表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/111

第二十四話 「骨董品屋」

 薪拾いを終えた俺は、昼食を摂った後、ラルフの店にやって来た。


「お、兄ちゃんじゃないか。久しぶりだな。

 色々と噂は聞いてるぜ」

「三日ぶりですね」

「はじめまして。わたしミスティ。

 ますたーのお嫁さんです」

「何だ、少し会わない間に結婚したのか!

 そいつはめでたい」

「ミスティ、その自己紹介は止めてくれ。

 このおじさん本気で信じちゃうから」

「はーい」


 ミスティは時々、自己紹介で俺の嫁を自称する。

 符術士と相棒の関係は、ある意味では夫婦に近いのかも知れないが、嫁宣言が原因でからかわれる事も多いので勘弁して欲しい。


「で、今日は何の用だい?

 新しい彼女を自慢しに来た訳じゃなさそうだが」

「どうしたらミスティが俺の彼女に見えるんだよ」

「そりゃ、兄ちゃんはロリコンだからな」

「ねぇ、ますたー。ロリコンってなぁに?」

「ミスティは知らなくていい」

「えー、ますたーのいじわる」


 キリがなさそうなので、話の流れを無視して本題に移る事にする。


「ところで、ここは武器の買い取りもやってますか?」

「そいつは状態によるな。

 修復して使えそうな物なら買い取らせてもらうぜ」

「じゃあ、このチートカッターを買い取って下さい。

 どうも俺には合わないようで……」

「チートカッターって何だ?」

「あっ……」


 思わず俺が勝手に決めた名称で呼んでしまった。

 チートカッターとは、先日ラルフに売ってもらった魔法道具(マジックアイテム)の短剣の事だ。

 威力だけ見ればチートなのだが、如何せんコントロールが難しく、俺には使いこなせなかった。

 俺はウリブー戦や、今朝のトレント戦での出来事を交え、ラルフに説明をする。


「ふむ。こいつにそんな威力があるとはな。

 俺が使っても、せいぜい人間一人を吹き飛ばすのが関の山なんだが……」

「それも十分凄いと思う」

「いいぜ。目立つ傷もないし、一万で引き取ろう」

「え? それって買った時と同じ値段じゃ」

「いいんだよ。たったの三日だ。

 貸してやったと思えばなんともねぇ。

 それに兄ちゃんはこいつのお陰で借金を背負っちまったんだろ?」

「それはそうだけど……」

「だったら遠慮するな」

「ありがとうございます」


 短剣をラルフに渡し、購入時と同じ一万ガルドを受け取る。

 今の俺にとっては非常に大きい金額だ。

 ラルフの心遣いが有り難かった。


「これで武器がなくなっちまったけど、どうするんだ?」

「ますたーはミスティがまもるの!」


 ミスティが俺の左腕を掴み、意気込みを見せる。


「ありがとう。こいつは頼もしいや」

「尻に敷かれてるな、兄ちゃん」


 そう言うのじゃない、と突っ込もうかと思ったが、実際の所ミスティが居ないと、俺は何も出来ないに等しいので台詞を飲み込む。


「とりあえず、ダメ元で骨董品屋を覗いてみようと思う」

「あそこならヘンなモノがいっぱいあるな。

 ただ、あそこの店主気まぐれだからな」

「急いでないし、閉まってたら別の日にするだけですよ」

「それもそうだ。

 兄ちゃんに相応しい魔法道具(マジックアイテム)が見つかる事を祈ってるぜ」

「ありがとうございます。

 ミスティ、次のお店に行くぞ」

「はーい。おじちゃん、またねー」



 ラルフの店を後にして、骨董品屋を目指す。

 この町の商店の営業日は不定期だ。

 日本のように年中無休なんて事はなく、七曜の概念も無い為、週休二日ですらない。

 店主の休みたい日に休み、働きたい時に店を開けるのだ。

 マリアから聞いた話では、食料品店は比較的営業している日が多く、娯楽品等を扱う店は、たまにしか開店していない傾向があるそうだ。

 俺が向かっている骨董品屋は後者に当たる。



「お、今日は開いてるみたいだな。

 ごめんくださーい」


 入り口に架けられた札に営業中と書かれているのを確認し、これ幸いと扉を開ける。

 小さな店内には所狭しと、壺や絵画が展示されている。

 そのどれもが古めかしく、価値は分からないが風格を感じる。


「ますたー、このお店つまんない」

「しーっ。良い子はそんな事言うもんじゃありません」


 人差し指を立ててミスティを優しく叱りつけるが、時すでに遅し、背の低い老婆がこちらを睨みつけていた。


「若造がつまらない店に何の用かの?」

「すみません。

 何か武器になる魔法道具(マジックアイテム)があると聞いて来ました。

 そこそこの威力で命中精度の高い物が欲しいのですが……」

「なんじゃ。あんた魔術師かい。

 だったら、あっちの棚に色々あるわい」

「いや、魔術師じゃなくて符術士ですよ」

「符術士? そんなもん、この町には一人しか居らんわ。

 そもそも符術士なら魔符(カード)があれば、他に武器なぞ要らんはずじゃ」

「最近、符術士になったばかりなんです。

 武器が必要なのは、この娘に頼りすぎるのは良くないと言う、俺なりの考えによるものですよ」

「そのお嬢ちゃんが魔符(カード)の英霊だって言うのかい?

