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第11話 心根

「わらわが水の賢者、ミネルヴァじゃ」

霞が晴れるとそこには、若い女がいた。

頭の高い位置で結んだ青色の艶髪ツインテールと、童顔ではあるものの、大きく気の強そうな瞳と瑞々しくぽってりとした下唇が特徴的な美女だった。

丈が太ももまでの細身でタイトなフリフリの青いショートドレスを身に纏っている。

そして、なんといってもその大胆に胸元の開いたドレスから垣間見れる豊かな胸と深い谷間に俺はまんまと目を奪われてしまう。

それに、下半身はあみあみのタイツにかなり細いピンヒール、いかにも高飛車な雰囲気が漂っており、ごめんなさい、正直ドストライクです。

ミネルヴァ、原作じゃ声だけの出演だったけど、こんなに可愛いんだ。

てか、お胸がやべぇ……。

凄く、その、お胸が良いです……。

六本木にいそうな美人だ。

完全にドストライク入りました先輩。

なんて……、あんまり下心を露わにし過ぎると、嫌われるか。

俺は平静に言葉を返す。

「あなたがミネルヴァ様ですか……」

ミネルヴァは大きな胸の下で腕を組み、人を蔑んだような笑みを浮かべつつ言う。

「お主が、妙な力を持っておる少年じゃな?」

少年って……。

まぁそうか、賢者達は基本的に100歳クラスだもんな、そこから見たら俺なんて少年みたいなもんか。

まぁ見た目はどう見ても100歳には見えないけど……。

二十歳そこそこにしか見えねぇよ。

「はい……」

俺は素直に返事をした。

「ふむ……」

ミネルヴァはコツコツとピンヒールの足音を響かせながら、俺に近づいてくる。

そして途端に、ミネルヴァは自らの顔を俺の顔に近づけて、匂いを嗅ぐような素振りをした。

うわ……可愛い……。

ぽってりとしたみずみずしい下唇が首を伸ばせば届きそうな位置にある。

長いまつ毛が上向いている。

すぐそばで、そのたわわな果実が揺れている。

我、赤面不可避。

あと、なんか薄荷のような良い匂いもする。

こんなもん、そういう店ならシャンパン開けちまうレベルだそ……。

「たしかに変わった匂いじゃな……」

「えっ……汗臭い?」

「違う、お主の存在としての話じゃ。わらわも長く生きてはおるが、お主のような匂いをした者に会うのは初めてじゃ」

「そうですか……」

距離が近い……。

ドキドキしちゃう……。

「変わった気配じゃ、これならばその胡散臭い力にも合点がいく。しかしお主、そんなにわらわの容姿がタイプか? さっきからその心の声がやかましくて敵わんのじゃが」

「え……」

…………。

そうだった……。

ミネルヴァの能力は人の心が読める事だった。

忘れてた。

だって忘れちゃうくらい、目の前に大きい果実があるんですもの。

俺は素直に謝った。

「すいません」

「謝れとは言ってはおらん。わらわとて、わらわの美貌にはうっとりしてしまうからの、気にするな」

ミネルヴァはそう言って微笑む。

笑った顔も可愛い。

すると、背後からアトの声が聞こえた。

「うわ……お兄ちゃん……こっち系が好みとか……マジ浅はかな男の典型じゃん……」

ぐさっとくる言葉を言うな。

浅はかとか止めろよ。

なんかリアルだから。

俺は、アトの言葉を無視して言った。

「ミネルヴァ様……」

「ミネルヴァで良い、最早そこまで敬われる存在でもないのだからな」

「じゃあミネルヴァ、俺達がここに来た理由なんだけどさ、一つお願いがあってきたんだ」

「お願いじゃと?」

ミネルヴァがその大きい瞳を丸くする。

長いまつ毛が揺れる。

「ああ、単刀直入に言う。近い内にこの神殿に、解放教会の連中が襲撃する。奴らの狙いは水の石とーー」

俺はミネルヴァを見つめて、

「水の賢者の命だ」

俺の言葉にミネルヴァは途端は泡を食った表情を見せたがその次、

「あっはっはっは! わらわの命を狙う連中がおるのか」

と、声高く笑った。

さらにミネルヴァは続けて、

「お主、実に誠実な心根でそれを証言しておるな。褒めてやろうぞ。しかし、返ってこんな疑念が湧く。お主には対読心術の心得があるのではないかと」

なんでそう取るんだよ。

俺は言葉を返す。

