第41話 『星崩の大魔宮』 エピローグ①
更新遅れてごめんなさい!
エピローグ難しいです!
本当は1話で終わらしたかったんですが長くなりそうなので、2話に分けますね!
――それから俺たちは、ダンジョンから転送され入り口前まで戻ってきた。
ダンジョンに突入した時には、辺りは日中だったのに、今はもうすっかり夜になってしまっていた。
出迎えるのは、もちろん『ダンジョン統括省』第三支部の鏑木支部長だ。
こめかみには、見事な青筋が浮かんでおり、俺たちに対して何らかの怒りを抱いていることがはっきりと表れている。
……まあ、何となく理由はわかるけどね。
その後、護送車にて丁重に保護されながら支部まで戻ることになった。
何でも一度支部に帰還した後に、今回の一連のダンジョン攻略に関しての労い……もとい事情聴取が行われるみたいだ。
護送車での中でも、鏑木支部長は腕を組み険しい表情を全く崩すことはなかった。
――第三支部に到着し、最上階の支部長室に行くと、そこにはもう一人の人物が待っていた。
この女性は、藤堂かすみさんと言って、『ダンジョン統括省』の関東支部の責任者らしい。
ということは、目の前の鏑木支部長よりも上の立場の人間ということだ。
藤堂さんは、鏑木支部長とは真逆と言っても良いほどの柔和な雰囲気を漂わせているため、最初はそんな立場の方だとは全く思わなかった。
「皆さん、グランドダンジョン攻略の件、お疲れ様でした。お疲れのところ申し訳ないんだけども、いくつかお話を聞かせてもらえるかしら?」
今回のグランドダンジョン攻略に関しては、完全に『ダンジョン統括省』の管理下の元に実施された。
そのために、踏破後の報告は必須というわけだ。
にっこりと微笑みながら尋ねてきた藤堂さんに対して、一番に応え始めたのは……
「ええ、もちろんよろしくてよ。それで一体どの内容をお聞きしたいのかしら?」
もちろん、セイラさんだった。
にこやかな表情の藤堂さんに対して、僅かに笑みを浮かべながら余裕を醸し出すのを忘れない。
「そうねぇ、まあ大体のところはそちらの『神速の配信者』さんの映像で把握させてもらったから、それ以外の細かいところをいくつか聞かせてもらおうかと思っています」
「わかりましたわ。ただ、わたくしたちもさすがに疲れておりますのでお話は手短にして頂けると有難いですわ」
「もちろんです。もう夜も遅いですしそれほど時間は取らせません。それでは始めましょうか」
藤堂さんの質問は、本当にいくつかの簡単な質問のみだった。
それぞれに対して、いくつか質問を終えると、満足気に頷いてこう述べる。
「これで私からの質問は終わりです、鏑木支部長からは何かありますか?」
藤堂さんからの問いに対して鏑木支部長は、首を横に振りながらただ一言。
「……いいえ」
とだけ回答した。
明らかに不服そうな意図が込められていたが……
「……そう、それではこれで終わりにしましょうか!お疲れ様でした!」
敢えてその意図を無視するかのように明るい声色で場を締めてしまう藤堂さん。
うん、強いなこの人。
立場だけではなく、人間的にも鏑木支部長より上のようだ。
「皆さんには、こちらの方で宿泊先を用意しています。もしよろしければ利用してくださいね」
確かに時間的にはもう夜中に差し掛かろうとしているし、今から家に帰るのも面倒だな。
せっかくだし、お言葉に甘えようかな。
……そういえば、アイリーンさんはどうするんだろう?
「あの、アイリーンさんはどうしますか?宿泊されます?」
「そうですね、せっかくだから利用させてもらおうかと思ってます。ハヤトさんはどうしますか?」
「はい、僕も利用しようかと思ってます」
アイリーンさんも宿泊するなら俺ももちろん宿泊に決まってる。
……いや、変な意味じゃないからね!
「あっ、セイラさんたちはどうされるんですか?」
「ああ、わたくしたちは自宅に帰りますわ」
「せっかくの申し出ですが、お嬢様はご自宅じゃなければ寝れない性質なもので……」
そうなのか……
まあセイラさん、そういうとこに五月蠅そうだよなぁ。
「それでは、わたくしたちはこれで失礼しますわ。今回のダンジョン攻略、楽しかったですわ。また会いましょうね」
「私もこれで失礼します。アイリーンさん、ハヤトさん、またお会いしましょう」
そう言い残し、セイラさんと清十郎さんは去って行った。
短い間だったが、共に戦った仲間として、かなりの親近感を持っていただけに別れ際には少し寂しいものを感じてしまう。
ちなみに去り際にセイラさんから「とっととアイリーンさんのことを落としてしまいなさいな」、と小声で伝えられたのは内緒だ。
その隣で苦笑いを浮かべている清十郎さんも含めてとても印象的なお別れの仕方だった。
「宿泊先を利用するのは二人だけかしら?それじゃあ、お迎えが来るまで別室で待っててちょうだいね」
手配された宿泊先までは『ダンジョン統括省』の係の人が送ってくれるらしい。
それまで別室で待機することになった……が。
「ああ、『神速の配信者』……ええと、草薙ハヤトくん、だったかしら?ちょっとお迎えが来るまで二人で話したいんだけど、大丈夫かしら?」
……え?こんなお偉いさんが俺に一体何の用なんだ?
