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第32話 潜入

少しばかし放置してしまいすみませんでした。


お仕事の関係で必要な資格の勉強してました。


試験が終わったのでまた執筆開始します!


「強きお方、何故それほどまでの力をお持ちなのに、わたくしと戦う事を拒むのですか」

「お前は別に悪い奴じゃない……。殺したくないんだ……」

真っ赤な夕日を浴びつつ、エマはやや驚いたような表情を浮かべている。

そして、少しだけ間が空いた後、

「ならば、強引に力を引き出させるしかないようで……」

瞬間。

「うっ!」

顎先に触れていたはずのエマの指先がいつの間にか俺の首元を掴み、宙へと吊し上げられる。

「痛い、ですか?」

「くっ……」

「それも演技……でございましょうか」

「や……やめ……」

俺はエマの腕を掴んで抵抗するもエマの手はびくともしない。

なんつー握力してんだよこいつ……。

こんな細い腕で……!

すると、

「……!」

視界の端から光の筋が見えた。

アリスの使い魔だ。

途端、使い魔はエマに向け魔力を放った。

「ふふ……」

エマは俺から手を離し使い魔が放った魔力を避ける。

俺は地面に転がって、咳き込みつつ使い魔を見つめる。

助けられたようだ。

マジで死ぬかと思った……。

アリスの使い魔は俺の周りをくるくると飛び回っている。

動きから察するにエマに怒っているようだ。

エマはその微笑みを絶やさずに、

「そんな程度では、このわたくしは殺せませんよ。どうぞご遠慮なく」

「だから……お前は悪い奴じゃないから……殺さないって言ってるだろ」

「私が殺そうとすれば、そうは言ってられないのではございませんか?」

「ちっ……」

「見せて差し上げます、本物の叡智というものを……」

エマは叡智の書を開き、詠唱を始める。

まずい……。

俺はアリスの使い魔に向け、

「あいつの詠唱を止めさせるんだ!」

「……!!」

使い魔はもう一度、魔力をエマに放った。

しかし、それはエマの結界に阻まれ届かない。

「くそっ……」

黒刀があればな……。

古びた柄がねぇから使えねぇんだよ……。

エマの詠唱が深まり、木々がざわめき大気が揺れる。

エマの足元に魔法陣が浮かび上がる。

畜生……。

間違いない。

確実にあれが来る。

プレイヤーのトラウマ。

固定ダメージ9999の即死魔法、滅びの歌。

俺はアリスの使い魔に向け言った。

「お前は俺から離れろ。奴の狙いは俺だ。俺の側にいたらお前も巻き込まれるぞ」

「…………!」

アリスの使い魔はそれでも俺の元から離れはしない。

なんで離れねぇんだよ……。

フェニックスといい、この使い魔といい、どいつもこいつも義理堅い連中だな。

エマの銀髪が夕日に煌めく。

密度の増した魔力が大気中に可視化され、夕焼けに交わる。

そして魔法陣が光り輝き、エマは目を細めこちらを捕捉する。

「我が名の下に、汝の叡智が全として収束す……」

エマは詠唱しつつ、俺に向け空いている方の手をかざす。

仕方ない……。

エマ……。

殺したくはなかったんだけど……仕方ないか。

悪いが、俺も前に進まなければならないんだ。

この世界で抗っていくと決めた以上、俺は前に進まなければならない。

俺は黙ってエマを見つめ返す。

エマは微笑し、そして。

「……滅びの歌」

エマのかざした手の先から、青い光が生まれ、それは加速度的に大きくなる。

原作と同じだ。

それでその光の波動が俺に放たれておじゃんだろう。

「……」

眩しいな。

俺はそっと目を瞑った。

遠くから呑気な蝉の鳴き声が聞こえる。

額から汗が噴き出す。

夏風は止んでいる。

すると、エマの声が聞こえてきた。

「これが……恐怖……?」

俺はそっと目を開く。

「え?」

見ると青い光は消失し、魔法が中断されている。

エマは驚いたような表情で俺を見ている。

「一瞬……殺される未来が……」

