
そう、それは正しく配信用のドローンだった。
「この状況を配信するつもりですの?有り得ませんわ!」
『闇鍋騎士団』が炎上してきた原因を鑑みれば、この切迫した状況でも配信を行おうとするのは気が付きそうなものだったが、状況が状況だけにそこまで気が回らなかった。
最初に三人が現れた時にそこまで気付いていれば……
余裕が無かったとはいえ、そんな自分に対して苛立ちを覚えるセイラだった。
ここに配信用ドローンが飛んでいるということは、他にドローンを飛ばしている『闇鍋騎士団』の人員が控えているのか、それとも目の前の三人の誰かが操作しているのか。
眼前に劉愛蕾という最強の敵がいる状況で、ドローンを操作する余裕があるとは思えないし、三人が配信を行うような人員には見えなかったので、恐らく前者だろうとセイラは考えていた。
「そんなことより目の前の敵に集中しろ!毒が効いているか確認だ!」
騎士の装備をした男性が目の前の敵へ注意を向けるように檄を飛ばす。
その声に注意を聞き、即座に劉愛蕾に意識を向けると……
そこには、アオイが発した毒霧に包まれた状態で立っている劉愛蕾の姿があった。
「こんな小細工であたしを殺れるとでも思ったのかい?」
どう贔屓目に見ても、毒霧の影響を全く受けていないように見えるが……
「いや!毒状態の付与には成功している!」
「ということは……」
「ああ!あいつは状態異常に対する耐性は持ち合わせていないようだ。これで……行けるぞ!」
思えば先程アオイが放った『影縛り・極』の時にも、あれだけ無敵を誇った劉愛蕾が動きを封じられたことに対して違和感があった。
まさかSランク冒険者ともあろう者が、状態異常に対する耐性を持ち合わせていないなんてことがあるのだろうか?
「よし!続けて行くぞ!『ストーンバインド』ォ!!!!」
秘かに詠唱を行っていたシンゴが更なる魔法を放つ。
それは、相手へ石化の効果を与える上級魔法だった。
「これが決まれば……勝利だ!」
起死回生の魔法の光が劉愛蕾を包み込む。
『ストーンバインド』は決まれば相手を完全に石化させてしまう。
もし、本当に劉愛蕾に状態異常に対する耐性が無いのであれば、これで勝負が決まってしまってもおかしくない一手だった。
『闇鍋騎士団』の容赦ない攻撃が、劉愛蕾に襲い掛かった。
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