第27話 『星崩の大魔宮』⑰ 最高位神器
ハヤト、清十郎、セイラの三人とそれぞれが相対した『七星』との激闘の決着が着いた頃。
異なる空間では最後の一人である『紅蓮の魔女』ことアイリーン・スカーレットが同じく『七星』の一人と激闘を繰り広げていた。
「ふぇっふぇっふぇっ!やはり危ないおなごじゃのぉ!」
「いい加減しつこいですよ。ボルガニックレイザー!」
アイリーンが放った超高熱の閃光が小柄な老人に直撃する。
普通なら当たった瞬間に消滅してもおかしくないのだが……
「わしにはそんな攻撃効かんよ、そろそろ学んだらどうなんじゃ?」
その老人には微塵も効いた様子がなかった。
「おかしいですね……無効魔法ってわけでも無さそうですし……」
先ほどのセイラの相手だった『セプテントリオン・メグレズ』が使っていたような相手の魔法を無効化するようなスキルではないようだったが、アイリーンの攻撃を何らかの手段で防いでいるのは事実だった。
「何が何だかわからんみたいじゃのう?ほれほれ、次の攻撃はまだかえ?まあ、このフェグダには効かんがのう!」
そう言いながら老人の姿をしたアイリーンの相手、『セプテントリオン・フェグダ』は不敵に笑った。
「とりあえず、もう一度焼いてみましょうか。グランド・エクスプロージョン!」
フェグダが笑っているのを無視してアイリーンが杖を振るう。
「おお?一体何をし……」
その瞬間だった。
フェグダの胸元の辺りで火花がバチィッと光ったかと思えば、辺り一帯を巻き込む大爆発が巻き起こった。
フェグダは声を上げる間もなく一瞬で爆散し跡形も無く吹き飛ばされてしまった。
「……ふう、これならさすがに」
「いやいや、甘いぞい!」
しかし、爆発の粉塵が晴れた後には、元気な姿で立っているフェグダの姿が現れた。
「……一体、どうして?」
「ふぇっふぇっふぇ!わからんじゃろう?そうじゃろう?このフェグダにそんな攻撃は無駄なんじゃぁ!」
フェグダは両手に鉤爪を装着し、その老体に見合わない軽快さでアイリーンに向かって飛び掛かってきた。
「……っく!」
アイリーンは杖で鉤爪を受けるが素早さで勝るフェグダの攻撃は防ぎきれない。
何とか攻撃を防ぎきり、距離をとった頃にはその体に数ヵ所の手傷を負ってしまっていた。
「お前さんは、やはり短期集中型じゃな。その有り余る火力で相手を瞬殺してしまうのがお前さんのスタイル……その火力が通じない相手には何も出来んのじゃろうて……このワシの様になぁ!!!」
両手の鉤爪を胸元に交差させながら再び飛び掛かってくるフェグダ。
アイリーンはすかさず杖を目の前に掲げながら鉄壁の魔法を発動する。
「プロミネンス・ウォール!」
真紅の障壁がアイリーンを中心に展開され、フェグダの攻撃を防ぐ。
フェグダは何とか障壁を突破しようと連撃を叩き込むが、真紅の障壁には傷一つ付けることは出来なかった。
「……ふん、わしの攻撃を防ぐためとはいえ、そんな大袈裟な魔法を使うとは、もはやジリ貧じゃな」
鉤爪を目の前でジャリジャリと擦りながらフェグダがにやにやと笑う。
フェグダがからすれば、自らの通常攻撃を満足に回避すらできず、強固な障壁を展開するしか防御手段がなくなっている状況のアイリーンの姿は、滑稽にすら見えているのかもしれない。
「……何をさっきからごちゃごちゃと言ってるんですか?」
……しかし、アイリーン本人は全く違う考えを持っていた。
「お爺さんがニヤニヤしながら近付いてくるのが気持ち悪かったからバリア張らせてもらったんですけどね。お気に召しませんでした?」
ニッコリと微笑みながら直球でぶつけられた言葉にフェグダのこめかみがぴくぴくと震え始めた。
「なんじゃとぉ!?言うに事欠いてワシを気持ち悪いとは……許さんぞぉ!」
「あらら怒っちゃいましたか?そんなに怒っちゃ体に障りますよ?おじいちゃん?」
「黙れ貴様ぁ!」
その言葉に即座にブチ切れたフェグダが鉤爪を振り上げながら飛び込んでくる。
「……イグナイト・ブレイド」
アイリーンが杖に魔力を込めると、杖の先端から炎の刃が形成されていき、巨大な炎の大剣となった。
「はああああ!」
そのまま炎の大剣を振りかぶり、こちらに向かってくるフェグダに向かって思いっ切り振り下ろした。
――大剣の切っ先から、凄まじい勢いの大炎が巻き起こりフェグダを飲み込む。
「ぬ?ぬおおおおおおお!!!!」
余りの火勢に吹き飛ばされながらその身を焼かれていくフェグダ。
「ぐぬぅぅ!……効かんわぁ!!!!」
全身を炎に焼かれながらも瞬時に態勢を整えてこちらに向かってくるが、アイリーンは更に大剣を横薙ぎに振り抜き追撃を加える。
更なる炎の濁流がフェグダを飲み込み、身を焦がし始める。
「がああああ!熱い、熱いぞぉ!!!!」
体を焼かれながらも立ち向かってくるフェグダに向かって何度も何度も炎の大剣を振り、攻撃を加えるアイリーン。
フェグダは吹き飛ばされ、体を焼かれながらもその度に立ち向かってくるが……
「さて、そろそろやめときましょうか」
不意に攻撃を止めるアイリーン。
「何じゃ?弾切れか?他愛ないの」
炎の中から無傷で現れるフェグダ。
その姿を視認した後にまたニッコリと微笑みながらアイリーンが述べた言葉は。
「いえいえ、今の攻撃であなたの能力がわかりました」
その言葉に一瞬真顔になるフェグダだったが。
「ふぇっふぇっふぇ、またそんなハッタリを言いおってからに」
すぐに余裕の笑顔を取り戻す。
「あなたの能力は……」
しかしその笑顔を遮るようにアイリーンは言葉を続ける。
「『超再生能力』……ですよね」
アイリーンが断言したその言葉に、やはりフェグダの笑顔が消えて……
「ほお、よくわかったの」
「ええ、今の連撃でわかりました。私の炎はあなたに通じていないわけではなかった。確実にあなたの体を焼いていましたが、次の瞬間には復活している。ということは答えは一つ、異常な回復力を持っているということですね」
「……ふん、正解じゃな、褒めてやるわい。しかしワシの能力がわかったからと言ってどうすんじゃ?対策があるわけでもあるまい!」
自らの能力を暴かれながらも開き直るフェグダにアイリーンは再び言葉を続ける。
「いえ、あなたの能力が『超再生能力』ならば対抗手段はいくらでもありますよ」
自らの杖を目の前に差し出しながらこう言った。
「この最高位神器『炎帝器・エクスイフリート』があればちょちょいのちょいですよ」
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