 もうええ、付き合ってられんわい。

 奥に居るから、買いたい物が見つかったら呼びなされ」

「じゃあ、適当に拝見させて頂きます」


 店主らしき老婆は、俺の話を全く信じてくれなかった。

 少し哀しいが、これが普通の反応なのだろう。

 店の奥へと消えて行く老婆を横目に、俺は魔法道具(マジックアイテム)の並べられている棚へと移動する。


 棚には杖や水晶玉と言った、いかにもな物から、何に使うのか分からない木の板のような物まで、様々な魔法道具(マジックアイテム)が展示されていた。


「うーん、見ただけじゃさっぱり分からないな」

「ますたー、こっちはおもしろいね」

「そうか? 俺にはさっきの壺と対して変わらないように見えるが」

「ますたーの武器をさがすんだよね?」

「あぁ。だけど、この量は悩むな」

「これ、ますたーにピッタリだと思うよ」

「ん? どれどれ」


 ミスティが背伸びをしながら、棚の上の方にある魔法道具(マジックアイテム)を指差す。

 そこにあるのは拳大の小さな四角い箱。

 長期間、放置されていたのか、箱の上には埃が積もっていた。

 埃を払い、箱の中身を確認すると、数十枚のカードが入っていた。


「これはウィザクリ!?

 しかも、日本語版じゃないか!」


 それは俺が小学生の頃に遊んでいたカードゲーム、【ウィザード アンド クリーチャーズ】のカードであった。

 【ウィザード アンド クリーチャーズ】、通称ウィザクリはクリーチャーを召喚し戦わせたり、魔法カードでそれをサポートをして、お互いのライフを削り合う対戦型TCGだ。

 俺が小学生の頃にブームとなり、男子なら誰もが遊んでいる人気ゲームだった。


 しかし、このゲームはバランス調整に難があった。

 強いテーマのカードが出ると、半年以上は、そのデッキ以外では勝てないと言う、クソゲー環境が続く。

 そして新しいテーマのカードが出ると、同時期に今まで最強であったテーマのキーカードを、ルール上使用禁止にするのだ。

 それから暫くは新しいテーマのデッキが、最強デッキとして環境を支配する。

 だが、それも一年後には禁止カード指定により没落し、新たなテーマが王者の座に君臨する。

 十周年を迎える頃には、禁止制限カードの種類は三桁の大台に乗り、世界一禁止カードの多いTCGとしてギネスに申請したと言う噂まである。

 そんな大味なバランス調整を繰り返している内に、プレイヤー数は年々減少していった。


 俺も『このカード以外のフィールド上のカードを全て破壊し、破壊した枚数と同じ枚数を山札からドローする』と言うぶっ壊れ能力を持ったカードが流行った時期に、嫌気が差して辞めたクチだ。


 これも【フェアトラーク】のカードと同じく、日本から転移したきたものだろうか?

 クソゲーに泣かされた記憶も多いが、それでも久しぶりに触れるウィザクリのカードは懐かしく感じた。


緑一色(リューイーソー)……しかもバーンデッキかよ」


 パラパラとカードを流し見ると、クリーチャーカードは一枚もなく、全てが魔法カードだった。

 こう言った魔法カードのみで構築されたデッキは緑一色(リューイーソー)と呼ばれている。

 魔法カードの枠が緑色である事から、麻雀の役になぞらえて付けられた名称である。

 デッキの内訳は、相手のライフに直接ダメージを与えるカードが大半で、残りにクリーチャーを破壊するカードや、ドロー補助のカードが少々。

 随分前に引退した俺が見ても、一目で弱いと断言出来る内容だった。


「これが役に立つとは思えないな」

「まって!」


 カードを棚に戻そうとすると、ミスティが俺の腕をつかみ、それを阻止する。


「ますたーはそれの使い方わかるよね。

 ここで使ってみて。おねがい」

「これの使い方と言われても……」


 ウィザクリで遊んでいた頃の記憶を辿ってみる。

 山札をシャッフルし、五枚を引いて手札にする。

 初期手札の枚数の違いこそあれ、この辺りはほとんどのTCGで共通だ。

 ジャンケンで先行後攻を決め、ゲーム開始。

 これも開始時に言う台詞があった筈だ。


「確かこんなだったはず……呪文詠唱(イントゥネイト)!」


 俺の台詞にカードが反応し、空中で自動的にシャッフルされる。

 その様子は召喚戦闘の開始時にそっくりだった。

 やがてシャッフルが終了し、俺の左手に山札から五枚のカードが飛んでくる。

 相手のライフに直接ダメージを与える《火の玉(ファイアボール)》と《針千本(ニードルショット)》。

 攻撃クリーチャーを破壊する《地雷》。

 クリーチャーを手札に戻す《突風》。

 そして最後の一枚は《手札交換(ハンドチェンジ)》。


「これは!?」

「だから、ミスティが言ったでしょ。

 これがますたーにピッタリだよ」

「なるほど。試してみるか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