夜の青恋の音色
使用お題ひとつ
薄暗い樹々の影の中響く管楽器の音色が同じフレーズを繰り返す。
僕は手元のスマホでルーチンワーク。
家に帰るのが嫌で自然公園で時間を潰す。
少し前までは彷徨っていたが最近は定位置に。
楽器の練習の聞こえるこの位置に。
いつも同じ場所でリズムは乱れ、はじめから繰り返される。
僕は素知らぬ顔でルーチンワーク。
誰が何を奏でているかなんて知らない。
それでも、それは見えない絆。
きっと音色に恋してる。
完ぺきじゃない音色。
だからこそ魅せられて惹かれている。
引っかかるリズム。
恋の音。
その音が完ぺきになったその瞬間覚める恋。
ぬるりぬるりと闇に染まる心。
つまらないルーチンワーク。
帰りたくなくて、この音色に恋してると自分を騙す。
時は魔法のように過ぎ去ってあっという間に街灯が灯りはじめる。
明るさと黒い黒い闇の差が僕の心をじくりとなぶる。
「もう、遅い時間だよ」
どこかで聞いた声。
大きな荷物を持った同じクラスの女子。
近所だっけ?
少し考えて、僕は立ち上がる。
「明るいとこまで送る」
「えー、いいよー」
「最近、あぶねー奴多いらしいし」
せめて人の多いところまで。
お互いに何をしていたのかなんて聞かない。
夜の青が枝を黒く浮き上がらせる。
お題は〔恋の音〕です。
〔三人称視点禁止〕かつ〔「黒」の描写必須〕で書いてみましょう。
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