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第五十六話 「初体験?」

「リ、リリリリリ、リック! こ、これは?」

「何を狼狽えてるんだい?

 ははぁん。さてはユーヤくんは童貞」

「どうだっていいだろ!

 それにリックだって……まさか、違うのか?」


 桃色の髪をした全裸のメイドに後ろから抱きつかれているにも関わらず、リックは堂々としている。

 普段、幼女の尻ばかり追っている変態の癖に経験済みだと言うのか!?


「若様のアレはすごいんですよ。

 あら? お客様のモノも中々……」

「ちょっ! やめっ! そこは自分で洗うからっ!」

「うふふ。かわいいのね。

 緊張しないで、身を委ねてくれるだけで良いんですよ」

「いやっ、この状況で緊張するなと言われても……」


 銀髪のメイドが背中に肌を密着させたまま、白くて細い腕が俺のリーダーエリアへと攻撃(アタック)を仕掛けてくる。

 思わず右手を守護召喚(ガーディアンコール)するが、そのまま手を掴まれた。

 しかも指を絡めてきやがる。

 このメイド、能力無効化(ディスペル)を持っていたか。


「いいかい。

 仮にキミが合法ロリのツンデレ美少女と恋仲になったとしよう。

 そこまでは良くても、今のままのキミだとベッドインした時に幻滅されるのは必至!

 事前に経験を積んでおくべきだと思わないかい?」

「言ってる事は分かるけど、こっちにも心の準備と言うものがだな」

「グレーナー家のメイドは戦闘から夜の世話まで何でもこなすエリート集団だ。

 しかも、身長は百五十未満、バストサイズは八十未満、年齢は十七歳未満と厳しい審査をくぐり抜けている。

 安心してくれたまえ」

「安心出来る訳ねーだろ! どんな審査だよ!?」

「ちなみにわたくしは十四歳ですよ」

「え?」

「南カトリアでは十三歳になれば職に就けます。

 別におかしな事ではありませんよ。

 わたしも十五……いやん。

 若様、そこはまだ……あん」


 完全にアウトだこれーっ!

 いや、この国では問題ないのかも知れないけど、日本だったら摘発される訳で……。

 年齢を聞いて混乱していると、優先権を奪われた俺の右手が十四歳(メイド)のバストエリアに召喚(コール)される。

 石鹸の感触と柔らかい人肌の感触が伝わってきて、俺のダメージエリアの枚数がデッドラインギリギリまで増加するのを感じた。

 不味い……このままだと必殺技能力(フェイバリットスペル)を発動してしまいそうだ。


「お客様、わたくしたちも楽しみましょう?」

「いや……だから俺は……」

「まだそんな事言って……うふふ、でもこっちは正直」

「あっ……やめっ」


 これ以上は流石にマズイ!

 右手を握られたままなのも気にせず、俺は立ち上がって出口へと駆け出した。


 ……つもりだった。

 立ち上がるまでは良かったのだが、周りに気を配る余裕が無かったのだ。

 石鹸の泡に満たされた床を走るとどうなるか。

 普段なら考えるまでもない事である。

 それ以降、風呂で何が起こったのかは覚えていない。

 最後に見た微かな記憶は、高速で九十度回転する景色と、俺に抱きついたまま目を丸くする十四歳(メイド)の姿だった。



 ◆◆◆◆



 気が付くと、豪華そうなベッドに寝かされていた。

 ご丁寧に着替えまでしてくれている。

 有り難いのだが、何やらキラキラとした加工がされた服で少々落ち着かない。

 辺りにリックとメイド達の姿は見当たらなかった。

 代わりにと言っては何だが、マリアとミスティがこちらを伺っている。


「お風呂で逆上(のぼ)せたんですって?

 全く、はしゃぎ過ぎなのよ」

「泡のお風呂楽しいよ?」


 どうやら俺は風呂で逆上せた事になっているらしい。

 おそらく卒業は出来ていない筈だ。

 しかしさっきはヤバかった。

 まさか、十四歳のロリメイドにあそこまで反応させらせるとは……巨乳好きのつもりだったのに自信がなくなってきた。

 しかし、おっぱいって小さくても柔らかいんだな。

 てっきり小さいと固いものだと思い込んでいたぜ。


「ちょっと、返事くらいしなさいよ。

 まだ逆上せてるのかしら?」

「あ……ごめん。

 マリアのおっぱいも柔らかいのかな? って考えてた」

「はぁっ!? 何それ!? セクハラ!?

