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『紅蓮の魔女』と『神速の配信者』  作者: 我王 華純
第三章 地獄の鬼たちと新たな希望
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第24話 『蒼氷の聖女』 VS 『鬼蜘蛛』白織


 舞台は更に、輝柳斎と朱天が戦っていた場所とはまた違う戦場へと移る。


 そこで戦っていたのは……


 「だらっしゃぁあですわぁ!」


 「ぐう!くそっ、くそっ、くそぉおお!こんなはずじゃなかったのにぃ!」


 セイラの攻撃をまともに受けてしまった白織が、口惜しそうに後退していく。

 Sランク冒険者『蒼氷の聖女』セイラ・バーンシュタインと、四天王の一人『鬼蜘蛛』白織との激戦が繰り広げられていた。

 もちろん、その脇には『龍殺の守護者』轟清十郎が控えており、常に白織の動向へ鋭い視線を送り続けている。

 白織にとっては、その清十郎の視線自体が牽制となり、思うように戦えないため、結果としてセイラに対しての強力な支援となっていた。


 「生意気な人間めぇ!これでも喰らえぇ!」


 白織が繰り出すのは、先程までと比較しても比べ物にならないほどの大量の糸だった。

 大量の糸を吐き出したかと思うとそのまま束ねてしまい、まるで白い龍が空を旋回するかのように操りながら、セイラへ向けて放つ。


 「そんな攻撃が……このわたくしに通用すると思ってますの!?」


 しかし、セイラには通用しなかった。

 素早く身を翻しながら糸の攻撃を回避しつつ、凍気を纏わせた拳を一気阿世に叩き込む。

 束ねられた糸は凍気によって瞬時に凍結し、セイラの拳で粉々に粉砕されてしまった。

 自らの攻撃をあっさりと防がれてしまった白織は、ワナワナと怒りに震えながらも次の手を繰り出そうと動き出す。

 

 「ならば……私の奥の手を見せてあげるわよ!」


 白織がその場で屈むような姿勢を取ると、纏う着物の背中の部分が脈動を始め、奇妙に膨らみ始める。

 やがて、着物がその膨張に耐え切れなくなり、弾けるように破けると、そこから現れたのは不気味に蠢く蜘蛛の腹の部分だった。

 黒と黄色のまだら模様を備えたその腹の部分をよく見ると、何やら卵のようなびっしりと付着しているのがわかる。


 「さあ、私の可愛い子供たちよ、あの糞女を食い殺しておしまいぃ!」


 白織のけたたましい絶叫と同時に、一斉に卵が孵化を始め、その中から小型の蜘蛛たちが大量に這い出てくる。


 「き、気持ち悪いですわぁ……」


 一匹一匹が小型犬ほどの大きさの蜘蛛が、カサカサと重なりながら動く様子はセイラの精神に多大な負荷を与えているようだった。

 

 「はっはっはぁ!こんな可愛い子供たちの魅力がわからないとはね!さぁ、あいつを餌にしておやりぃ!」


 「こんなものこうしてやりますわぁ!『ヘル・スノーストーム』!」


 迫りくる蜘蛛の群れに対して、セイラが選択した迎撃方法は、得意の魔拳ではなく最上級氷結魔法だった。

 やはり、蜘蛛の群れに対して近接戦闘は挑みたくはなかったのだろう。


 セイラが放った魔法は、強烈な猛吹雪となり蜘蛛たちを一瞬で凍結させ、絶命させてしまった。

 

 ……が、セイラにとっての苦難はまだまだ続く。


 「まだまだこんなものじゃないわよ!ホラホラホラホラァ!」


 白織の巨大な腹にはまだまだ卵が張り付いており、そこから新たな蜘蛛たちが際限なく湧き出るように産み出されていく。


 「ひえええー!さすがにギブですわぁ!清十郎!」


 「はっ!後はお任せください」


 新たな蜘蛛の大群の襲来に、精神が限界を迎えてしまったセイラのサポートに清十郎が向かう。

 解放し銀色の光を纏った『銀嶺』で蜘蛛たちを一気に斬り払っていく。


 「貴様ぁ!邪魔をするなぁ!」


 清十郎の参戦で自らの子供たちが凄まじい速度で葬られていくことに、我慢ができなかったのか、白織が憤怒の形相で襲い掛かってくる。

 体から伸びた巨大な蜘蛛の脚を振り上げ、清十郎を狙ってくるが……


 「残念!あなただけならば、全然怖くありませんわ!」


 その側面から、精神を持ち直すことに成功したセイラが迫る。

 鋭い踏み込みの勢いのまま、全力の魔拳を白織のがら空きの横っ腹に叩き込んだ。


 「ぐはぁっ!」


 セイラは、悶絶しながら吹っ飛んでいく白織を満足気に見つめながらも、再びその拳に青白い凍気を宿らせ始めると、更なる追撃のために力を込める。


 「これで……トドメですわぁ!」


 彼方へ飛んでいく白織を追い掛けるように、地面を蹴り出した瞬間、拳の凍気が全身に広がっていく。


 『氷結地獄コキュートス……第三階層トロメアァ!!!!』


 そして、セイラの背中に出現するのは、光の翼。

 天使の如き神々しさを放つ翼を背負ったまま、一気に加速し白織へと迫る。


 「はああアアアア、ですわぁああああ!!!!」


 地面と平行に吹き飛び続ける白織の真上へと到達すると、その顔面へ全力の魔拳をぶち込み、そのまま地面へと叩きつけた。

 凄まじい衝撃が走り、超低温の拳を白織ごと叩きつけられた地面は隆起しながら即座に凍結してしまう。

 その結果として、そこに完成したのは巨大な氷の柱だった。

 そして、その柱の中心部には、頭を下にした状態で凍結している白織の姿が見える。


 「蜘蛛の氷漬け、一丁上がりってとこですわね」


 見事な作品を背後に、セイラはニッコリと微笑みながら華麗な着地を決める。


 セイラと清十郎のコンビが、『鬼蜘蛛』白織の討伐に成功した瞬間だった。


 「よっしゃぁああ!山吹ぃいいい!聞こえるかァアアアア!!!!俺も我慢の限界だぁ!そろそろ力を解放・・・・するぜぇえええ!!!!」


 しかし、その時に聞こえてきた絶叫により、事態は急展開を迎える。

 氷柱の中に閉じ込められているはずの白織の体が発光を始めたのだ。

 

 「こ、これは……一体何が起こってますの?」


 順調に四天王の一人を退治したはずの二人だが、新たに引き起こった現象に、ただただ驚嘆することしか出来なかった。

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