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森の寝床
使用お題ひとつ
隣の彼女に視線を向ける。
何をしているのか。
彼女は地図を見下ろして必死に確認している。
ここは山の中。
せっかくの休日に僕なんかと出かけたばっかりに迷って彷徨い二人きり。
りーひょろちちち
鳥の声が頭上の枝のどこからか響いて聞こえる。
空が枝に切り取られてどこまでも淡く青い。
うん。
いいよ。
あっちに行けば帰れるよ。
僕もきっとあちら側に進めるよ。
ああ。
『大好きだよ』
届かないと知りながら僕は君の耳に口を寄せる。
「あ。いかないで」
彼女が顔をあげて周囲を見回し始める。
ああ。
ああ。
なんてサプライズ!
なんて未練!
君に僕の声は届くべきじゃない。
ああ、なんて甘美な誘惑。なんて離れがたい君の声。
願わくば、君が僕を忘れますように。
とにあへのお題
「サプライズ」、「休日」、「山の中」、「僕なんか」、「隣の彼女」
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