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第15話 木の賢者

「そうか、ミネルヴァが俺の居場所をニコル達に教えてくれたのかー」

俺はニコル出してもらったYシャツに着替えを済ませ、飯を食べつつ、ミネルヴァとニコルとアトとテーブルを囲み話をしていた。

ニコルはいつものように柔和な微笑みを浮かべながら言う。

「水の神殿へ迎えに行った所、中はもう主どのしかいない様子で、主どのも倒れておられましたから、さすがに驚いてしまいましたね」

ミネルヴァもニコルに同調して、

「そうじゃぞ、死んだかと思ったぞい」

いや俺の場合、死んだ方が好都合になっちゃうから……。

「でもお兄ちゃん、やっぱりその紋章の所為で、教会の人に操られるのは変わってないんだね、しかも勝手に召喚させられるとか、不憫」

先の件の誤解を必死で解いたかいがあって、アトの機嫌はすっかり元通りになっており、自然な流れで会話に入ってきた。

俺はアトに言葉を返す。

「なー、本当に困っちゃうよこれ、どうにかして解呪できないのかなー、ニコルだったら何か知らない?」

ニコルは、表情を崩さずに両手を広げて、

「残念ながら主どの、その紋章の魔法陣は私にも分かりません」

「そうだよなー、てかそういやニコルは教会員ではないのか?」

「私は違いますね、実質的には教会の活動に加担していましたが、教会員ではありませんでした。ただ、サイファーに仕えていたのみでした為、教会自体の事はさっぱりです」

「じゃあ、本当に俺だけが教会員なのか……」

俺はなんだか、情けなくなった。

そんな俺の嘆きにミネルヴァが反応する。

「なんじゃそんなに凹むな、お主が教会員でなかったら、わらわは今頃この世にはおらんのじゃから、なにも悪い事だけではあるまい」

そう呟き、ミネルヴァはにっこりと微笑む。

俺はミネルヴァの笑顔につられて、

「まぁそうか、そうだよな。こんなの気にしない方が良いよな」

「うむ、皆がおるのじゃ、皆で考えれば良い」

良い事、言うじゃねぇかミネルヴァ。

俺はテーブルのコーヒーを一気に飲み干して、言う。

「じゃあ、今日も行くか! 協力者は多い方が良いからな!」

アトが心配そうな表情で、

「お兄ちゃん、またどこか行こうとしてるー、もう危ない所はやめようよー」

「今度は大丈夫だって、木の賢者は優しい奴だから」

俺のセリフにミネルヴァが、思案げな顔を浮かべつつ言う

「次は、あやつの命が狙われるのか?」

「あぁ、そうだ」

「さりとてお主、あやつは石を持ってはおらぬぞ」

「教会の連中は賢者が鬱陶しいから、とりあえず殺しときたいんだよ」

石の力を解放させた時に、賢者は石の魔力に干渉できるからな。

それが目障りなんだよ、あいつらは。

「全く、仕方のない連中じゃのう」

ミネルヴァは大きくため息をついた。

俺は立ち上がる。

「よしっ! じゃあ行くか! 絶海の孤島カルデラ島へ!」












「わー、島が見えてきたよー! お兄ちゃん!」

アトがまた、フェニックスの胴体から体を乗り出して、地上の景色を覗いている。

マジで、怖くないのかあいつ。

普通あんな事しねぇだろ……。

あと今回は海上を飛んでる為か、前回よりも風が強い。

控えめに言って、発狂しそうです。

バーサクのステータス異常になっても良い?

ニコルやミネルヴァがいるしステータス異常を治す魔法とか覚えてるよね、きっと。

「皆さま、そろそろ到着しますので、高度を下げますよ」

ニコルの穏やかな声が聞こえる。

ミネルヴァもアトも呑気な様子だ。

心臓に毛が生えている奴しかいないのか、この世界は。

徐々に高度が下がっていく。

島の周囲は容赦ない断崖絶壁が囲い込み、その内側は深い森が生い茂っている。

ゲームがゲームなら、海チョコボがないと本来なら来れなさそうな島だ。

森の中に着陸するようだ。

俺は近づく陸地に安堵した。

「お兄ちゃん、着陸するよー」

「あぁ」

地面が近づく。

むせ返る木々の匂いと共に、俺たちはカルデラ島の森に着陸した。

「お疲れ様でした。主どの」

ニコルの穏やかな声に、気疲れした俺は感謝を述べる事もなく、フェニックスの体から降りようとした。

その瞬間。

「うおっ!」

突風が吹いた。

フェニックスの体が揺られる。

俺はその胴体から放り投げられ、そばにあった木に体をぶつけその次、地面に尻もちをついた。

「あいててて……」

「大丈夫ですか! 主どの!」

ニコルが急いで駆け寄ってくる。

「あぁ、大丈夫大丈夫。ちょっと揺られただけだから」

俺は、Yシャツについた砂埃を払った。

うわ。

紋章のない方の手の甲に切創が出来ていた。

ぶつかった際に、小枝か何かに引っ掛かったようだ。

まぁ、良いか。

すぐ治るだろ。

俺は歩き出そうとした所、頭上が陰った。

俺は上を見上げる。

「ちょちょ……怖い……」

見ると、フェニックスが申し訳なさそうな様子で俺の方を見ていた為、俺は慌てて、

「いやいや、お前は悪くないよ……大丈夫だから……大した怪我じゃないから心配すんなって……」

フェニックスは俺に顔を近づけてきた。

え?

