第23話 『星崩の大魔宮』⑬ 星炎龍
『滅龍刀・銀嶺』
以前、星羅・バーンシュタインと共にSランクダンジョン『銀翼の魔塔』を踏破した際に報酬として獲得することが出来たこの刀は、今や轟清十郎の代名詞ともなっている。
ドラゴン系統のモンスターに絶大な効果を発揮するスキルである『龍殺』で知られているが、未だ謎に包まれているところも多い。
誰もが知っている地龍討伐時に使用されたのは、白銀の光を刀身に纏いながら戦うオーソドックスな使用法のみだった。
世間を恐怖のどん底に陥れた地龍を白銀の光を放ちながら鮮やかに斬り伏せた様子は、ネットで配信され伝説の動画として世に知られている。
その功績を讃えて彼はこう呼ばれるようになる。
『龍殺の守護者』と……
そして、その『龍殺の守護者』が全力を出す時に使用されるのが、『銀嶺』の解放である。
地龍退治の時でも使用されなかった『銀嶺』の全解放。
それは即ち全開の『龍殺』の発動。
ドラゴン系統のモンスターなら触れるだけで命を散らす程の効果を発揮する、正に龍退治の奥義といえる領域のスキルである。
ただし、当然ではあるが、使用にあたってリスクは存在する。
それは使用者の命を文字通り削ることだ。
『銀嶺』を全解放した状態では、並の冒険者ならば3分も経たずにその命は尽きてしまうだろう。
歴戦の猛者であり、Aランク冒険者でもある清十郎は、並の人間よりも遥かに高い生命力を持ち合わせているが、それでも10分程度で限界はきてしまう。
ボスフロア前のセーブポイントにてセーブは済ませているため、本当に死ぬわけではないが、またセーブポイントに戻されてしまうというリスクは孕んでいる。
しかし、そのリスクを踏襲しながらなお、『銀嶺』の全解放を選択した。
全てはセイラの助けに向かうためにだ。
全解放された『銀嶺』からは今までとは比較にならない程の濃密な光が放出されている。
そして、同時に清十郎の命が削られ始める。
体力がどんどん『銀嶺』に吸収されていくような倦怠感が全身を襲い始めた。
「……さあ、さっさと決着を着けるぞ!」
そう呟いた清十郎に呼応するかのようにさらに『銀嶺』が多量の白銀の光を放ち出し、もはや神々しささえ醸し出し始めているようだ。
「はぁぁ!!!!」
清十郎が刀を振り上げ駆け出した瞬間、刀身を包む光が白銀に燃え上がる。
相変わらず『銀嶺』に命を吸われる感覚は継続しているのだが、それを上回る高揚感が清十郎を支配する。
「覚悟ぉ!!!!」
「グルルルゥアア!!!!」
再度、清十郎とアリオトが交差する。
次は、『銀嶺』の刀身とアリオトの強靭な爪の激突だ。
バチバチィ!と白銀の光とアリオトが纏う炎が弾ける音がする。
二人を中心に凄まじい衝撃が走り、無機質な地面に亀裂が走り出した。
しかし、勝ったのは全解放状態の『銀嶺』だった。
アリオトの爪を斬り裂き、そのまま剛腕ごと切断してしまう。
「グゥウ!!!!……ガァアアアアア!!!!」
一瞬苦痛に顔を歪ませたアリオトだったが、すぐに体勢を立て直し、近距離でブレスを放ってくる。
「今さら、そんなものでぇ!!!!」
アリオトの最後の抵抗とも言える全力のブレスに対して、清十郎が選択した行動は突貫だった。
超高温のブレスではあるが、白銀の光で守られた清十郎には届かない。
放たれ続けるブレスの中から光を纏った清十郎が飛び出て、そのまま斬撃を見舞う。
白銀の光が綺麗な弧を描きながらアリオトの首にめり込みそのまま通り過ぎる。
アリオトはその瞬間に身動き一つ取らなくなった。
華麗に身を翻しながら着地を取った清十郎の傍らに、どさりと何かが落ちてくる。
――それはアリオトの首だった。
見開いたままの赤い瞳と目が合う。
しかし、既にその瞳からは意志の力は全く感じられなった。
頭部を切断された胴体がドスン!と地響きを立てながら地面に倒れ伏す。
「ふう……」
全解放状態を終了させ、普通の状態に戻った『銀嶺』を鞘に納める清十郎。
この瞬間、『七星』の一角、『星炎龍・セプテントリオン・アリオト』が『龍殺の守護者』によって討伐されたのだった。
少しでも面白いと思って頂けましたら、評価をお願いします。下にスクロールすると評価するボタン(☆☆☆☆☆)があります。
ブックマークも頂けると非常に喜びますので、是非宜しくお願い致します。
良ければ、感想もお待ちしております。
評価や、ブックマーク、いいね等、執筆する上で非常に大きなモチベーションとなっております。
いつもありがとうございます。




