第35話 リザルト【新たなグランドレガリア】
『おめでとうございます!現時刻を持ちまして、グランドダンジョン『鬼皇の死都』が踏破されました。今回の踏破者は多数おられますので割愛させて頂きます。今回はMVP以外の方は全て同一の報酬となります!』
ミズキが奇跡の生還果たした数分後に唐突にアナウンスが流れ始める。
なるほど、今回はスタンピードを阻止した形となるが、基本的には
『それでは、これから『星崩の大魔宮』踏破者へ特典報酬の贈呈に入ります!』
『踏破者:スタンピード討滅参加者全員』
獲得経験値 500000
獲得アイテム 【ラストエリクサー】×2
『МVP報酬対象者……村雲ミズキ』
ダンジョンボス『大凶丸』戦において、最後の一撃を与え、討伐に貢献した。
獲得アイテム 最高位神器 【羅皇刃・大凶丸】
『以上を持ちまして、グランドダンジョン『鬼皇の死都』踏破の報酬贈呈を終了します』
『……また、今回の踏破を持ってグランドダンジョン踏破数が七となりました』
『【ファイナルダンジョン開放】まで、残りグランドダンジョン踏破数――――五』
……スタンピード発生による大激戦が終わり、リザルトがアナウンスされた。
今回は、スタンピード参加者全員に均等に経験値とラストエリクサーが配布されることとなったらしい。
確かに、同じグランドダンジョンといえ、今回のスタンピードは参加人数が桁違いだ。
個別の功績を細かく評価するより、全員に一律で報酬をばらまくほうが妥当なのだろう。
そんなことを考えていた矢先だった。
――ゴゴゴゴッ……!
地響きのような振動とともに、ミズキの足元に黒い霧が渦を巻き始める。
まるで何かを呼び起こすように、霧は次第に濃く、重く、形を帯び――やがて巨大な影が地面からせり上がった。
「えっ……な、なにこれ……!?」
「で、でかい……刀……?」
プレイヤーたちが後ずさる中、暗雲を裂くように現れたのは、刃の長さだけでミズキの身長を軽く超える巨大な刀――
それはグランドレガリア【羅皇刃・大凶丸】だった。
黒鉄の刀身は脈打つように赤い文様を光らせ、まるで呼吸しているかのようだ。
次の瞬間、その刀身に走った赤光が一点へ集束し――
『……ああん?やっぱりお前が俺の持ち主になるってのか?』
唐突に刀から声がした。
「しゃ、喋ったあああああ!?」
周囲のプレイヤーが口々に叫ぶ中、ミズキ本人はというと――
「え……ええぇ……!これ、私が持つんですか?」
困惑しつつも、震える手をそっと伸ばし、刀身へ触れた。
赤い文様が脈打つように明滅し、大凶丸は低く唸るように言葉を紡ぐ。
『……チッ。まあいい。認めてやらァ。』
「え……認めてくれるんですか?」
『ああ、曲がりなりにも俺にとどめを刺しやがったんだ……それに最後の一撃は悪くなかった、その度胸と根性……嫌いじゃねぇ』
刀身がわずかに震え、まるで鼻で笑うかのような気配すら漂わせる。
『だがな――』
「はい?」
『足を引っ張るんじゃねえぞ?』
威圧感たっぷりの声音。
しかしミズキは、一瞬だけ驚いたものの、すぐに胸を張り――
「……はい!頑張ります!!」
満面の笑みで答えた。
その瞬間、刀身の文様がふっと柔らかい光に変わった。
『……チッ、まあ、元気だけはあるな、せいぜい俺を振り回すんじゃなく、使いこなすことを意識しろよ――いいな、新しい相棒。』
「うん!よろしくね、大凶丸!」
ミズキが嬉しそうに抱え上げると、周囲のプレイヤーたちは羨望と驚愕の混じった視線を向けた。
「……マジかよ、喋る神器とか聞いてないんだが……」
俺のセプテントリオンやアイリーンさんのエクスイフリート、セイラさんのアークセラフィエルももちろん人語を話す機能は持っていない。
意思を持った神器、まさに前代未聞と言えるだろう。
しかも、それが村雲ミズキの手に渡るとは……
そんな周囲の動揺をよそに、ミズキの胸の内はまったく別の色で満ちていた。
(……よかった……本当に、よかった……!)
奇跡の生還。
スタンピードの阻止。
そして、大凶丸との邂逅。
そのどれもが、誰かの役に立てたからこそ掴み取れたものだ。
(みんなを守れた……力になれた……!そしてこの武器があれば、もっと――)
ミズキは大凶丸の柄をぎゅっと握りしめる。
『……なんだ、その顔は?ニヤけてんじゃねぇ』
「えへへ……だって、嬉しくて!」
『……ったく、まあ……悪かねぇけどよ。』
大凶丸は不満そうに唸って見せながら、赤い文様をほんの僅か柔らかく光らせた。
(闇鍋騎士団の団長として……もっとみんなの支えになれる。炎上系とか言われてもいい。少しでも人の役に立てるなら、私は――)
ミズキの視界が開けるように晴れ渡っていく。
自分の力が誰かの助けになる。
この神器を持てたことで、きっともっと守れるものが増える。
「よーし……団長として、もっと頑張らなきゃね!」
高らかに宣言するように、ミズキは大凶丸を肩に担ぎ上げた。
その姿は、まさに一流の冒険者そのものだった。
スタンピード阻止の立役者ともなれば世間の評価は一気に上がるだろう。
これで炎上系クランと揶揄される闇鍋騎士団も精一杯胸を張りながら活動することが出来るだろう。
そして――
「団長ぉぉぉぉ!!」
「ミズキ、生きてた!よかった……!」
「うお、似合うじゃん、そのデカい刀!」
闇鍋騎士団の団員たちが、涙と笑顔を入り混じらせながら駆け寄ってきた。
ミズキは振り返り、彼らに向かって胸を張る。
「みんな、ただいま!これからもっと頑張るから、よろしくね!」
新しい神器を携え、仲間に囲まれながら、
村雲ミズキはまっすぐ前を向いた。
闇鍋騎士団とともに進む、その未来へ――。
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