第17話 激突!
今回で今作の100話目となります。
いや、やればできるものですね。
ここまで読んで下さった皆様には、頭が下がる想いで感謝しかございません。
本当に、本当にありがとうございます!
未だ道半ば、これからもよろしくお願いします!
とうとう決戦の火蓋は切られた。
鬼の大軍勢が一斉に冒険者たちに向かって進撃してくる。
その中でも一際目立つのは、騎馬型の鬼のモンスターの一団だ。
恐ろしい形相の巨大な馬のモンスターに跨り、全身を鎧で固めた鬼の集団が物凄いスピードで他の集団より一歩先んじて前に出てくる。
それぞれが突撃槍を持ち、切っ先を前に突き出しながら突進してくる。
あれだけの勢いで突進されれば、並の軍隊ならば一溜まりもないだろう。
そう、並の軍隊ならば……
冒険者側で前に出るのは、六人の集団だった。
クラン『九頭竜』のメンバーだ。
先頭に立つのは、全身鎧の大柄の男。
『鉄騎竜』の黒鋼だ。
漆黒の大盾を構え、突進してくる騎馬鬼の集団に備える。
それぞれが得意分野を持ち、その道のエキスパートが揃っている『九頭竜』の中で、黒鋼はタンク職のエキスパートとして君臨している。
まず、彼が先頭で敵の攻撃を受け、防ぐことで他のメンバーの攻撃の隙を作り出す。
これこそが『鉄騎竜』に与えられた役割だった。
その彼が、冒険者の最前線で体を張り、敵の突進を防ごうとしていた。
そこへ、騎馬鬼の集団が躊躇なく突進してくる。
騎馬鬼たちが構えるランスと黒鋼が構える漆黒の大盾が交差した瞬間――
「ぬうん!」
ガキィィン!と激しい衝突音と共に何かが四方八方へと飛び散るのが見える。
それは、激突の衝撃で砕け散った騎馬鬼たちの破片だった。
あまりの衝撃に耐え切れず、馬のモンスター共々粉々に砕け散ってしまったらしい。
一方の黒鋼は、見事衝撃に耐え切り、無傷で仁王立ちをしている状態だ。
見事敵の初撃を防ぎきると、次はこちらの番だと他の竜が動き出す。
「よっしゃぁ、さすがだぜ!」
すかさず『爆炎竜』の不知火が飛び出し、両手からありったけの火球を放つ。
連続で何発も放たれる火球は、騎馬鬼の後続に控えていた鬼たちに命中し、豪快に爆発、一気に吹き飛ばしていく。
しかし、不知火の攻撃はかなり大雑把なものであり、その間隙を縫って鬼たちが再び進軍を開始するが……
その時、ヒュカァン!と快音が鳴り響き、一匹の鬼が頭を撃ち抜かれ崩れ落ちた。
「……!?」
突然の出来事に、周囲の鬼が警戒態勢を取る……が既に遅かった。
さらに襲いくる何かが、次々と鬼たちの頭を正確に射抜いていく。
容赦なく増えていく仲間の死体に、鬼たちの表情が歪む。
その正体は弓矢での一撃。
『九頭竜』の一人、『星穿竜』飛燕による弓による射撃だった。
「ふんふん~♪さあさあ、どんどんおいで、全員即死させてやるからさぁ」
鼻歌混じりに放たれ続ける正確無比な射撃は、次々と鬼たちを射抜き即死させていく。
黒鋼が敵の攻撃を受け止め、不知火が絨毯爆撃を行い、残った者も飛燕の射撃で処理される。
これが『九頭竜』の必勝パターンの一つだった。
そして、もう一人忘れてはならないのが……
「この戦いの一番槍は『九頭竜』が頂いた」
混乱の最中にある最前線に槍を持ち飛び込む者がいる。
「雷装……武御雷」
『九頭竜』のクランオーナーである『雷迅竜』武雷が体に雷を纏い、華麗な槍捌きで次々と鬼を撃破していく。
彼はAランク冒険者の中でも国内屈指と言われる実力者と言われており、単独の戦闘力は『九頭竜』の中でもダントツに高い。
不知火と飛燕の攻撃で混乱の最中にある前線で、冷静に、そして迅速に鬼たちの命を刈り取っていく。
そこへ鬼たちの新手が迫る、次に襲来するのは弓を持つ鬼の集団だ。
近距離ならば武雷の槍には敵わないが、それなら遠距離攻撃にて彼を狙おうという魂胆のようだ。
すかさず、飛燕が射撃で迎撃しようと試みるが、相手は数十匹にも及ぶ集団、全て迎撃するにはとても手が足りなかった。
「紺鉄式ライフル『モード・レッド』一斉射撃準備……ってぇえええええ!!!!」
そこへ突如として銃撃による一斉射撃が入る。
射撃を行ったのは、ダンジョン統括省所属の軍隊だ。
『紺鉄』に標準装備されている対モンスター用ジェム内蔵ライフル、通称『紺鉄式ライフル』
文字通り、弾丸の代わりにジェムが内蔵されており、その効力を弾丸のように発射することが可能な、対モンスター用の秘密兵器だ。
通常の弾丸であれば、モンスター相手には無力だが、ジェムであれば効果は絶大であり、しかも使い捨てで装填も容易だ。
