隣のひと
使用お題ひとつ
薄い壁のむこうからはモーターの駆動音が聞こえてくる。低くウォンと唸るような。けして騒音というわけじゃなくすぐに生活音に混じり馴染んだ音。
ウチのゲーム音の方が大きいし。
ただ、深夜にもずっと聞こえてくるんだ。他の音は聞こえないのに。
あまりにも気になって一日中静かに過ごしてみた。鳥の鳴き声や散歩する犬の声、前の道を走る車やバイクのエンジン音が過ぎてゆく。その合間にも小さな駆動音は続いていた。いや、それよりも気になることは他の生活音が隣からは一切聞こえてこないとだ。
逆隣からはよその生活音を打ち消そうとでもいうような少し大きめのTVの音。クソうるさい換気扇。上階の掃除機、勢いの良すぎる寝返りの音まで拾えるのに隣からはよくわからないモーターの駆動音だけ。
よく考えればTV音が大きめの隣人とは挨拶を交わしたことがある。耳が良くないのでTVの音や独り言がうるさければ申し訳ないと笑っていた。うちもゲームを夜中までやることもあって小さくない悪態をつくこともあるので謝罪すれば楽しそうでいいですね。幸い自分は大丈夫ですが、確かに声を落とすか時間は配慮した方がいいかもしれませんねと世間話をした。
機会があれば逆隣人について知っているかを聞きたいと思っていたある日、駆動音が消えた。
あまりに馴染んだ音が消えた。
それは強烈な違和感。
次に耳に届いたのは妙に鮮明なカチャリという音が
貴方は『隣の人』をお題にして140文字SSを書いてください。
#shindanmaker
https://shindanmaker.com/375517
ちょっと増量