唐突に、藤堂さんから持ち掛けられた提案に動揺してしまう。
「え……えーと、俺は別に構いませんが……」
「アイリーンさんも大丈夫?相棒さんを少し借りても問題ないかしら?」
「あ、はい、私は別に大丈夫ですよ」
「ありがとう。それじゃあ、ちょっと別室へお願いするわ。アイリーンさんはちょっとここで待っててちょうだいね」
そう言い残すと、藤堂さんは俺を連れて別室へ移動する。
俺たちがいた部屋から、少し離れた応接室のような場所へ案内された。
藤堂さんはすぐに席に着き、向かいの席に座る様に俺を促す、そして、俺が席に着くとすぐに口を開いた。
「突然、悪かったわね。驚いたでしょ?」
「ええ、それで……話というのは一体何なんでしょうか?」
「話というのはね、あの子。アイリーン・スカーレットに関してなの」
藤堂さんの言葉に心がドクンと脈打つのがわかった。
「あ、アイリーンさんの話ですか?それは一体……」
「いや、大したことではないのよ。昔の話なんだけど、冒険者時代に、あの子のことを少し面倒を見てたことがあってね」
「あの子って……アイリーンさんのことですよね!?面倒を見てたって、一緒に過ごしてたんですか?」
「ええ、もう10年ほど前かしら?短い間ではあったけれども、一緒に住んだりもしてたわよ」
な、何て意外なんだ。
アイリーンさんと藤堂さんがそんな関係だったなんて……
「驚いたかしら?」
「ええ、もの凄く驚きました。お二人がそんな関係だったなんて、全くわからなかったです」
申し訳ないが、今の二人のやり取りから、そこまでの関係性を読み取ることは全く出来なかった。
そこまで親密に見えるわけでもない二人が一緒に暮らしていたなんて……
「そうね、私とあの子の関係性だとそうは見えないかもね。でも勘違いしないでね、決して仲が悪いわけでもないの。私と彼女は、何て言うか……そうね、ビジネスパートナーって感じかしら?」
「び、ビジネスパートナーですか!?」
「ええ、そうよ。私は今の立場であの子のダンジョン攻略をサポートする。そしてあの子はたまに私のお願いを聞いてくれたりくれなかったりするの……まあ、そんな感じかな?」
うん、全くわからないや。
藤堂さんの話を聞く限りは、二人の関係はかなりドライな関係のような気がする……
しかし、二人は一緒に過ごしていた仲だし……
「ちょっと混乱してるみたいね。今回はそんな昔話をしたいわけでもないのよ、あなたには少しお礼を言いたくてね」
「お礼ですか?それは何でまた……」
「もちろんあの子に関してよ、あなたと相棒になってから、人間味が増したというか……」
「人間味ですか?」
「ええと、言葉が悪かったわね。平たく言えば……そうね、とても楽しそうなのよ」
藤堂さんの口から聞けたのは、意外な言葉だった。
アイリーンさんが俺と相棒になってから楽しそうだって?
俺の目からあまりそうは見えないのだが……でも、そうだとすれば、こんな嬉しいことはないよな。
「そう……なんですか?」
「ええ、これでも長い付き合いの私が言うんだから、それは間違いないわ」
「そうなんだ。それは嬉しいですね」
その言葉に、俺のテンションは一気にうなぎ登りとなったが、藤堂さんには気付かれないように、出来る限り平静を装って話した。
このテンションなら、前から気になっていたことも聞けるかもしれないな。
「あの、アイリーンさんって昔はどんな感じだったんですか?」
「あの子の昔?そうね、キャラ的には今とそんなに変わらないかもしれないわ」
「そうなんですか……昔からあんなに強かったんですか?」
「いいえ、少なくとも私が出会ったばかりの頃はあそこまで化け物じみた強さではなかったかな」
これまた意外な回答に頭の中が混乱する。
ということは、アイリーンさんはこの10年間やそこらであそこまでの強さを身に付けたということになる。
「そ、それじゃあどうやってあんな強さを身に着けたんですか?」
あの若さでどうすれば、そこまで強くなれるのか……
未だアイリーンさんの年齢は聞けてはいないのだが、俺ともそこまで変わらないように思える。
そんな若さでどうやったら、あそこまでの実力を身に付けられるというのか。
「聞きたい?」
「はい!是非聞きたいです!」
正直、興味はあった。
俺とそこまで年齢が変わらないはずのアイリーンさんが世界でも数えるほどしか存在しないSランク冒険者に名前を連ね、世間に名を轟かすほどの実力を身に付けているということに……
その回答によっては、俺ももっと実力を付けてアイリーンさんと肩を並べることも出来るのでは?
そうすれば、もっと相棒として相応しい存在になれるのんじゃないかと。
そんなヒントが少しでも得られればと思いながら、質問をしてみたのだが。
「それは……この世界に……正確にはダンジョンに対する『怒り』かしらね』
少し考えた末に藤堂さんが出した回答は、一瞬、聞き間違えたかと思うほどに俺の心臓を揺さぶった。
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