よく分からないがエマがうろたえている。

エマは続けて、

「あなたが……わたくしの死だとでも……」

なんだか、よく分からないがエマの動きが止まった。

俺はこの隙を見逃さず、アリスの使い魔に向けて言った。

「今だっ!」

瞬間、俺は一気に森の奥へと走り出す。

そして、俺の動きに合わせるようにアリスの使い魔は体を強く発光させ目眩しを仕掛ける。

よっしゃ! ナイスフォロー。

俺は全速力で茂みを掻き分ける。

逃げるしかねぇ。

あんな化け物相手。

後ろを振り返るも、エマは追ってくる様子はない。

「はぁはぁ……」

鼓膜が心臓の鼓動で埋め尽くされる。

しかし、それでも俺は全速力で駆け抜ける。

エマに殺されたくないから。

エマを殺したくないから。

西日も陰り、空の彼方には夜が降りてきている。

このまま、真っ直ぐ教会のアジトまで走るんだ。

「道は合ってるか!?」

「……!!」

アリスの使い魔が進む道をエスコートしてくれる。

俺はその案内に導かれるまま、そして喉奥が枯れ果てるまで、走り続けた。





★☆★☆★☆





「なんとか……やり過ごせたな……はぁはぁ」

目の前には、簡素な白いバラックが見える。

ここが、教会の支部だろう。

辺りは木々に囲まれて、何もない。

確かに、隠れて何かをやるにしてはうってつけだろう。

闇雲に走り続けていた為に気が付かなかったが、すっかりもう日も落ちてしまった。

俺はアリスの使い魔に聞いてみた。

「シオンは大丈夫か?」

俺の問いかけに、使い魔はくるくると回って見せる。

とりあえず、生きてはいるようだ。

「お前はまた隠れて居てくれ。あとは俺がなんとかする」

俺の言葉にアリスの使い魔は、再度俺の髪の毛の中に隠れた。

「じゃあ行くか」

俺はアジトへと歩を進める。

建屋には窓もない為、中の状況が分からない。

俺は建屋のとば口に立ち、扉に手を掛ける。

「うおっ」

俺の手の甲に刻まれた呪印が赤く呼応し、扉に教会の紋章が浮かび上がる。

そして、扉の向こうからかんぬきが外れたような音がした。

「なるほど、こういう仕掛けになってたのね」

こりゃあ、教会員でなきゃ入れねぇな。

そして俺は一つ深呼吸をして扉を開け、中へと足を踏み込んだ。

正面には木の机がありそこに二人、見慣れた赤いフードに身を包んだ末端信者が座っている。

中は適当な間隔でろうそくが灯してあり、存外暗くはなかった。

いきなり中に入ってきた俺に末端信者の片方が振り向いたが、それっきりで何かしてくる訳ではない。

相変わらずの塩対応文化だなしかし。

つーか、基本的に上級司祭連中しかマジで会話にならないからな。

そもそもこいつらに自分の意思があるのかも分からんが……。

入って左手を向くと、奥へと続く廊下があった為、俺はそっちに進む。

ぎいぎいと床が軋む音がこだまする。

廊下の先には扉が見えた。

あの扉の向こうにシオンが居るのだろうか。

末端信者二人だけなら、シオンを連れ出して脱出するのも不可能ではないだろう。

廊下の最奥、扉の前に着いた。

中から音は聞こえない。

俺は、扉に手を掛ける。

さきほどと同様、呼応する俺の呪印。

教会員の証だ。

しかし建屋の入り口とは異なり、向こう側からかんぬきが外れるような音はしない。

なんだろう……。

瞬間だったーー

「ひっひっひっ、誰かと思ったらマルコのお気に入りじゃねぇか」

肩を掴まれる。

そして瞬く間に、俺の体が支配されるあの感覚が訪れる。

声で分かった。

「久しぶりだなぁ生きてたのか……あの状況でよく生き延びたなぁお前、ひっひっ……」

支配された体の中、強引に顔を背後に振り向かされると、案の定そこには、上級司祭のスデイがいた。

ここまで読んで頂き誠にありがとうございます!


ブクマや評価や感想など貰えたら嬉しいです!


次回もお楽しみに!

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