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『紅蓮の魔女』と『神速の配信者』  作者: 我王 華純
第一章 誕生『神速の配信者』
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第25話 『星崩の大魔宮』⑮  魔拳王

 Sランク冒険者『蒼氷の聖女』こと星羅・バーンシュタイン。


 彼女は一般的には氷系統の魔法を扱う魔導士系統の冒険者と認識されている。

 言ってしまえば『紅蓮の魔女』、アイリーン・スカーレットと同種、膨大な魔力で火炎系統の極大魔法を際限なく連発してしまえるような存在、それの氷系統タイプという認識だ。


 彼女のスキル『蒼氷』は、氷系統の魔法の威力を跳ね上げる効果を持っている。

 そのため、世間的にはそのような『誤解』が生じるのも無理はないだろう。


 しかし、一度でも彼女の本気の戦闘を目撃したものは口を揃えてこう言うだろう。


 それは間違いだ、と。


 「さあ、久しぶりのわたくしの本気、受け止めて下さるかしら?」


 そう呟いた瞬間だった。

 目にも止まらぬ速さの踏み込みと共にメグレズの眼前に移動し、そのままの勢いで拳を叩き込む。


 「うわっとぉ!?」


 メグレズは咄嗟に両手剣で防御したため、セイラの拳が巨大な刀身にドスン!と突き刺さる。

 思わぬ強力な一撃に両手剣ごと弾き飛ばされるメグレズ。

 辛うじて着地すると、驚嘆の表情でセイラを見つめる。


 「ええー、お姉さんもそんな感じなんですか……ものすごく萎えるんですけど」

 「あらあら、この程度で驚かないでくださる?お楽しみはこれからですわよ!」


 そう言いながら自らの拳に魔力を集中させるセイラ。

 いつしかその拳は氷の魔力を纏い、青白い光を放ち始める。


 彼女の職業は『魔拳王』、魔力を自らの体術に乗せて戦う『魔導拳士』系統の最上位、超級職である。


 その風貌や、言動、雰囲気などから誤解を生みやすいが(彼女の場合わざとそうしている節さえあるが……)全力での戦闘時のスタイルは間違いなく近接戦闘スタイルである。

 従者であり相棒の轟清十郎と共に前線で暴れまくるのが本来の彼女たちの姿。


 『蒼氷の聖女』と『龍殺の守護者』の本領なのだ。


 「……さあ、行きますわよ!ハァアアア!!!!」


 更に魔力を集中し始める。

 彼女の職業である『魔拳王』の本領は、魔力と闘気の融合にある。

 鍛え上げられた体術に魔力を載せることにより、強力無比な攻撃を繰り出せる『魔導拳士』、その攻撃方法に更に闘気の要素を組み込むことにより、攻撃力を更に増幅させることが可能なのが『魔拳王』だ。


 セイラは元々、強力な氷系統の魔法を操る優秀な魔導士だった。


 ……しかし、天才では無かった。


 同じく炎系統を操る魔導士系統で化け物のような才能を誇る、アイリーン・スカーレットとは違い、強力な魔法は操れど、そこ止まりの才能しか持ち合わせてなかったのだ。


 代々、天才の血筋として知られたバーンシュタイン家において、この事実は死活問題。

 セイラの将来に置いては、もはや将来は閉ざされたと言っても過言では無い程の事実だった。


 しかし、セイラはあきらめなかった。


 自ら血の滲むような努力を繰り返し、魔力と体術を組み合わせることが出来る『魔導拳士』に活路を見出したのだ。

 元々、秀才止まりとは言え、並外れた魔力を持ち合わせていたセイラはそこからメキメキと力を付け、努力を怠った魔導士程度ならば問題にならない強さを得ることが出来た。

 『魔導拳士』の完成型と言われる『魔拳王』になった後は、バーンシュタイン家でも異例の出世を遂げ、Sランク冒険者として名声を得るようになると今や当主に迫るほどの地位と実力を兼ね備えている歴代屈指の強者となったのだ。

 

 そんな『蒼氷の聖女』の全力が……


 『セプテントリオン・メグレズ』に文字通り叩きつけられようとしていた。


 「覚悟はよろしくて?……行きますわよ!『聖氷合体・氷結地獄コキュートス!』、ハアアアア!!!!」


 彼女の全身が青白い光に包まれ、周囲の空間の気温も一気に下がり始める。


 メグレズの周囲も凍てつき始め、無機質な床がスケートリンクの様に凍結してしまう。


 「もう!寒いの苦手って……言ってるじゃないですかぁ!」


 メグレズは膨れっ面をしながらその場で両手剣を振りかぶり凍結した地面に向かって全力で振り下ろした。


 剣が地面にめり込むと同時に轟音が鳴り響き、凍結した地面に大きな亀裂が走る。

 その亀裂はまるで生きているかのようにセイラへ一直線で向かっていく。


 『重断剣・グラビティ』の必殺技、『グランドインパクト』。


 全力で地面へ向かって一撃を見舞うことで、意志を持ったかのような亀裂を相手に向かって放つことができる。


 その亀裂は、セイラ目掛けてどんどん亀裂を増やしていき、とうとう目標の眼前まで迫りそのまま飲み込まんと大きく口を開けたが――


 「甘いですわぁ!」


 その瞬間、セイラが地面に拳を撃ち込む。

 青白い光を纏った拳撃は即座に凍結し動きを止める。


 「ええー!?そんなんありなんですか!?」


 目の前で起こったことへの理不尽さに怒りを隠せないメグレズに対して、得意げに微笑むセイラ。


 「まあまあ、次はあなたの体に直接この拳を……」


 再び青白い光を全身から放ちながら宣言する。


 「ぶちこんでやりますわ!!!!」


 指先をビシィっとメグレズに向けて華麗に勝利宣言を行うセイラなのであった。

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