 もうっ! 何なのよ、この服。

 スカートが長くて蹴れないじゃないっ!」

「ご、ごめん。冗談だから蹴るなよ。

 綺麗なドレスが台無しだぞ」


 危ない。思考がまだ少しピンク色に染まっているようだ。

 落ち着け……賢者モード、賢者モード……。


「ますたー、ますたー。

 髪結ってー。いつもの!」

「ん? 良いけど、寝る時には解くんだぞ」

「うん!」


 ミスティが強請るので、髪をツインテールに結ってやる。

 お陰で少し落ち着いた。

 ミスティは俺にとってのヒールトリガーだな。

 ちなみに今の彼女はマリアとお揃いのドレスを着ている。

 ツインテよりも髪を下ろしている方がドレスに似合いそうだが、本人の希望だし、舞踏会に出るわけじゃないから良いだろう。


「ところで俺の服は?」

「メイドが持って行ったから、洗濯でもしてるんじゃない?

 あなたの魔符(カード)は預かっているわ」

「お、サンキュ」


 マリアから袋を受け取り中身を確認する。

 メインデッキの入ったベルト付きデッキホルダーに、予備のカードを入れた普通のデッキホルダー。

 上着のポケットに入れておいたウィザクリのデッキもある。

 よし、全部揃ってるな。


 俺がカードの無事を確認して安堵した時、ドアをノックする小気味よい音が部屋に響いた。


「失礼致します。旦那様がお呼びで御座います」


 メイドに案内されるまま、別室へと移動する。

 俺に配慮したのか、風呂に押しかけてきた二人とは別人だ。

 と言っても外見年齢は中学生くらいなのには変わりない。

 おそらく全てのメイドが俺より年下なのだろう。


 通された部屋の中央には長テーブルが置かれ、それを囲うように多くの椅子が並べられていた。

 テーブルの上には豪華な料理が隙間なく置かれている。

 テーブルの奥には一際大きい椅子が並び、ヒゲを蓄えた中年男性と、ドレスを着た女子中学生くらいの女の子が座っている。

 二人の隣には礼服に着替えたリックが立っていた。

 まるで童話の絵本で見た王様の食事風景のようだ。


「遠路はるばる、ようこそいらっしゃいました。

 話は全て息子から伺っております」

「この辺りの領主を任されている。

 カイルヴェルト・グレーナーだ。

 まずは近くの席に座ってくれたまえ」


 俺たちは軽く自己紹介を済ませた後、メイドが引いてくれた椅子に、それぞれ着席する。

 どうやら奥の席に居る二人はリックの両親のようだ。

 しかし、リックのお母さん若いな……。

 若く見積もっても四十代のはずなのに、リックよりも年下に見える。

 お父さんも貴族とは思えないフランクな雰囲気で好感を持った。

 リックが老けたら、こんな人物になりそうだ。


「エレイア古代迷宮での活躍ご苦労であった。

 明日にでも調査団を派遣し、野生動物(モンスター)の絶滅が確認され次第、褒美を授けよう。

 何か希望はあるかな?」


 早速、報酬に関しての話題となった。

 リックが根回しをしてくれたのだろうが、話が早くて助かるな。

 勿論、俺が欲しい物は決まっている。


「依頼書には迷宮内の魔法道具(マジックアイテム)を、持てるだけ与えると書かれていましたが?」

「キミたちはそれだけの働きをしたのだ。

 遠慮なく言ってくれたまえ」

「では、迷宮の中心部にあったカードを全て下さい!」

「ほう。魔符があったのか……。

 では、適性のある者を使わせて回収しよう」


 よし! これで新しいカードが手に入る!