頭でも撫でて欲しいのかな?

俺は頭を撫でてやった。

すると、フェニックスはみるみるうちに顔が綻んで嬉しそうにしている。

可愛いけど、デカイんだよなこいつ。

近くに来ると怖いんだよ。

「ふむ……お主、フェニックスと心が通じておるようじゃな……」

横を見たら、ミネルヴァがいた。

「え? 通じてんのこれ……俺、特に何もしてないんだけど……」

「フェニックスが、こんなに人間に興味を示す事などそうあるまい……、現に今ここにわらわが居るのに、一切の興味はお主に対してのみじゃ」

フェニックスは嬉しそうに、俺に撫でられている。

ミネルヴァは更に続ける。

「この様子じゃと契約がなくとも、いつかお主の為に動いてくれるかも知れぬぞ」

「いや……それが出来たとしても、こんな大きかったら、使う所限られるでしょ」

俺の返しにミネルヴァは鼻で笑った。

「なにも、今見ているこの姿のみがフェニックスのあり様とは限らん。主従関係のない召喚ならば魔力はいらないからのぉ、覚えておくといい」

そう言ってミネルヴァは、先に進んでいった。

本当、スタイル良いよなぁ、ミネルヴァ。

こっちの世界だったら絶対、ヤンジャンとかヤンマガで、表紙飾れるよな。

そして俺はなんとなく、フェニックスの顔をじっと見つめる。

「お前、そんなに俺の事好きか? まぁ同じ不死身同士今後ともよろしくな」

俺はフェニックスの頭をポンポンと撫でる。

ニコルがタイミング良く召喚を解いて、フェニックスは消えた。

俺は、一足先に進むミネルヴァとアトを追いかける。

「しかし、かれこれ20年ぶりくらいじゃろうか、あやつに会うのも久しぶりじゃのぉ」

追いつくとミネルヴァとアトが会話していた。

「へー、木の賢者さんってどんな人なのー?」

アトが親しげにミネルヴァと話している。

俺が寝てた2日間で何があったか知らないが、この二人がこんなに仲睦まじくなってた事には少し驚いた。

まぁ、アトもミネルヴァも優しいからな。

ミネルヴァは腕組んでうなづきつつ言う。

「一言で言うならば変わり者じゃのう」

揃って森を進んでいくと、ポツンと木で組まれた小屋が見えてきた。

変わり者ねぇ……。

まぁ変わり者っていうか俺からしたら、あれはただのーー

「あれれ!? もしかして、ミネルヴァちゃんですかー!?」

溌剌とした、元気な女の声。

進む先を見ると森の奥から、頭に大きなリボンを結んだ女がこちらへと駆け寄って来ていた。

もう、会えたよ。

木の賢者。

嬉しそうに駆け寄ってきた木の賢者にミネルヴァが言った。

「久しぶりじゃのう、ロゼル。相変わらずその趣味は飽きんようじゃな」

と、そう言われた木の賢者は慌てたような素振りで、

「そ……そっちの名前で呼んだらダメですよー! 私はロザリーです!」

そう言って、ロザリーは両手を腰に当てて、少し怒った様子で頬を膨らませた。

そう、木の賢者ロザリーはいわゆる男の娘ってやつで、本名はロゼルって名前なんだけど、それを言うとこんな風に怒るんだよな。

原作通り、薄緑色の肩まで伸びたふんわりとした髪に、頭頂で結んだピンク色の大きいリボンが特徴的だ。

大きな瞳とやや垂れた目尻が柔和な雰囲気を醸し出して、小さな口といい陶器のような白い肌といい、はたから見たらもう普通に可愛い女の子だ。

服装はというと大胆にお腹を露出した、胸までしかない丈の短く動きやすそうな生地の薄い衣と、これまた大胆に生足を露わにしたミニスカートと踵の厚いサンダル。

原作で容姿は知っていたけど、実際に会うとドキドキしてしまう。

地が男であるからか、背はアトやミネルヴァよりも少し高い。

その大きなリアクションからか、頭につけたリボンが煽られて、終始揺れている。

胸はやはり男の娘なので、男の娘サイズだ。

仲睦まじげに、ミネルヴァからイジられてロザリーは微笑んでいる。

笑うとくしゃってなる顔が超可愛い。

あと、その真っ直ぐで真っ白な太ももよ、完全に誘ってるだろこれ。

男の娘だからって足元見てると、

がおーがおーしちゃうぞ!

若い時は色々思ったりもしたが、もうアラサーになると男だろうが女だろうが正直、可愛ければなんでも良いのだ。

ダイバーシティ推進!

男の娘万歳!

なんて、考えにふけっていると、

「ところでミネルヴァちゃん、この人達は誰なんですかー?」

ロザリーは不思議そうな表情で俺達を見回した。


ここまで読んで頂き誠にありがとうございます!


ブクマや評価や感想など貰えたら嬉しいです!


次回もお楽しみに!

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