第33話 『星崩の大魔宮』㉓ 激震!アルカイド!
『セプテントリオン・ミザール』との決着を着けた直後、また別の空間に飛ばされてしまったようだ。
空間転移したその先には……
セイラさんと清十郎さんがいた。
何かとの戦闘を終えた直後のようで、二人とも息を切らせて疲労感を隠せないでいる。
「はあ……はあ……、もう!あなたたち今ごろ来て……遅いですわよ!」
セイラさんが俺たちに気付いて怒り出した。
「まあまあ、お嬢様、こうしてまた皆で無事に再会することが出来たんですから、喜びましょうよ。こうして私たちもモンスターの群れを全滅させられたんですから」
そう言ってセイラさんをたしなめる清十郎さんの背後には、夥しい量のモンスターの残骸が転がっていた。
漆黒の甲冑を着た巨人の残骸と、鮮やかな銀色の飛竜の残骸……
飛竜の方はともかく、もう片方には見覚えがあった。
「あの……この漆黒の甲冑を着たモンスターって……ひょっとして『アビスロード』ですか?」
「ええ、確かあなたたちが踏破した『深淵の回廊』のボスだったわよね、大した強さではなかったけれどもこれだけの大群だと、さすがに手強かったですわ」
えっと……
Sランクダンジョンのボスが大した強さではないと……
そうだ、アイリーンさんで麻痺してたけど、この人たちも人外だった。
〈ちょwあそこで大量に死んでるのって『アビスロード』じゃね?〉
〈すげー!どう見ても数十体はいるぞw〉
〈Sランクダンジョンのボスが雑魚扱いとか……〉
〈あのドラゴンみたいなやつって見た事ある?〉
〈さあ?でもあれもSランクダンジョンのボスなのかな?〉
〈ああ!あれって『シルバーウイング・ワイバーン』じゃね?〉
〈あの『銀翼の魔塔』のボスか!?確かセイラさんがインタビューで言ってたやつか!〉
〈そうだよ!特徴的に間違いないだろう!〉
〈ということは……あれだけの量のSランクモンスターをたった二人で……〉
〈清十郎さんも含めて人外魔境だよな……〉
〈俺たちの目線には『神速』さんしかいないよもう……〉
コメント欄が物凄いことになっている。
いや、俺も気持ちはわかるよ、わかり過ぎるさ!
間違いなく俺もそっち側なんだよ!
コメント欄を見つめながら挙動不審になっている俺を見つめるアイリーンさんは、いつも通りの笑顔を振りまいてくれている。
「ところで皆さん、残る『七星』は後一人、それを倒せばこのダンジョンも踏破できるはず……」
清十郎さんが場を引き締めようとしている。
……さすがだ。
「ええ、わかっていますわよ、それでその最後の一人はどこに行けば会えるんですの?」
腕を組みながら疑問を呈するセイラさん。
確かにそうだ、恐らくミザールの最後の力で飛ばされたこの空間は、見る限りの地平線が続き、通路も出口も何も見えない。
恐らくこのダンジョンの最後の敵でもある『セプテントリオン・アルカイド』の元へ向かうにはどうすれば良いのか、全く見当が付かなかった。
「……さて、どうしたものか」
しばらく考えたものの、有効な手段が全く浮かばず途方にくれる俺たち。
――その時だった。
不意に地面に振動が走る。
「何だ?地震か?」
いや、ダンジョンの中で地震など起こるのか?
そう考えていると、また振動が起こる。
その振動は、一度、二度と間を置いて地面を揺らしている。
「……?これは、一体何ですの?」
「わかりません、お嬢様、警戒を怠らないで下さい」
「アイリーンさん……これは」
「わかりません……が、何か来ます!」
アイリーンさんは何かの気配を感じるらしく、遠くの方へ視線を送りながら警戒を続けている。
そうするうちにも、振動は続き、徐々に間隔が短くなり、強さも増してきている。
そのうち、ズシンズシンと足音のような地響きに変わり、いつしか立っているのも辛くなってくるレベルの振動になっている。
「これは……まさか!?」
俺は考え得る中で最悪の想定をしたつもりだったが、どうやらそれは正解のようだった。
いつしか、地平線の向こうからこちらへ向かってくる巨大な影が見え始めた。
巨大な角を携えた全長五十メートルはあろうかという魔獣。
そしてその魔獣の頭上には、赤い髪の男が腕を組みながら立っているのが見える。
「……アルカイド!」
そう、あれは間違いなく、『七星』のボス『セプテントリオン・アルカイド』だ。
「わざわざあちらから出向いてくれるとは、有難いですわね」
セイラさんが腕をグルングルンと回しながら笑顔で迎える。
グランドダンジョン『星崩の大魔宮』――
ラストバトルが、今始まろうとしていた。
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