 アジア版なのでテキストを読めないのが難点か。

 しかし、俺はほぼ全てのカード能力は暗記しているから、イラストを見れば何とかなるだろう。

 いや……日本語の読めないマリアが使えるくらいだから、召喚戦闘になれば翻訳されたテキストが頭に浮かぶ可能性もあるな。


「本当に良いの?

 あれって私たちの魔符とは別の古代文字でしょ?」

「カスタマイズには使えないけど、そのまま使う事は出来るからな」

「ズルいわよ。私には使えないのに……」

「そんな事言っても仕方がないだろ。

 いつか日本語の白のカードが手に入ったらマリアにやるからさ」


 フェアトラークのカードをメインウェポンとする符術士だが、個別に異なる特定の属性と言語の組み合わせでしか使えないのと言う制限がある。

 例えばマリアは白属性の日本語版、エボルタは青属性のアジア版しか使えない。

 しかし俺にはその制限はない。

 俺は全ての属性のカードが使え、日本語版以外のカードも使える。

 流石に違う言語のカードを混ぜた場合は無理だろうが、フェアトラークのルールの範囲内なら自由な構築が可能だ。

 理由は分からないが、俺が日本で当たり前のようにカードゲームをプレイしていた事が関係していると予想している。


「ますたー。ミスティ、おなか空いたー」

「今はお話中だから、あと少しだけ我慢しろ」

「おっと、これは失礼。

 こちらの料理は全てあなた達の為に用意させたものです。

 どうぞ、遠慮なく召し上がれ」

「やった! いただきまーす!」


 ミスティの発言をきっかけに、少し遅いディナーが始まった。

 食器とフォークがぶつかる音が響く。

 テーブルマナーなんて存在しないかのような庶民の食べ方ではあったが、リックの両親は文句を言わず微笑んでいる。


 豪華な食事を堪能した後、マリアが報酬の希望を伝える。

 と言っても、お目当ての品は無かったので、消費した魔石に費やした費用を少し上回る程度の現金を戴く事で落ち着いた。


「本当にそれでよろしいのですか?

 意中の男性を虜にする魔法道具(マジックアイテム)などもありますよ」

「えっ? ひ、必要ないわ」

「そうですか……。

 陰ながら応援しています。頑張って下さいね」

「あ、ありがとう……ございます」


 何故かリックのお母さんが惚れ薬的なアイテムを勧めてきたが、マリアには必要ないだろうな。

 彼女は俺から見てもかなりの美少女だ。

 胸と凶暴な性格と料理の腕さえ何とかすれば、男に困る事は……意外と欠点が多いな。

 まぁ、本人が必要ないと言ってるのならそれで良い。



 ◆◆◆◆



「ここがキミたちの部屋だよ」

「大型のベッドをご用意しております。

 ごゆっくりとお休み下さいませ」


 個室で就寝着へと着替えさせられた後、俺たちは寝室へと案内される。

 室内なは立派な家具が並び、高級ホテルの一室のようだ。

 ただ少しだけ問題がある。


「ちょっと、何でこいつと同じ部屋なのよ!」

「ご安心下さいませ。

 こちらの殿方は筋金入りのヘタレで御座います。

 間違いは起こらないと、断言致しましょう」

「何よ……それじゃ私に魅力がないみたいじゃない……」


 男女三人にベッドがひとつ。

 ちょっとデリカシーに欠けるよな。

 でも、無料で泊めてもらうのに文句は言えない。


「俺はここで寝る。ミスティを任せたぞ」

「えっ? ちょっと……ユーヤ?」

「ますたー、おやすみ」


 俺がベッドを使わなければ良いだけだ。

 壁際にあるソファに寝っ転がり瞼を閉じる。

 寮のベッドよりもフカフカしてて気持ちが良い。

 部屋には暖房も施されているので風邪を引く心配もないだろう。


「よし、僕たちも寝ようか!」

「よろしかったら先ほどの続きを……」

「若様、わたくしもお願いしてもよろしいでしょうか?」

「まぁ、あそこで止めちゃ不満も残るよねぇ。

 三ヶ月ぶりの帰省だし、まとめてお相手しよう」


 外からエロゲーの主人公みたいな会話が聞こえてきた。

 幻聴か? 相当疲れているようだな……おやすみなさい。

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