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第25話 暗躍

「どうしたんですかー?」

目の前には大きな瞳をパチクリさせて、心配そうにこちらを覗き込むロザリーがいた。

大きな頭のリボンが呑気に可愛く揺れる。

そうだった……。

別に焦らなくて良かったな。

どんな重い怪我でも治せる癒しの力。

それがロザリーの能力だ。

俺はロザリーに言った。

「フェニックスが雷撃を食らった、麻痺の症状も出ている」

それを聞いたロザリーは言う。

「それは可哀想ですねフェニックスちゃん。わかりました! ロザリーが痛いの痛いの飛んでけをしてあげますっ!」

ロザリーはフェニックスの側へとしゃがみ込み、

手のひらを光らせ、その手でフェニックスに触れた。

…………。

いや若干なんか、ロザリー嬉しそうだったような……。

仲間が、怪我負ってるのに……。

若干、サイコ入ってるのかな。

まぁ、治してくれてるからありがたいんだけどさ。

するとロザリーに触れられたフェニックスの体が淡く輝き、みるみるうちに肌の火傷が癒えていく。

すげぇ。

さすが、木の賢者。

さっきの竜巻の魔法といい、格が違うな賢者は。

「はい! これでもう大丈夫ですよー! 痛いのは飛んでいきました!」

ロザリーが笑顔でフェニックスに話しかける。

フェニックスも同様な様子で、

「凄いのだー! 痺れないのだ! すぐ治ったのだ! ありがとうなのだ!」

「ふふ〜ん」

ロザリーがドヤっている。

腕を組んで胸を張っている。

多分、褒められたいんだよな?