今回使用されたのは『モード赤』と呼ばれる炎のジェムを撃ち出す機能だ。
数十発の炎の属性を持つ赤い弾丸が飛び交い、弓を持つ鬼の集団に着弾、一斉に燃え上がり殲滅していく。
「次弾装填、『モード・イエロー』準備せよ!」
軍隊の部隊長の指示で隊員たちは次なる攻撃用のジェムの装填を急ぐが、そこを狙って一体の朱い影が迫る。
四天王の一人『朱天』だ。
素早い身のこなしで隊員たちを狙い刀を構えて迫ってくる。
「お主の相手は……儂じゃよ!」
朱天の前に躍り出るのは輝柳斎だ。
引退から復帰したばかりとは思えないほどのスピードで、朱天に斬り掛かる。
「むう?何奴?」
当然、朱天も刀を合わせる。
ギィン!と激しい金属音が鳴り響き、お互い鍔迫り合いの形となった。
「ほう……お主、なかなかやるのう。どうじゃ、儂の弟子にでもならんかの?」
「ふ、ふざけるなぁ!」
輝柳斎の飄々とした態度に激昂した朱天が、激しい連撃を繰り出すが、その全てを見事な刀捌きで防がれてしまう。
朱天と輝柳斎、お互い刀を得意とする侍同士、鬼の力と熟練の技術の戦いが開始されようとしていた。
「よし……よし!行けるぞ、俺たちはこのまま敵の戦力を削るんだ!」
『金剛の刃』と『闇鍋騎士団』は、正面から敵の戦力を削る役割についている。
お互い、見事な連携を見せながら順調に敵の数を減らしていくが……
「ふうん、あなたたち、あまり調子に乗らないでよねぇ」
そこへ四天王の一人、白織が迫る。
既に全身から蜘蛛の脚を生やしながらカサカサと蟲のような動きで冒険者たちへと向かってくる。
「あなたの相手は、わたくしがしますわよぉ!」
そう叫びながらセイラが白織に飛び蹴りを放つ。
白織対策として待ち構えていたのはセイラだった。
「ちぃ!またお前かぁ!お前たち、出番だよぉ!」
再び相まみえたセイラに向かって、憤怒の形相を見せながら白織が呼ぶのは、自らの眷属たちだった。
鬼蜘蛛の集団が白織の代わりに冒険者たちの元へ向かおうとする。
「甘いですねぇ!お嬢様がいるところには……私が控えているに決まってるではありませんか!」
その鬼蜘蛛たちは清十郎による銀嶺の斬撃で真っ二つにされてしまう。
自らの眷属を一撃で葬り去られた白織は、額に青筋を浮かべながら怒りに震えている。
「さあ、あなたも観念しなさいな!」
このスタンピードの初期からぶっ続けで戦っている二人ではあるが、未だ疲労の色は見えない。
やっと訪れた反撃フェーズ、二人のテンションは先ほどから上がり続けている。
セイラと清十郎に与えられた役割である四天王『鬼蜘蛛』白織の討伐。
その役割を全うすべく『蒼氷の聖女』と『龍殺の守護者』が全力で戦いを挑もうとしていた。
◆
冒険者たちと鬼の軍勢が入り乱れている最前線とは少し離れた場所で蠢く不穏な影がある。
四天王の一人、黒曜だ。
黒曜は『影法師』で生み出した分身たちを引き連れて、冒険者たちに気付かれないように移動中だ。
その狙いは、冒険者たちへの挟み撃ちにある。
山吹の指示により、正面から他の鬼たちが戦っている間に背後へ周り、前後から冒険者たちを挟撃する心積もりのようだった。
しかし、黒曜に対する備えも万全だった。
「ボルガニックレイザー!」
突如として放たれた超高熱の閃光が黒曜に迫る。
「……!?」
黒曜は辛うじて閃光を回避できたが、その後ろにいた分身たちが閃光に巻き込まれ、一瞬で蒸発してしまった。
まだまだ分身の数は多いが、今の攻撃でかなりの数が減少してしまった。
「……っ!」
黒曜に相対するは『紅蓮の魔女』アイリーンだ。
アイリーンの姿を視認した黒曜は、分身たちへアイリーンを排除するように指示を出す。
指示を受けた途端に一気にアイリーンへ向けて突進を始める分身たち。
「させるかよぉ!『アリオト』ォ!」
叫び声と共に分身の頭上から輝きを放つ炎が降り注ぐ。
輝く炎を放った張本人は、目にも止まらぬスピード、即ち『神速』でアイリーンの前に着地する。
『神速の配信者』草薙ハヤトが、七色の光を放つ『七星剣・セプテントリオン』をその手に戦場へ舞い降りた。
「さあ、アイリーンさん、さっさと片付けちゃいましょう!」
ハヤトの視界を通じて、世紀の大決戦は世界に配信され、今や熱狂の渦を巻き起こしている。
冒険者と鬼の軍勢の決戦は未だ始まったばかり、これからさらに熱は上がり続けるのは間違い無かった。
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