美しい人

　水音に周囲を探り見れば木立ちむこうにせせらぎが見えた。流れとは違う水音は続いている。踏み込めば自身の立てる音がその音を隠すだろう。それほどに静かな朝だから。道沿いを流れを見ながら歩む。さくりと草を踏む音に前をむけば赤い指先の少女が籠を抱えて頭を下げる。素足の先も赤かった。

　肩にこぼれ落ちる黒髪でその面差しはわからない。

　言葉を交わすこともなくすれ違う。早く行かねば少女は体勢を変えられず、遅い帰りに叱られるだろう。

　知らず詰めていた呼吸こぼせば白が視界によぎる。

　また、会えるだろうか。

　どのような面差しでどのような声で語るのだろう？

　水音とあの赤い指先がどこまでも纏わりつく。