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私の中の怪物  作者: 寿和丸
2部 少年から大人へ

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32話 コーツの暗躍

「そしてもう一つ困ったことはこのまま隔離が続けば、折角立ち上げた会社も潰れる。それは絶対、避けたい」

「まあ、会社の件は俺にはどうにもならないが、警察の背後の組織とは何だと思う。それによっては動けるぞ」

「多分、警察も動かせる、日本政府の直属の機関だと思う」

「それを探れば、ここから脱出できる方法も見つかるのではないか。取り調べをしている奴の後をつけるのは簡単だ。そこから背後は探せるぞ」

「いや、たとえ脱出できたとして、その先の展開が上手くいきそうにない。警察に追われ、逃亡生活になることはやっては絶対いけない。コーツには別のことをしてもらいたい。コーツ、ここから別の部屋にあるパソコンを操作できるか?」

「全く触ったことの無いパソコンだと直ぐにはできないがやれないことはない。お前の狙いは俺達がここで隔離されていて、それなのに、別の部屋からハッカーが動き出せば、俺達がハッカーでないと思わせることだな。この病院のパソコンからペンタゴンにハッカーしようか?」

「いや、それだとますます僕らが、ペンタゴンに侵入したと自白したようなものだ。この病院のパソコンに手を付けるのはまずい。コーツの分身はどれだけ離れて活動できる?」

「ユージから少しずつ力を貰って、ようやく分身の能力を復活できたが、まだ本調子には遠く及ばない。やっと3キロが限度だ」

「ぎりぎり、疑いがそれるかどうかの距離だな。普通の家のパソコンを使うと、その家の人が疑われるから、迷惑を掛けたくない。ここからできるだけ遠くの公共施設、学校、役所などのパソコンを操作してくれないか。その上でアメリカの国防省と接触して見てくれ」


コーツにとっても分身を遠くまで送り、全く触れたことの無いパソコンを操作するのは難しかった。

分身は勇次たちが隔離されている部屋を見回る者にそっと取りついた。そこから、他の施設に移動する者を探すのだったが、ある者はなかなか病院から離れず、またある者は遠くの場所に行ってしまった。なかなかうまい距離の好都合な施設に辿り着けない。

それでも、何とか二日かって、外部の施設に侵入し、そこのパソコンを操作できるようになった。


アメリカ国防相長官のメールに次のようなメッセージが届いた。

「私は君たちがゴーストと読んでいる者だ。その証として、以下の印と同じものをペンタゴンのコンピューターに張り付ける。」

その印とは豚の鼻を模したもので、国防省のセキュリティを茶化すようなデザインだ。

「私がペンタゴンに侵入し騒ぎになったことをまず謝りたい。その上で、多くの人がゴーストと疑われてしまっているのにも心を痛めている。

それで提案があるのだが、私は今後一切ペンタゴンにもアメリカ国防省、政府機関、公共機関のコンピューターに侵入しないし、あらゆるハッカー活動も行わないと誓う。

そして、もし、君たちが私の提案を受け入れるなら、君たちに私がどうやって、ペンタゴンに侵入したかも教えよう。

日本において、私への捜索活動の停止を見て、君たちの返事と理解する」

同じ時間、豚の鼻がペンタゴンに送り付けられた。そして緊急会議が開かれる。

「間違いないな、これはゴーストからのものだ」

「何と言うことだ、こんな物を張り付けられるなんて。いまだにセキュリティが甘いと言うことか」

「残念ながらそう言うことだ」

「今はゴーストの提案を受け入れ、奴がどのようにして入り込んだのか知ろうじゃないか?」

「癪だが、それしかあるまい。ゴーストの捜索停止を日本政府にも伝えよう」


ゴーストが再び、ペンタゴンに現れたことは公安室にもショックだった。

「どこから、ゴーストが発信したか分かったのか?」

「K区管内の警察署のパソコンでした。警察病院と警察署では4キロもあります」その事実に部屋は凍り付いた。ゴーストは今まで、民間人の家から発信していたのが、よりにもよって警察署のパソコンが使われたのだ。

「その間、勇次は何をしていた?」重苦しい中で、室長は何とか絞り出すように言う。

「机に向かって紙でプログラミンを書いていました。間違いなく、勇次にはパソコンを触らせていません」

「くそ、どうやってゴーストが出たんだ?勇次はゴーストではないのか?」

公安室の方針が揺らいだ。


「これではとても、勇次をゴーストと決めつけられないな」室長は悔しそうに言う。

今までの捜査で勇次がゴーストであると言う証拠は何も出てこない。

だが、室長は勇次のことを知れば知るほど、勇次とゴーストを別人とは思えなくなっていた。

「ペンタゴンにさえ、ハッカー出来るような奴が、日本でそんなにいるはずもない。そして、勇次は子供の時から驚くべき程の才能を見せていた。小学生の時から自由にパソコンを操り、独自にプログラミングをしていた。学業だって、都内でもトップクラスの成績だ。あいつにとって、高校の授業など簡単すぎて、退学までしたくらいだ。勇次とゴーストは特別な才能を持った奴だ。そんな奴が二人もそして、都内の近い所に住んでいるはずがない。」そのように考え、勇次をゴーストと疑い隔離していたのだ。

その疑念が崩れていく。

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