俺もフェニックスに同調して、

「ありがとうロザリー、助かったよ」

「困った時はお互い様ですよぉ」

褒められて嬉しいのか、にやにやが抑えきれないようだ。

うわ……なんか100歳越えのくせに、承認欲求強いな……。

しかし、本当に周囲に気を配らせながら戦わないとな。

フェニックスに悪い事をしてしまった。

「フェニックス、一旦引いて休んでて良いぞ」

「大丈夫なのだ! ロザリーのおかげで復活したのだ!」

フェニックスはガッツポーズをして見せる。

だろうな、絶対そう言うと思ったぜ……。

本当は休ませたいけど、言っても聞かなそうだし、致し方ないか……。

俺がうなづくと、フェニックスはすぐに魔法を放ち始め、戦闘を再開した。

従順だなぁ本当に。

なんだか感心してしまっていた所、すると遠くからニコルの声が聞こえてきた。

「主どの、敵の中心になにやら大型のエレメントが形成されつつあります」

ニコルの言葉に俺は敵の前線の方を見つめる。

確かに一際大きいエレメントが見て取れる。

…………。

いや、待て。

こんなの原作にはなかったぞ。

原作では、この小さなエレメント共をシオンとアリス達が無数に狩るだけのイベントのはずだ。

ましてや、エレメント達は意思を持たない為に、互いに合体するなんて行動は絶対に出来ないはずだ。

面前の大型のエレメントは刻々とその大きさを増していく。

何かがおかしい。

原作とは違う流れだ。

すると、背後から、

「何やら知恵があるようじゃが、完成する前に倒せばよいのじゃろう」

ミネルヴァがそう呟くと夜空が再び光り輝き、そして、

「ラグナロク」

その巨大なエレメント目掛け、夜空から光の一閃が注がれる。

揺れる大気が足元の雑草をなびかせ、つんざくような高周波が周囲に響き渡った。

しばらくして光の柱が消失すると、ミネルヴァが言った。

「おかしいのぉ」

ロザリーも同調し首を傾げて、

「あれれ、不思議ですねぇ」

エレメントは変わらずにその大きさを増し続けている。

何が起きている……。

落ち着け。

遠くからアトの声が聞こえる。

「てか、やばくない? あのエレメント超大きくなってるんだけど!?」

そんな事は分かっている。

女子高生みたいなリアクションをするな。

エレメントが連なり、重なり、一つの塊へと収束する。

まるで意思を持っているかのように。

あるいは操られているかのように。

操る……。

待てよ。

エレメントとは世界の行の流れが具現化したもの。

エレメントを操ると言う事は、行の流れを操るということ。

それはつまり……。

「雷の石……」

そうだ。

こんな芸当が出来るのは雷の石しか、有り得ない。

世界の行の流れに干渉できる力。

それが行の石の能力なのだから。

そして、雷の石を使える者、それは雷の賢者だけだ。

…………。

近くに雷の賢者がいる。

先程のミネルヴァの魔法がエレメントに効かなかったのも、同等の力を持つ雷の賢者がそばにいたのであれば合点がいく。

しかし、それは何の目的があってなのだろう。

「凄い魔力です……。さすがにこれを相手にするとなると、ロザリーもちゃんとみんなを守り切れるか分かりませんよ。どうするのです死神ちゃん?」

ロザリーの頭のリボンが周囲を取り巻く激しい風になびいている。

面前には、合体が終わった巨大な雷のエレメントが一つ。

俺はロザリーに言った。

「ロザリー、もしかしたら気付いてるかも知れないが俺たちは今、雷の賢者とも戦っているかも知れない……」

すると、横からミネルヴァが割り込んで、

「やはりお主とは考えが一致するのぉ。丁度わらわも同じ様な事を考えていた所じゃ」

ミネルヴァはやや機嫌が悪そうに、組んだ腕の指先を小刻みに動かしている。

ミネルヴァの言葉を聞いたロザリーは、少し慌てた様子で、

「えーっ! ギルフちゃんが何でロザリーの事をいじめるんですかっー!?」

俺は言った。

「分からない。が、おそらく相手は目的があり何かを企んでいるに違いない」

俺の言葉にミネルヴァは言う。

「ギルフの奴め、何を考えておるのじゃ全く。腹立たしい」

雷の賢者、ギルフ・エルバラン。

寡黙でミステリアスな男ではあったが、原作では何度もシオンやアリスがピンチの時に助けてくれた味方キャラだ。

何を企んでいる。

雷のエレメントを一つに収束させる意味。

魔力の増大だろうか?

魔力の増大……。

高出力の魔法……。

…………。

まずい。

俺は懐に入れていた小銭を取り出して、叫んだ。

「アト! フェニックス! この金貨に向けて、炎を放て! 早く!」

俺が金貨を投げた先、それは丁度、雷のエレメントと王国との直線上。

アトもフェニックスも途端、泡を食った表情をしていたが、空中の金貨に向けて炎の魔法を放つ。

その刹那ーー

巨大な雷のエレメントの頂点から一筋の雷撃が放出され、その雷撃はアトとフェニックスの炎を巻き込んで軌跡が変わり、それはギリギリの所で王国から逸れていく。

危ねぇ……。

間一髪だった。

間違いない。

あの特徴的な雷撃。

ロンギヌスの槍だ。

雷の行の最強魔法。

全てを焦がす裁きの雷。

まずいな、それを放てるまでにエレメントの密度が上がっていたのか。

しかし、今ので雷の賢者の狙いが分かった。

あいつは、王国を潰そうとしている。

「アトちゃん! フェニックスちゃん! 死神ちゃん! ナイスです! ファインプレーですよ!」

ロザリーが褒めてくれた。

個人的にはロザリーが先に動いて欲しかったんだけどな……。

しかし、ロザリーも相手の狙いが分かったようで、

「ニコルちゃん! 魔力を同期させましょう、結界を張るのですっ」

「承知致しました、ロザリー様!」

ニコルも同じ事を考えていたのか、共に同じ魔法陣を足元に浮かべ、エレメントと王国との直線上

に結界を築いた。

「主どの! 防御は我々がっ、主どのは本体への攻撃を!」

ニコルの声掛けに俺はうなづき、懐から黒刀を立ち上がらせる。

刹那。

周囲に轟音が響き渡り、巨大な雷のエレメントからまたしてもロンギヌスの槍が放たれた。

しかし、それは結界に衝突し、受け止め、ならされ、消失する。

何とか防げたようだが結界の所々に亀裂が認められ、察するにそう何発も防げそうにない。

急がなければ。

ここまで読んで頂き誠にありがとうございます!


ブクマや評価や感想など貰えたら嬉しいです!


次回もお楽しみに!

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