「俺はそんな器用な真似はできねぇよ」

ただのジャパニーズサラリーマンだそ、こちとら……。

「いや、お主のその異能と言い、先程の黒い剣と言い、その存在が未だ不可思議だ、対読心術くらい会得してるやもしれんじゃろう?」

「違う、俺は本当にお前の事を思ってる。だからこれを言いに来た、ここじゃない安全な所に避難しーー」

ミネルヴァは俺の言葉を遮って言う。

「だから、それが解せんのだ。何故お主は本心でそんな事を思う。そんな事を思える。何故わらわの命を助けようと思える。わらわとてこの先何をしでかすか分からんじゃろう、第一お主はーー」

ミネルヴァは俺の手の甲を示して、

「その、カルト共と同じではないか」

「…………」

くそ。

確かにミネルヴァの言う通りだ。

ゲームでお前が良い奴な事は知ってるから助けたいなんて言っても、信じて貰えないよな。

俺がこの世界の行く末を全て知ってるなんて言っても、信じて貰えないよな。

ましてやこの世界を救いたいなんて言っても、それこそ、あ痛たたたの状況になる事は目に見えてる。

俺は、あくまでもこの世界では敵キャラなんだ。

ましてや、護衛獣であるティアマトさえ殺めてしまった。

今のミネルヴァがそう思う事も無理はない。

ミネルヴァはその可愛い顔で俺を探るように見つめて、

「ふむ、心根からボロが出ないな。相当な手練れか」

ボロなんて出ねぇよ本心なんだから。

「ちょっとその言い方。お兄ちゃんは確かに変わってる人だけど、人を騙したりする人間じゃないから!」

俺の気持ちを察してか、アトが後ろから言う。

ミネルヴァは、その大きな胸を突き出して、アトを見据える。

「半妖の娘。お主、この少年の事が好きじゃろう」

「いや……あり得ないし…」

「心根の中はこの少年の事ばかりが渦巻いておるではないか」

「適当な事言わないで! むしろ嫌いだから!」

「まぁ良い、童に何を言われたとて響かん」

アト……。

嫌いはないだろう。

嫌いはさ。

なんて、この状況を見かねてか、ニコルが横から口を出した。

「主どの、おそらくこれ以上の進展はないと見て良いでしょう。取り急ぎ、彼女に近々危険が及ぶと言う意識を抱かせたのであれば御の字だと思われますが」

ミネルヴァは、ニコルに言う。

「ほお、冷静じゃなお主。筋が良い。しかしお主とて、この少年の事を心根からは信じてはおらぬではないか」

えっ……ニコル、そうなの?

それは普通にショックなんだけど。

その言葉に、ニコルはいつも俺達に見せる微笑みと同じ様にミネルヴァに笑みを見せ、

「はい、仰る通り、主どのの事は信じてはおりません」

…………。

こりゃ今晩ずっと考える奴だわ……。

と思った、その矢先ーー

「しかし、私は主どのの力を信じております。そして、その力で切り開く未来を見ているのです」

ニコルぅぅ……。

お前って奴は……。

ミネルヴァは眉間に皺を寄せる。

「聡明だと思ったが、お主も同じ穴のむじなか」

「見解の相違ですよ。水の賢者殿」

かっけぇ……ニコル。

惚れちゃいそう。

俺の頬が緩んでいた所、アトが俺の服の袖を引っ張った。

「もう帰ろう! お兄ちゃん! ニコルも! この人に話しても仕方ないよ」

アトが強引に引っ張っていく。俺は自然と踵を返してしまう。

ニコルも笑いながらミネルヴァに背を向ける。

ちょっと……。

俺は、まだ一番伝えたかった事を言えてない。

俺はアトに強引に引っ張られる中、懸命にミネルヴァを見つめて言った。

「ミネルヴァ、絶対にお前を死なせないからな」

お前だけじゃない。

シオンも、

アリスも、

ミリアも、

ハルクも、

他の賢者も、

必死にこの世界を守ろうとしていたんだ。

絶対に誰一人として、死なせはしない。

それが俺がここにいる意味なのだから。

俺の力の意味なのだから。

そんな俺の台詞に、ミネルヴァは顔色一つ変えず、何も言葉を返す事はなかった。

そして、俺たちは水の神殿を後にした。

ここまで読んで頂き誠にありがとうございます!


ブクマや評価や感想など貰えたら嬉しいです!


次回もお楽しみに!

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